2024年F1開幕戦バーレーンGPは、ハースの小松礼雄チーム代表が初めて采配を振るったレースだった。
ケビン・マグヌッセン12位、ニコ・ヒュルケンベルグ16位という結果は、去年の開幕戦の13、15位とほぼ同じ。レース展開自体も、10番グリッドからスタートしたヒュルケンベルグが接触事故で大きく後退し、一方のマグヌッセンは後方から粘り強く順位を上げていってチェッカーを受けた点はそっくりだ。
しかし、実体は大きく違う。去年のハースは予選一発はそこそこ速く、ヒュルケンベルグは全22戦中8回Q3に進出。第9戦カナダGPの予選では、マックス・フェルスタッペンに次ぐ2番手の速さを見せたほどだった。しかし決勝レースではタイヤの持ちが極端に悪く、じりじりと順位を下げてポイント圏外でレースを終えるパターンだった(カナダGPも5番グリッドから15位完走)。
それが今回の開幕戦では、マグヌッセンは15番手からスタートで12番手に順位を上げると、アストンマーティンのランス・ストロール、ウイリアムズのアレックス・アルボンらと互角のペースで周回を重ねた。さらに終盤はレースペースに勝るRB(レーシング・ブルズ)の2台にDRS圏内に迫られながらも、コンマ6秒差で逃げ切った。その間のラップタイムは、激しいバトルを繰り広げながらも、1分36秒台前半~後半の非常に安定したペースだった。
一方のヒュルケンベルグも、1周目の接触で最下位まで落ちたものの、中古ソフトを履いた最終スティントでは1分35秒台を綺麗に並べ、16位でチェッカーを受けた。
前日の予選Q3でチームはヒュルケンベルグに新品ソフトを履かせず、レースに温存する戦略を取った。せっかくのニュータイヤは1周しか使えなかったが、安定したレースペースを見る限り、もしあの事故がなければヒュルケンベルグのポイント獲得の可能性は非常に高かったはずだ。
ハースは今季に向けて、「決勝レースでのペース改善」を最大の目標に据えてマシン開発を進めてきた。新車VF24はサイドポンツーンの大きな絞り込みやエンジンカウルのデッキ化など、レッドブルの手法を取り入れてはいるものの、全体的にはオーソドックスな進化に留まっている。
とはいえライバルチームに比べれば、開発部門の手薄さは否めない。昨シーズンの不振の責任を取る形でのギュンター・シュタイナー前代表の突然の解任の余波も、完全には収まっていないはずだ。
しかしそんな困難な状況下、小松新代表は一見遠回りに見えても着実に戦闘力を上げていく方針をブレずに続けた。幕直前テストでのハースは、2日目までずっと18~20番手。その間、チームはハードタイヤでのロングランをひたすら重ねていたのだった。
ハースの好調なロングランペースの一因として、1年前より8~10度以上低かった路面温度に助けられた部分も確かにあっただろう。小松代表も、「決して完璧なレースではなかった」と、結果には満足していない。
しかし一方で、「(マグヌッセンのレースは)今年の僕たちが戦えることを示してくれた」と、自信をのぞかせる。まだ開幕戦を終えたばかりではあるが、今季のハースは中団グループの中で、RBやウイリアムズと互角に戦えるチームではないだろうか。
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