2023年も世界の先陣を切って2月末に開幕を迎えていたTCRオーストラリアの第2戦が、5月12~14日の週末にフィリップアイランドで開催され、新規車両の投入が相次ぐ話題満載のレースウイークでジョシュ・バカン(HMOカスタマー・レーシング/ヒョンデ・エラントラN TCR)が2勝を獲得。そして世界的DJのカール・コックス率いるカール・コックス・モータースポーツ所属のマイケル・クレメンテは、こちらも豪州大陸初上陸のクプラ・レオン・コンペティションTCRで初優勝を飾っている。
約2カ月のインターバルを経て迎える第2戦を前に、今季よりアシュリー・スワード・モータースポーツ(ASM)のアルファロメオ・ジュリエッタ・ヴェローチェTCRでシリーズ初参戦を果たした、元BTCCイギリス・ツーリングカー選手権ドライバーのトム・オリファントが、新たな機材を導入。昨季までWTCR世界ツーリングカー・カップでシアン・レーシングが走らせていたリンク&コー03 TCRを入手し、同地で事前テストを実施した。
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「最高の気分だったよ」と、同車オーストラリア初上陸後のテストを振り返ったオリファント。「アルファロメオとの違いは、まるで昼と夜だ。これはれっきとしたレーシングカーであり、開発に多大な時間とお金を費やしたことは明らかだ。本当に反応が良く、クルマ側が何をしようとしているのかをすべて感じることができる」と、その感触に高評価を与えた元ウエスト・サリー・レーシングのBMW使い。
「僕がエンジニアたちに説明したのは、アルファで起こっていることに反応して差を感じるのではなく、リンク&コーをドライブして何が起こるかを予測することだった。現時点ではすべてが本当にポジティブだ。クルマには特に何も変えていない。ただクルマに慣れようとしているだけさ」
その初テストを成功裏に終え、レースウイークに入って本戦仕様のリバリーを披露したASM代表のアシュリー・シュワードは「我々の大いなるサポーターたちに対しても、ここフィリップアイランドでの力強いパフォーマンスで報いることを願っている」と抱負を述べた。
「我々が完了したテストデイでは、クルマのスピードが大幅に向上し、クルーたちも新しいマシンの操作に慣れた。トム(・オリファント)が以前にドライブした水準のものとより一致しており、これは大きな利点だ。彼にとってもうひとつの新しいサーキットで記録したラップは、非常に価値のあるものとなるだろう」
そのリンク&コーに並び、豪州のグリッドに並ぶ2番目の新たなマニュファクチャラーとなったクプラは、今季よりワンメイク電動オフロードの世界選手権エクストリームEにも進出するカール・コックス・モータースポーツが導入したもので、これまでアウディをドライブしてきたクレメンテがステアリングを握る。
「2022年を通じて、チームと僕はここからどこへ行くのか、どうやってそこへ行くのかについて何度も話し合いを持った」と振り返ったクレメンテ。
「僕らはプライベーターチームとして、資金をどこにどのように使うかについて細心の注意を払う必要があることを承知しているが、同時に定期的に表彰台に挑戦する計画を立てなければならない。全員が計画に同意したら、そこからは簡単な部分だったが、実現する方法を必死で考えなければいけなかったんだ」
■レースはヒョンデのバカンが2勝。レース2はクレメンテが制す
ここでクプラ・レーシングのカスタマー部門に車両を発注、開幕戦への納入は間に合わないことが見込まれ、当初よりこの第2戦フィリップアイランドに向け照準を合わせてきた。
「カール(・コックス代表)の素晴らしいサポートがなければ、これはどれも不可能だっただろう。11月に遡るが、アウディとMPC(メルボルン・パフォーマンス・センター)チームでの経験を考慮し、僕らはクプラを選択した。彼らはオーストラリアでクルマの販売を開始したばかりだったが、現状シリーズでクプラを走らせているのは僕らだけだからね」
こうして始まった週末は、新王者トニー・ダルベルト(ホンダ・レーシング・チーム・ウォール/FK8型ホンダ・シビック・タイプR TCR)が2回のフリープラクティスを制圧。今回はホンダ優勢で進むかと思われたが、その勢いはここまで。予選ではヒョンデのバカンがポールポジションを獲得すると、そのままレース1を制覇。明けた日曜は早朝の霧でタイムスケジュールが遅れるなか、最終レース3でも“ライト・トゥ・フラッグ”を決め、週末2勝を飾る結果となった。
「素晴らしかったね」と、フィリップアイランドでの戦果に手応え充分のバカン。「レース1からグレートな結果が得られたが、日曜は本当にそれをバックアップしたかった。その戦績は『1度切りじゃない』ってね。僕らはここに戻って来られたんだ」と、喜びを語ったバカン。
一方、日曜午前に開催されたリバースグリッドのレース2では、今回より昨年の同地で勝利を飾った元ファビアン・クルサードの車両を導入した30歳のブラッド・ハリス(エクスクルーシブ・スイッチボード/FK8型ホンダ・シビック・タイプR TCR)が最前列からスタートを切るも、オープニングでジョーダン・コックス(プジョー・スポール・GRMチーム・バルボリン/プジョー308 TCR)が先行。それをクレメンテのクプラが追う展開に。
7周目以降、たびたび首位を入れ換えながら続いた勝負は、最終ラップでコックスのインを狙ってリードを奪ったクレメンテが、両車接触のバトルを制してトップチェッカー。最後の3位表彰台には新生TCRワールドツアーの登録メンバーでもあるGRMのベン・バルグワナ(プジョー308 TCR)が続いている。
「この結果には言葉がない。クルマやファミリーとともにここでデビューするのを長い期間の目標にしていたから、そこで勝利が飾れて本当に感動だ」とクレメンテ。
一方、予選5番グリッドを獲得していたリンク&コー03 TCRのオリファントは、土曜最初のレースでタイヤトラブルに見舞われる無念の展開に。日曜は双方ともに11番グリッドからスタートを切り、トップと同等のラップタイムでレースを進め、最終的にそれぞれ8位と9位でフィニッシュしている。
続くTCRオーストラリアの第3戦は、6月9~11日にウイントン・モーターレースウェイで開催される。
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