調べてみた EV（電気自動車）の充電速度 「公称値」との差、本当に速いのはどれ？

実際、充電が一番速いのはどれ？

EV（電気自動車）が世界的に注目を集める中、航続距離やバッテリーの安全性、車両価格などさまざまなトピックが話題に上がるようになった。今回は、「充電速度」に焦点を絞って、メーカー公称値（カタログ値）と実際の速度を比較しつつ、ユーザーの利用状況も考慮しながら見ていきたい。

欧米や中国を中心とするEV普及は加速する一方であり、慣れ親しんだ内燃エンジン車を手放し、最新のEVに乗り換えるユーザーも増えている。しかし、EVを所有する上でさまざまな問題に直面することもある。その1つが充電だ。

どこで、どうやって充電するのか？ 充電にかかる時間は？ インフラは整っているのか？ 充電に関する問題は、EV購入時の大きな障壁となる。

特に、自宅で充電できるかどうかが重要な鍵であり、今後もそこは変わらないだろう。しかし、現実問題として、多くの人々にとっては自宅で充電するのは難しい。当面の間は、ガソリンスタンドのように点在する公共の直流（DC）急速充電器が大きな役割を担っていくはずだ。

しかし、一部のEVでは、カタログ値と実世界での充電速度に大きな違いが見られる。適切な充電器を見つけたとして、最新EVの実際の充電速度はどれくらいなのだろうか？ そして、一番速く充電できるのはどのモデルだろうか？

2022年秋以来、AUTOCAR英国編集部は、試乗したすべてのEVで急速充電性能のベンチマークテストを行ってきた。その結果、いくつか重要な事実が明らかになった。実際の充電速度は、平均値を計算すると、どのクルマも謳っているピーク速度とはかけ離れている可能性がある。

これはすべてのEVに当てはまることだが、充電速度はバッテリー残量が満タンに近づくにつれてかなり遅くなることが予想される。しかし、一部のモデルは他車よりも速度低下が著しいのだ。

【重要】EV充電速度のテスト方法

AUTOCAR英国編集部が実施している急速充電テストは、対象車両のピーク充電速度を満たせる出力の急速充電器を使用し、10％、30％、50％、70％、90％の充電率（SOC）において、実際にどれだけの電力がバッテリーに送られているのかを観察し、記録するというものである。

実用上、すべてのテストに同じ充電器を使用することはできない。また、可能な限り充電前にバッテリーをプリコンディショニングする（状態を整える）が、多くのEVでは充電率が10％以下になるとプリコンディショニングができない。

試乗するEVはおおむね英国仕様の車両であり、充電設備のレベルも基本的には英国の水準となる。当然ながら、充電器の性能はメーカーや運営会社によっても変わるし、充電時の天候もある程度考慮しなければならないだろう。

そして、一般的にユーザーが重視するであろうポイントを反映した「重み付け」を行い、テスト結果を平均化する。公共の急速充電の利用料金は、一般家庭での充電に比べて比較的高価である。ほとんどのユーザーは、定期的な習慣（通勤など）ではなく、特定の移動のために急速充電を利用する傾向にあるため、充電率20％未満から急速充電を行ったり、80％を超える充電を行ったりする人は多くない（時間効率が悪く、バッテリーの寿命にも大きな影響を与えるため）。

そのため、充電率50％を超えたときに示す速度は、10％や90％といった極端な充電率で示す速度の3倍、同様に70％や30％で示す速度はそれらの2倍重要と捉えている。ややこしいかもしれないが、現実的な利用状況を評価に含んでいると考えていただきたい。

というわけで、ここからはAUTOCAR英国編集部がその充電速度を高く評価した上位20台を紹介していこう。あくまで本稿執筆時点でテスト済みのモデルをランク付けしているため、最新モデルなどでは残念ながら評価が間に合わなかったものもある。その点もふまえていただくと幸いだ。

1. ポルシェ・タイカンGTSスポーツツーリスモ（2023年）

メーカー公称値のピーク速度：270kW
テスト時のピーク速度：263kW
重み付け後のテスト時平均充電速度：198kW
使用可能なバッテリー容量：83.7kWh
充電待機時間（10％～90％）：22.2分
テストで使用した充電器：ADS-TEC/ポルシェ・エンジニアリングHBD 1120（ポルシェが運営）
テスト時の天候：ドライ、摂氏22度

2. アウディeトロンGTフォアシュプルング（2023年）

公称値ピーク速度：270kW
テスト時ピーク速度：248kW
テスト時平均充電速度：189kW
使用可能バッテリー容量：83.7kWh
充電待機時間（10～90％）：22.8分
テスト充電器：Tritium TRI 121-350（Gridserve社運営）
テスト時の天候：ドライ、摂氏7度

3. ヒョンデ・アイオニック6 RWDアルティメット（2023年）

公称値ピーク速度：233kW
テスト時ピーク速度：229kW
重み付け後のテスト時平均充電速度：180kW
使用可能バッテリー容量：77.0kWh
充電待機時間（10～90％）：22.2分
テスト充電器：Tritium TRI 121-350（Gridserve社運営）
テスト時の天候：ドライ、摂氏13度

4. キアEV6 GT

公称値ピーク速度：350kW
テスト時ピーク速度：233kW
重み付け後のテスト時平均充電速度：169kW
使用可能バッテリー容量：77.4kWh
テスト充電器：Tritium TRI121-350
テスト時の天候：ドライ、摂氏30度

5. BMW i7 xドライブ60 Mスポーツ（2023年）

公称値ピーク速度：195kW
テスト時ピーク速度：196kW
重み付け後のテスト時平均充電速度：148kW
使用可能バッテリー容量：101.7kWh
充電待機時間（10～90％）：34.1分
テスト充電器：Tritium TRI 121-350（Gridserve社運営）
テスト時の天候：ドライ、摂氏8度

6. メルセデス・ベンツEQE 350＋AMGライン・プレミアム（2022年）

公称値ピーク速度：170kW
テスト時のピーク速度：165kW
重み付け後のテスト時平均充電速度：131kW
使用可能バッテリー容量：90.6kWh
充電待機時間（10～90％）：35.1分
テスト充電器：Tritium TRI 121-350（Gridserve社運営）
テスト時の天候：ドライ、摂氏13度

7. フォルクスワーゲンID.Buzz SWBスタイルプロ（2023年）

公称値ピーク速度：170kW
テスト時のピーク速度：185kW
重み付け後のテスト時平均充電速度：114kW
使用可能バッテリー容量：77.0kWh
充電待機時間（10～90％）：31.6分
テスト充電器：Tritium TRI 121-350（Gridserve社運営）
テスト時の天候：ドライ、摂氏9度

8. ポールスター2（2024年）

公称値ピーク速度：350kW
テスト時ピーク速度：205kW
重み付け後のテスト時平均充電速度：124kW
使用可能バッテリー容量： 79kWh
テスト充電器：Tritium TRI121-350
テスト時の天候：ドライ、摂氏29度

9. ボルボC40リチャージプラス シングルモーター（2023年）

公称値ピーク速度：150kW
テスト時のピーク速度：134kW
重み付け後のテスト時平均充電速度：104kW
使用可能バッテリー容量：67.0kWh
充電待機時間（10～90％）：32.6分
テスト充電器：Tritium TRI 121-350（Gridserve社運営）
テスト時の天候：ドライ、摂氏14度

10. ポールスター2 BSTエディション270（2023年）

公称値ピーク速度：150kW
テスト時ピーク速度：150kW
重み付け後のテスト時平均充電速度：97kW
使用可能バッテリー容量：75.0kWh
充電待機時間（10～90％）：39.4分
テスト充電器：Alpitronic HYC 150（Instavolt社運営）
テスト時の天候：小雨、摂氏12度

11. BMW iX1 30 xライン（2023年）

公称値ピーク速度：130kW
テスト時ピーク速度：125kW
重み付け後のテスト時平均充電速度：96kW
使用可能バッテリー容量：64.7kWh
充電待機時間（10～90％）：33.6分
テスト充電器：Hypercharger HYC_150（MFG EV Power社運営）
テスト時の条件：ドライ、摂氏7度

12. トヨタbZ4X AWDモーション（2022年）

公称値ピーク速度：150kW
テスト時のピーク速度：147kW
重み付け後のテスト時平均充電速度：89kW
使用可能バッテリー容量：64.0kWh
充電待機時間（10～90％）：36.5分
テスト充電器：ABB HP CP500C（Ionity社運営）
テスト時の天候：記録なし

13. テスラ・モデルY RWD（2023年）

公称値ピーク速度：170kW
テスト時のピーク速度：127kW
重み付け後のテスト時平均充電速度：89kW
使用可能バッテリー容量：82.0kWh（推定）
充電待機時間（10～90％）：48.2分
テスト充電器：V2スーパーチャージャー（テスラ社運営）
テスト時の条件：ドライ、摂氏16度

14. レクサスRZ 450e（2023年）

公称値ピーク速度：150kW
テスト時のピーク速度：138kW
重み付け後のテスト時平均充電速度：84kW
使用可能バッテリー容量：64.0kWh（推定）
充電待ち時間目安（10～90％）：40.2分
テスト充電器：ABB HP CP500C（Ionity社運営）
テスト時の条件：ドライ、摂氏12度

15. スバル・ソルテラAWDツーリング（2023年）

公称値ピーク速度：150kW
テスト時のピーク速度：147kW
重み付け後のテスト時平均充電速度：78kW
使用可能バッテリー容量：64.0kWh
充電待機時間（10～90％）：42.8分
テスト充電器：Tritium TRI 121-350（Gridserve社運営）
テスト時の天候：ドライ、摂氏6度

16. BYDアット3（2023年）

公称値ピーク速度：150kW
テスト時ピーク速度：89kW
重み付け後のテスト時平均充電速度：62kW
使用可能バッテリー容量：60.0kWh（推定）
充電待ち時間（10～90％）：46.8分
テスト充電器：ABB HP CP500 CJ（Gridserve社運営）
テスト時の天候：ドライ、摂氏12度

17. シトロエンe-C4Xシャイン（2023年）

公称値ピーク速度：100kW
テスト時ピーク速度：89kW
重み付け後のテスト時平均充電速度：61kW
使用可能バッテリー容量：46.2kWh
充電待機時間（10～90％）：37.7分
テスト充電器：Tritium TRI121-350（Gridserve社運営）
テスト時の天候：ドライ、摂氏11度

18. ルノー・メガーヌEテックEV60テクノ

公称値ピーク速度：350kW
テスト時ピーク速度：130kW
重み付け後のテスト時平均充電速度：75kW
使用可能バッテリー容量：60kWh
テスト充電器：Tritium TRI121-350
テスト時の天候：ドライ、摂氏20度

19. キア・ソウル・アーバン（2023年）

公称値ピーク速度：50kW
テスト時ピーク速度：45kW
重み付け後のテスト時平均速度：38kW
使用可能バッテリー容量：39.2kWh
充電待機時間（10～90％）：51.4分
テスト充電器：ABB HP CP500 CJ（Gridserve社運営）
テスト時の天候：記録なし

20. アバルト500eツーリズモ

公称値ピーク速度：150kW
テスト時ピーク速度：85kW
テスト時平均充電速度：75kW
使用可能バッテリー容量: 61kWh
テスト充電器：Circontrol EV-Raption 150 CCS
テスト時の天候：ドライ、摂氏17度

Comments

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翻訳して掲載するのがお仕事なのは分かるけど、CHAdeMO仕様に換装して売ってる国で、CCS2充電の評価を教えられてもなぁ、ってのはある。

[hanna]

テスラの実験に古いV2を使ったのは何か意図でもあったのか？最新の250kW使ってよ。他社は日本のチャデモでは速度は出せないので、実質もっと遅い。