ガソリン車よりシンプルな構造
text:AUTOCAR UK編集部
【画像】選択肢、まだまだ少ない?【日本で購入できるEV6選】 全118枚
translator:Takuya Hayashi(林 汰久也)
最先端のテクノロジーを搭載したEV(電気自動車)は、内燃機関車に比べて整備や維持にコストがかかると思われがちだ。しかし実際には、機械部品の数が少ないEVは、ガレージでの作業時間が短く、お財布への影響も少なくて済む。
ただし、他のクルマと同様に、エンジン以外にもメンテナンスが必要な部分があるため、ドライバー自身による日常的なチェックは不要とは言い切れない。では、何をすればいいのだろうか?また、整備工場ではどんな項目をチェックするのだろうか?
今回は、EVのメンテナンス方法について簡単に紹介していく。
ボンネットを開けたとき
電気モーターにはあまり注意する必要がない。ガソリンやディーゼルのエンジンには何千もの可動部品があるが、電気モーターは非常にシンプルで、ほとんどが20個以下の部品で構成されている。
そのため、オイルやフィルターの交換、カムベルトやウォーターポンプの交換などは必要ない。しかし、診断機が手元にあれば簡単なチェックを行った方がいい。診断機は、注意が必要な可能性のある故障コードをピックアップしてくれる。
バッテリーも同様で、可動部品がないためメンテナンス性はさらに低いと言える。個々のセルの性能をチェックし、消耗したセルがあれば診断機のデータに反映される。
高圧電気ケーブルの目視検査も行う。鮮やかなオレンジ色をした頑丈なケーブルで、損傷や接続の緩みがないかどうかをチェックする。ほとんどの場合、道路上のゴミからしっかりと保護されているので、問題が発生する可能性は低い。
ほとんどのEVでは、トランスミッションも基本的にメンテナンスフリーだ。このタイプのトランスミッションは、単一のリダクションギアとディファレンシャルのみで、一般的なマルチレシオのマニュアル、オートマチック、ツインクラッチよりもはるかにシンプルだ。潤滑のために高度な化学合成オイルを使用していることもあるが、ほとんどのメーカーは事実上「永久封印」されていると主張している。
従来の内燃機関車と同様に、EVにも冷却システムがある。モーターの働きや外気温にかかわらず、バッテリーを最適な温度に保つためのものだ。多くのEVでは水冷式が採用されており、液面を目で見て確認し、必要に応じて補充するだけで済む。
EVならではの消耗の仕方
その他の部分は内燃機関車とほぼ同じであり、気をつけるべき点もよく似ている。
EVでは電気モーターの抵抗で減速させる回生ブレーキを使用しているため、ディスクやパッドの交換回数が比較的少ない。とはいえ、車両重量が増えると、ブレーキの効きも悪くなる。ブレーキフルードの交換は通常、2年ごとに行われる。
サスペンションやステアリング部品、タイヤの状態もチェックする。EVは質量が大きく、瞬時にトルクが発生するため、特にタイヤの摩耗率が高くなることが予想される。同クラスの内燃機関車より、こまめなチェックが必要だろう。
最後にエアコンの点検だが、ほとんどの場合、エアフィルターの交換で十分だ。冷媒レベルもチェックし、必要に応じて再充填する。
どこで整備してもらえるか?
EVは機械的には複雑ではないが、非常に高い電圧の電気システムを使用しているため、この部分の修理が必要な場合は専門家による対応が必要となる。現状では、正規のメインディーラーでのメンテナンスが最善の選択肢となっている。
通常、各ワークショップには、そのブランドの電動モデル整備のために特別なトレーニングを受けた整備士がいる。彼らは機械部品の知識だけでなく、正しい安全装置と服装を身につけている。
しかし、初期のEVの中には発売から10年が経過しているものもあり、EVを取り扱う専門工場の数も増えてきている。その多くは、最新の診断機器に加えて、リチウムイオンバッテリーの状態をチェックできるソフトウェアを備えている。
メンテを受ける頻度について
可動部品は少ないものの、通常、内燃機関車と同様のインターバルで点検を行う。ブレーキ、サスペンション、タイヤなどの安全に関わるアイテムは日頃のチェックが不可欠なので、プロの整備士による次の点検まで間隔を大きく空けるのは賢明ではない。
海外では、メーカーによって、時間と距離に応じてディーラーに持ち込むことを推奨している場合もある。例えば、日産リーフの場合、英国では1年に1回または1万8000マイル(約2万9000km)のどちらか早い方での点検が必要とされている。ポルシェ・タイカンの場合は、2年に1回、2万マイル(約3万2000km)だ。
BMW i3は、コンディションベースのサービスを採用しており、チェックが必要な時期を車載コンピュータが知らせてくれる。ただし、BMWは、サービスモニターでメンテナンスの必要がないと計算されている場合でも、少なくとも2年に1度は点検を受けることを推奨している。
日本では、内燃機関だろうとEVだろうと、2年に1回の車検(新車時は3年目が初回)を受けなければ公道を走ることができない。一方で、1年毎の法定点検を受けているドライバーはどれくらいいるのだろうか。
法律で義務付けられているとはいえ、車検とは異なり、受けなくてもペナルティーがない法定点検(12か月点検)を毎年受けているドライバーは決して多くない。その割合は、全体の15%とも30%とも言われており、媒体によって多少のバラつきはあるが、いずれにせよ半数近い(またはそれ以上の)ドライバーが1年毎の法定点検を受けていないと言えるだろう。
EVについては、「メンテナンスが比較的楽」ということをメーカーやディーラー側もメリットとして伝えている場合が多く(この記事も然り)、ドライバーの中には、なおさら点検に消極的になる人も一定の割合でいるのではないだろうか。しかし、ワイパーブレードなどの一般的な消耗品は内燃機関車と変わらないことや、先述したタイヤの消耗率などを考えると、やはり1年毎の法定点検は受けるべきだ。(そもそも法律で定められているのだが)
どんなことに費用が発生するのか
ガソリン車やディーゼル車と同様に、整備にはさまざまな理由で料金が発生する。
例えば、すべての重要部品を点検し、フルード類を補充する一方で、タイヤやブレーキパッドなどの交換が必要な消耗品については、基本的なサービス費用に追加で支払う必要がある。
メーカーによっては、タイヤやワイパーブレードなどの交換を含む包括的なサービスパックを提供しているところもある。
製造上の問題により部品が故障した場合、保証期間内であれば無料で交換することができる。ただし、破損した部品やメーカー保証外の部品の交換は、所有者の負担となる。
ガソリン車より比較的低いコスト
繰り返しになるが、EVではオイルやフィルター、カムベルトなど、メンテナンスが必要な部品が非常に少なく、コストや手間のかかる整備項目が少ないため、メンテナンスコストを抑えることができる。場合によっては、ディーラーでの点検費用がガソリン車やディーゼル車の半分程度になることもある。
メンテナンス費用の支払い方法には、これまで同様、点検時に一括して支払う方法と、車両購入時に車両代金と合わせて前払いする方法がある。後者は、事前に予算を立てることができるだけでなく、月々の支払いに組み入れることもできる。
参考までに、英AUTOCAR編集部の調査では、英国におけるサービスプランの価格は、同クラスの内燃機関車よりも平均100~200ポンド(1万5000~3万円)安いようだ。
なお、ハイブリッド車やプラグイン・ハイブリッド車は、電気モーターやリチウムイオンバッテリーを搭載している点ではEVと同じだが、内燃機関を搭載している。そのため、従来のガソリン車やディーゼル車と同様の整備点検や費用が必要となる。
実際には、非常に複雑で多くの部品を使用しているため、場合によってはハイブリッド車の方が内燃機関車よりもメンテナンス費用が高くなることもある。
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みんなのコメント
ただし壊れた時に交換する費用が跳ね上がる危険もあるから注意だな。