招待制となった“TCRイタリアン・フェスティバル”との併催で、6月10~11日にヴァレルンガで開催されたTCRワールドツアー第4戦は、ヒョンデ陣営のBRCヒョンデN スクアドラ・コルセがオープニングを制圧。ポールシッターとなったノルベルト・ミケリスが僚友ミケル・アズコナ(ヒョンデ・エラントラN TCR)を従えワン・ツーフィニッシュを飾ると、続くレース2は接触上等、波乱続発の荒れた展開をロブ・ハフ(コムトゥユー・レーシング/アウディRS3 LMS 2)が制し、新生世界戦での初勝利を手にしている。
ベルギーはスパ・フランコルシャンでの1戦を終え、単発イベント併催となった第3戦は、同じ週末にウイントンで行われたTCRオーストラリアのシリーズ戦日程と重なったベン・バルグワナ(チーム・クラレット・スポーツ・バーソン・オートパーツ・レーシング/プジョー308 TCR)が欠場。同じくTCRヨーロッパでランキング首位につけるトム・コロネル(コムトゥユー・レーシング/アウディRS3 LMS 2)も、自主的な出場回避を選択した。
リンク&コー駆るエルラシェールが新世代TCR世界戦初勝利。ヨーロッパ組ジョン・フィリピは大金星
その一方、開幕以来最少台数となったグリッドには新たな顔ぶれも並び、ホンダ陣営のALMモータースポーツからはエストニア人デュオのマティアス・ヴォーテルとルベン・ヴォルトが初参戦。ヒョンデ陣営のBRCレーシングはTCRイタリアでランク2位につける期待の新星、18歳のマルコ・ブティを起用し、同アグレッシブ・チーム・イタリアは元TCRイタリア王者のケビン・チェコンを招聘する。
そしてシリーズ最大勢力の一角を占めるコムトゥユー・レーシングは、TCRヨーロッパでレギュラーを務める同じく18歳のコービー・パウエルと、前戦で悲願の世界戦初勝利を飾ったジョン・フィリピのふたりを、改めてTCRワールドツアーに登録した。
さらにここイタリアでクプラを走らせるSPコンペティションは、長年TCRの実力者として活躍を続けるオーレリアン・コンテと、アイスレースの第一人者であるシルヴァン・プシエ(クプラ・レオン・コンペティションTCR)のレギュラー勢で、ワールドクラスのドライバーたちに挑むこととなった。
こうして始まった週末は、最初のプラクティスからトップ10圏内が約0.6秒差という超接近戦となり、FP1はハフが首位を奪うと、続くFP2ではフレデリック・バービッシュ(コムトゥユー・レーシング/アウディRS3 LMS 2)を先頭に、フィリピ、ハフ、パウエルとアウディ陣営がトップ4を固める速さを披露する。
しかし予選で躍進を見せたのは、そこまで“爪を隠していた”ヒョンデ陣営で、ミケリスが開幕戦に続くポールポジションを獲得。フロントロウにはアズコナが並んで、エラントラN TCRのスピードを見せつける結果となった。
その勢いは14周のレース1でも遺憾無く発揮され、先頭の2台は蹴り出しがわずかに遅れながらも、背後のテッド・ビョーク(リンク&コー・シアン・レーシング/リンク&コー03 TCR)とバービッシュのアウディを抑えてポジションをキープ。終始チームメイトとの差を秒差圏内で凌ぎ切ったミケリスが、ポイントリードを拡大するトップチェッカーを受けた。
「クルマはとてもうまく機能していた。僕らは1カ月前にここでテストしており、ロングランに集中していたんだ」と明かした勝者ミケリス。「昨日は(ポール獲得で)少し幸運が味方したと思ったが、今日は充分な準備ができていたと思う。そしてミケルが後ろにいたから、この結果は決して簡単ではなかったよ」
■「こんなレースはフェアじゃない」ウルティアが心境を吐露
続いて日曜現地16時開始の予選トップ10リバース採用レース2は、最前列に並んだマ・キンファ(リンク&コー・シアン・レーシング/リンク&コー03 TCR)とフィリピの背後で、スタート直後からありとあらゆる混乱が発生する。
3番手発進だったネストール・ジロラミ(ALMモータースポーツ/FL5型ホンダ・シビック・タイプR TCR)はフライングスタートで、マ・キンファのリヤにあわや追突の状況に陥ると、ここでの減速で中団に飲み込まれ、折り返しの右ロングヘアピンを前に大きくコース外へ弾き飛ばされる事態に。これでジロラミは勝負権を失ったばかりか、ジャンプスタートの5秒加算ペナルティまで課されてしまう。
その後もリンク&コーやアウディ、ヒョンデらがサイド・バイ・サイド、コンタクト上等のポジション争いを繰り広げる中、ヤン・エルラシェール(リンク&コー・シアン・レーシング/リンク&コー03 TCR)らを仕留めてするすると前方へ進出してきたハフが、3周目の最終コーナーでマ・キンファのインサイドを奪って首位に躍り出る。
これでエルラシェール、フィリピにも先行されたマ・キンファは、続くラップの攻防で車両左サイドをグラスエリアに落とし、全開のままバランスを失って高速スピン。360ターンを何度も喫しながらトラック上を横切り、なんとか後続との衝突を免れてグラスエリアに停車する。
するとその直後には、実質の3番手争いを展開していたサンティアゴ・ウルティア(リンク&コー・シアン・レーシング/リンク&コー03 TCR)とフィリピがクラッシュしてコースオフ。リンク&コーはコース復帰してピットに戻ったものの、アウディがグラベルにスタックしたことでセーフティカーが導入される。
14から16周に延長された7周目のリスタート以降、パウエルのクラッシュやマルコ・ブティへのドライビングスタンダードの審議など、若手18歳にも試練が訪れるなか、力強いリスタートでエルラシェールを突き放したハフが首位フィニッシュ。3位に続いたバービッシュの背後では、三つ巴の“コンタクトバトル”の末に、漁夫の利を得たミケリスがアズコナ、ビョークに先着する結果となった。
「ようやくレース2が終わったが……僕にとっては難しい週末だった。(前戦の)スパでも見たように、これほど多くのクラッシュがあるのにペナルティも何もないのはバカげていると思うよ」との心境を吐露したのは、タイヤ交換の末に15位でレースを終えたウルティアだ。
「僕は3番手を走っていて良いポイントを獲得できそうだったのに、バービッシュに激しく衝突されてクルマが壊れ、ピットインしなければならなくなった」と、フィリピをリタイアに追いやったアクシデントの真相を明かしたウルティア。
「ツーリングカーは時にアグレッシブになることがあるのは理解しているが、これはレースではないと思う。ビデオを見て、レースディレクターに相談し、対処する意思があるかどうかを確認するつもりだ。こんなレースはフェアじゃないよ……」
現状、ランキング首位をいくミケリスがエルラシェールとの差を25点に広げ、33点差でハフが追う構図となったTCRワールドツアーだが、続く第4戦はふたたびTCRヨーロッパ・シリーズとの併催イベントに回帰し、連戦となる6月17~18日のハンガロリンクで開催される。
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