NTTインディカー・シリーズ第14戦ポートランド決勝レースが13日に行われ、アレックス・パロウ(チップ・ガナッシ)がシーズン3勝目を飾った。
佐藤琢磨(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング)は、26番手スタートから燃費走行でポジションアップを果たし12位でレースを終えている。
2ストップ作戦で上位を狙うも12位の佐藤琢磨「ダウンフォースを落として、直線番長で勝負していた」
シーズン終盤の3連戦、その最初のレースであるポートランドでキャリア初ポールポジションをアレックス・パロウは獲得した。
しかし、そのスタートで彼の加速は悪く、予選3番手だった先輩チームメイト、スコット・ディクソンにインを奪われた。予選2番手のアレクサンダー・ロッシ(アンドレッティ・オートスポート)はパロウ以上にスタートが悪く、ディクソン、パロウの順でターン1をクリアして行くはずだった。
ところが、予選4番手のフェリックス・ローゼンクヴィスト(アロウ・マクラーレンSP)がディクソンに続いてロッシをパス……したものの、ブレーキングが不十分でディクソンの左後輪にヒットし、パロウのリヤにも突っ込みそうになった。
チャンピオン争いをしているガナッシのふたりをまとめて“やっつけて”しまうところだったのだ。ゲートウェイでのリナス・ヴィーケイ(エド・カーペンター・レーシング)のように……。
ローゼンクヴィストの思わぬアシストを受けたディクソンはターン1を曲がり切れず、彼のアウト側にいたパロウも曲がれないことになった。彼はブレーキングに失敗したローセンクヴィストに続いて回避路へと進むしかなかった。ロッシも同様だった。
この時、後方集団ではロマン・グロージャン(デイル・コイン・レーシング・ウィズRWR)がブレーキングを遅らせ過ぎ、大混乱を巻き起こされた。
トップ4がエスケープゾーンを走り、ターン2の先でコースに戻った。彼らの順位は4番手以下に落ちていた。トップに躍り出たのは予選7番手だのパト・オーワード(アロウ・マクラーレンSP)で、2番手は予選5番手だったグレアム・レイホール(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング)。
1周目の先頭集団での混乱に対し、インディカーは誰にもペナルティを科さないこととした。しかし、ターン1、ターン2をクリアしなかったドライバーたちは、1列で走る隊列の最後尾につくことを義務付けた。非常に理不尽な決定だった。
トップグループの中でペナルティを科せられるべきドライバーがいたとしたら、それはローゼンクヴィストだけだった。他のドライバーたちはアクシデントを避けるため、仕方なく回避路を走った。しかも、ローゼンクヴィストはぶつけた相手のディクソン、その巻き添えで回避路を走らざるを得なかったパロウ、さらにはロッシの前に出てしまっていた。
最初のイエローが10周目まで続くと判明したところで、ディクソン、パロウ、ロッシはリスタート前にピットで給油を行った。彼らにとっては、100周を2回のピットストップで走り切ればよい状況となる。
そして、この判断が結果的に正解だった。もちろん、予選で見せたパフォーマンスの通り、パロウとディクソンのマシンにはスピードがあり、そのアドバンテージがあったからこそ逆転劇を実現させることができた。
パロウたちのようにイエロー中に1回ピットしたチームは、レース再開からゴールまでに2回のピットを行った。ステイアウトしたチームの中には、2ストップでレースを走り切ったところもあったが、彼らは燃費セーブのためにスピードを上げ切れない状況に追い込まれていた。
レイホールは各スティントをできる限り長くすることでアドバンテージを得る作戦に出て、最多の周をリードしたがレース展開は彼らに味方はしなかった。
レース中盤、実質上のトップ争いはディクソンがリードし、パロウ、ロッシが追う展開となる。彼らが行った2回目のピットストップで、パロウがトップ、ディクソンが2番手、ロッシが3番手にオーダーは変わった。
そして迎えた最後のピットストップはロッシが真っ先に入った。78周目を終えるところだ。パロウは前回のピットストップとは逆に、ディクソンより1周前にピット。実質トップの座をキープした。パロウより1周、ロッシより2周後にピットしたディクソンは、パロウの後にピットアウトしたものの、コールドタイヤでスピードの遅いうちにロッシにパスされ、3番手に下がった。
ここからは逃げるパロウ、追うロッシという展開になったが、逆転はとうとう起こらなかった。プレッシャーをかけられてもパロウはミスを冒さず、逆にロッシは接近したことによって受けたタービュランスによってアンダーステアを出し、コースから前後輪をはみ出させてタイムロス。
パロウがキャリア3勝目を飾った。シーズン3勝いちばん乗り。PPも獲得していた彼は、10点リードされてのポイントスタンディング2番手から、25点リードのポイントリーダーに復活した。
開幕戦でのパロウの勝利は、最速だったオワード陣営が作戦ミスで優勝戦線から脱落した。
ロードアメリカのキャリア2勝目は、逃げるジョセフ・ニューガーデンがトランスミッションのトラブルして失速したことで得られた勝利だった。
いずれのレースでも勝てるポジションにつけていたこと、そのポジションを守り抜くだけのスピードど精神力があったからこそだったが、“たなぼた”的勝利であることは否定できなかった。
しかし今回、パロウは予選でポールポジションを獲得し、レースでは非常にスマートな戦いぶりによって勝利を掴んだ。先輩チームメイトのディクソンとの順位を2回目のピットストップでひっくり返し、レース終盤にはディクソンに対して先に仕掛けることでアドバンテージを取ってみせた。
ゴール前の30周、パロウはロッシからのアタックを受けたが、まったく動じる気配は見せず、トップを悠々と守り通してチェッカーフラッグを受けた。
インディカーにデビューして2年目、ガナッシ入り1年目のパロウがシリーズチャンピオンになる可能性が、今回のレースによって一気に高まった。
オワードはレースでのマシンがスピードに欠け、14位という惨憺たる結果しか残せなかった。アロウ・マクラーレンSPはまだレースによってパフォーマンスが違い過ぎる。ディクソンは安定感を保ち続けた戦いぶりで3位。ニューガーデンは粘り強さをフルに活かして5位フィニッシュし、逆転タイトルの可能性を辛うじて残した。
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