洗練され安定した走りで想像以上に速い
販売が低調になったヴォグゾール30-98は、最後の生産ロットに当たる25台が、値引きされながら1928年までにさばかれた。ヴォグゾール自体は、1925年10月にアメリカのゼネラル・モーターズ(GM)へ買収されている。
【画像】英国初 160km/h超の量産車 ヴォグゾール30-98 OEタイプ 同時期のクラシックも 全133枚
最終的にOEタイプは312台が生産され、30-98全体で数えると丁度600台になり、3割以上が残存していることには驚かされる。今回は5台にお集まりいただいたが、コーチビルダーによる特別なボディを載せていた事実が見えて興味深い。
順にご紹介していくと、ジョン・ワース氏のOEタイプは1925年式。純正となるヴェロックス・ボディのツアラーで、オリジナルと呼べる状態にある。シャシー番号なども一致し、1935年から2000年までは2番目のオーナーによって維持されてきた。
2014年には、2年をかけたレストアが施されている。ステアリングホイールの位置が高く、アルミニウム製のダッシュボードには5枚のメーターが並ぶ。運転席側にリアブレーキのレバーがあり、ドアは助手席側だけだ。
逆パターンのH型オープンゲートが切られた、4速MTのレバーが右膝の横に来る。ペダルの配置は中央がアクセル。慣れるまでに数分は必要だろう。
感覚を掴めば、洗練され安定した30-98の走りを楽しめる。実際、想像以上に速い。スピードが乗ると、ステアリングホイールが驚くほど軽くなるが、遊びは少ない。
リア・ブレーキを効かせるには、レバーをかなり強く引く必要がある。それでも、すべての操作系は滑らかで、反応は正確だ。
現在では唯一のサルーン・レプリカ
チャーリー・ビショップ氏がオーナーのOEタイプは1926年式。ボディはコーチビルダーだったクリントン社による、サルーンのレプリカが載っている。
フロントガラスは左右で分割され、運転席側にもドアがある。オリジナルは40台が作られているが、1台も残っていないという。
ビショップのクルマも、27年前に納屋で発見された時点で、ボディは完全に腐っていたそうだ。レプリカながら、現在では唯一の30-98のサルーンとなる。
インテリアには高級感が漂い、リアシート側の空間も広い。当時のベントレーでも、叶わない水準にあったといえる。先細りのボディ形状のため、フロントシート側は足元が狭い。リアブレーキのレバーが、シフトレバーと一緒に車内へ並んでいる。
発進させると、トルクが太い印象はヴェロックス・ボディと同等。エンジンのブロックとヘッドもレストア時に新調されており、加速力は鋭い。ボディとフレームが別体のおかげで、走行中は驚くほど静かでもある。
ティム・ジョーンズ氏のOEタイプは1925年式。現在はウェンサム社のボディが載っているが、オリジナルはクリントン・サルーンだった。1952年に芝刈り機として働いている状態で、ヴィンテージ・スポーツカー・クラブ(VSCC)の会長に発見されたという。
その後は、1930年代のレーシングカーに似せたボディへ改造されている。ジョーンズが購入したのは1985年で、その時点でシャシーは短く加工され、補強用のクロスメンバーは切り取られていたそうだ。
HJマリナー社が手掛けたボートテール・ボディ
そこで彼はシャシーをオリジナルへ復元し、レプリカのボディを架装させた。クルマが仕上がって以降は、サーキットやヒルクライム・イベントへの参加だけでなく、フランスへの長距離旅行などにも活躍しているという。
ドアがなく、キャビンはスポーツカーというより、ヴィンテージの工芸品のように美しい。後期型で油圧ブレーキが備わり、右足のブレーキペダルで減速できるのも美点だ。
丘に伸びる坂道を飛ばすと、主要な操縦系もシャシー特性も洗練されているのがわかる。欧州大陸まで遠征したくなるのも理解できる。
そんな印象は、チャーリー・プリンス氏がオーナーの1923年式マリナー・ボートテールにも通じる。オリジナルではヴォグゾールのヴェロックス・ボディが架装され、初代オーナーが1930年までイランで乗っていたようだ。
その後、息子がマンチェスターまで自走で運び、別のオーナーが購入。1933年にコーチビルダーのHJマリナー社へ、ボートテール・ボディの製造が依頼された。その人は1966年まで所有していたという。
フロントアクスルに改良が加えられ、ブレーキの能力が大幅に高められている。キャビンは広々とした2シーターで、滑らかにカーブを描くテール部分は、大きな荷室に充てがわれている。ウェンサム社の無駄を排除したデザインとは、対極的といえる。
ヴィンテージカーの運転に慣れていない人でも、このOEタイプなら馴染めるはず。それでいて、30-98の特徴をしっかり宿している。
当時のオーナーを表彰台に立たせたOEタイプ
だが、AUTOCARとして注目したいのはオリジナルに近い1台。AOA 2のナンバーで登録されたOEタイプは、これまで数多くのイベントに参加してきた。現在は造詣が深いグレゴール・フィスケン氏が面倒を見ている。
1924年式で、シャシー番号はOE152。オーナーだったロナルド・ヒューズ氏が1933年にレース・レギュレーションへ合わせて改造し、1934年に開かれたブルックランズ・サーキットのイベントに参加。以来、多くの結果を残している。
グレートブリテン島の中西部、シェルズリー・ウォルシュのヒルクライムでは当時の最速タイムを残し、サーキット・イベントでもドライバーを表彰台に立たせてきた。1943年に売却されるが、以降の各オーナーもOEタイプの能力を引き出していたようだ。
筆者も、テストコースで本域に迫った。ダンロップのレーシングタイヤを履き、サイクルフェンダーをまとい、ボンネットから伸びる4本出しのエグゾーストが勇ましい。
1速を選び、右側に配されたアクセルペダルを踏み込むと、激しい唸りとともにパワーが放たれる。爽快な勢いを、しっかり路面を掴むシャシーが支える。
30-98を設計した技術者のローレンス・ポメロイ氏は、100年後も愛されていることを知ったら、きっと誇りに思うだろう。1907年以来、ヴォグゾールの本社だったルートンのオフィスが売却された事実は、知らせない方が良いかもしれない。
協力:デビッド・カーク氏、アンドリュー・デュアーデン氏、ルートン・ホー・ホテル、ニック・ポートウェイ氏、チャールズ・プリンス・クラシックカーズ
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