21世紀最多となる9つのマニュファクチャラーが最上位クラスにエントリーする今季2024年のル・マン24時間レース。かつてのGT1やCカーの時代を彷彿させ、その時代をリアルに見たことのない若い世代のファンにとっては新鮮にさえ映っている伝統のレースも開催まで残すところ約1カ月。その“新しい”戦いに今から期待が高まっているautosport本誌編集部のカリヤです。
かつてIMSAウェザーテック・スポーツカー選手権のトップカテゴリーマシンだったDPiカーの流れを汲んだLMDh(ル・マン・デイトナ・h)マシンがル・マンに参戦する様子は、まるで映画『フォード vs フェラーリ』のようだなと感じました。
ポルシェ、ベッテルをル・マンで起用しない理由を説明「この物語は終わったわけではない」
そう思えた理由は、4月26日より発売中のautosport本誌6月号(No.1596)の特集『24 Hours of Le Mans 2024 Preview』にあります。
“P’s Turn” ──先行上映された『ポルシェ vs プジョー』“TRAILER”──という企画のタイトルにもあるとおり、今季のWEC世界耐久選手権の開幕戦カタールではポルシェとプジョーが上位争いを展開し、ポルシェ勢が表彰台を独占。続く第2戦イモラではフェラーリ勢が予選から速さを発揮し、決勝ではトヨタが今シーズン初優勝を飾ったものの、昨シーズンのLMDh勢が0勝7敗を喫した勢力図が今年は一転しているかもしれないと感じました。中でも、躍進を遂げたポルシェ963はIMSAとWECの同時参戦しているメリットを活かすことでマシンの熟成が進んでいるのではないか、と解説していただきました。
加えて、LMDhマシンはカタールのような比較的滑らかな路面の高速サーキットが得意分野であるそうで、似た特性を持つサルト・サーキット(正式名称:ル・マン24時間サーキット)でのパフォーマンスにも注目してみたいと思います。
また、余談ではありますがハイパーカークラスに参戦するドライバーには、セバスチャン・ブエミ、ニック・デ・フリース、エドアルド・モルタラ、ストフェル・バンドーンなどフォーミュラEに参戦中のドライバーも多数。3月下旬に東京の市街地を駆け抜けたドライバーが参戦していると考えると、以前よりも勝手に親近感が湧いています。
そんな“異文化交流”盛んな現代のハイパーカークラスですが、それゆえにモヤっとした疑念も。
「ル・マンでレースをするために特別に作られたLMH車両をあからさまに優遇しているのではないか」という見方です。
「LMDhはLMHに勝てないのか?」という企画では、その疑問について前回大会での展開や、異なる規定のマシンに課されるBoP(性能調整=バランス・オブ・パフォーマンス)について、イギリス人ベテランジャーナリストのサム・コリンズさんに、“ならでは”の視点で解説していただきました。LMHには開発競争、LMDhにはマーケティングというそれぞれの異なる思惑を持ったマニュファクチャラーとマシンが同じフィールドで競い合うことの難しさをあらためて理解でき、それが実現する今回大会には大きな意味があるのではないかと感じました。
今シーズンよりWEC/ル・マンに導入されたマニュファクチャラーの最速マシンの平均ラップタイムを基に計算する新たなBoP。ル・マンではカタール、イモラ、スパの序盤3戦でのレース分析に基づいて決定する形式となっているそうで、3月に行われた開幕戦ではダブルスティントやトリプルスティントを積極的に採用して1周のペースは落とし、ピット作業時間を短縮する作戦を取る傾向があったようでした。
“前哨戦”となるスパ・フランコルシャン6時間レースはもちろん、第101回ル・マン24時間レースに向けた戦いはすでに始まっているようです。
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