7月14日、南米ブラジルのアウトドローモ・ホセ・カルロス・パーチェ(インテルラゴス・サーキット)で、2024年WEC世界耐久選手権第5戦『サンパウロ6時間』の決勝レースが行われ、セバスチャン・ブエミ/ブレンドン・ハートレー/平川亮組8号車トヨタGR010ハイブリッド(TOYOTA GAZOO Racing)が総合優勝を飾った。
実に10年ぶりにWECのシリーズカレンダーに戻ってきたサンパウロ。この週末は、走り初めの金曜から、ときに小雨も落ちるすっきりしない空模様が続いていたが、日曜は青空が広がり現地11時30分のスタート時点で、気温は前日より7℃高い22℃、路面温度は29℃まで上昇した。
序盤のパンクから2位への挽回は「予想外だった」とロッテラー。6号車ポルシェが選手権のリードを拡大
決勝レースは地元ブラジル出身の元F1ドライバーであるタルソ・マルケスのフラッグ振動を合図に開始され、怪我から復帰したマイク・コンウェイ駆る7号車トヨタGR010ハイブリッド(TOYOTA GAZOO Racing)がホールショットを奪った。また、2番手スタートとなった8号車トヨタもハートレーがタイヤスモークをあげながらターン1で飛び出し、ターン2をカットするかたちとなったが2番手で隊列に戻っている。
レース序盤はトヨタの2台がワン・ツーのまま好ペースで走行し、3番手につける5号車ポルシェ963(ポルシェ・ペンスキー・モータースポーツ)以下のライバルを大きく引き離していく展開に。
その後方では2号車キャデラックをパスし4番手を争っていた12号車ポルシェ963(ハーツ・チーム・JOTA)とポルシェ・ペンスキーの6号車ポルシェがターン3先のストレートで並んだ際に接触。カスタマーカーから幅寄せを食らうかたちとなった6号車ポルシェは右フロントタイヤのパンクで順位を落とし、12号車も30秒のストップ&ゴーペナルティでポジションを失った。これにより9番グリッドからスタートでふたつ順位を上げていた51号車フェラーリが4番手に浮上している。
その51号車は、2時間目の序盤に迎えた1回目のピット作業を終えると一時3番手に浮上するが、すぐに5号車ポルシェに再逆転を許す。その後レース序盤に導入されたフルコースイエロー(FCY)時の手順違反によるドライブスルーペナルティを受けるも4番手のポジションを守った。この直後、19秒の差をつけて首位を快走していた7号車トヨタにも同様のペナルティが下る。
コンウェイがドライブする7号車はペナルティの消化後、姉妹車の8号車トヨタと、2番手との差を詰めてきた5号ポルシェの間でコースに復帰する。トヨタ勢は直後に順位を入れ替えるが、8号車はこのあとポルシェにかわされ3番手に順位を落とした。
3時間目。このレース最大のドラマが待っていた。ふたたび首位に立った7号車トヨタがルーティン作業のため2度目のピットに入った際、燃料関係のトラブルを解消するためにマシン右サイドのパネルを開けて作業を行った。これにより大きくタイムを失った7号車はワンラップダウンとなり18番手まで順位を落としてしまう。
一方コース上では、ペースダウンがみられたハートレーの2スティント目を早めに切り上げ、平川にドライバー交代を行っていた8号車トヨタがトップに浮上する。同じくピットタイミングがずれた6号車ポルシェが2番手、すぐ後ろの3番手に姉妹車5号車ポルシェが続く展開に。
平川の好走で8号車トヨタが徐々にリードを広げていくなか、レース中盤に2番手を走行した5号車ポルシェは、4回目のピット作業でレースコントロールから提示された、オレンジディスクに従いリヤセクションを交換したためポジションを落とす。このクルマはレース終盤は51号車フェラーリ499P(フェラーリAFコルセ)と3番手を争うこととなる。
8号車トヨタは平川からブエミにドライバー交代した最終盤も危なげない走りでラップを重ね、陽が大きく傾くなか悠々トップチェッカー。2位となった6号車ポルシェに1分8秒の大差をつける圧勝で今シーズン初勝利を飾った。
51号車フェラーリと5号車ポルシェ、さらに38号車ポルシェ963(ハーツ・チーム・JOTA)が加わった3番手争いは、最後のピットストップでフェラーリを逆転した5号車ポルシェに軍配が上がる。ジェンソン・バトンがドライブする38号車ポルシェは、残り10分を切った段階まで51号車フェラーリをわずかにリードしていたが、技術的違反による5秒のストップ&ゴーペナルティを受けたことでこのポジションを守れず7位に終わった。
マシントラブルの影響で一時は最後尾近くまで順位を下げた7号車トヨタは、ニック・デ・フリースの力走でスタートから3時間40分を前に入賞圏内に復帰すると、終盤は小林可夢偉が50号車フェラーリ499P(フェラーリAFコルセ)をかわし、チェッカーまで残り5分のタイミングで51号車フェラーリもコース上で攻略して4位でフィニッシュしてみせた。前戦のル・マンでワン・スリーを達成したフェラーリ勢は5位と6位。8位に93号車プジョー9X8(プジョー・トタルエナジーズ)が入り、9位となった15号車BMW MハイブリッドV8(BMW MチームWRT)に続いてチェッカーを受けた36号車アルピーヌA424(アルピーヌ・エンデュランス・チーム)までがポイントを獲得している。
LMGT3クラスは、2時間目にポールシッターの85号車ランボルギーニ・ウラカンGT3エボ2(アイアン・デイムス)を攻略してトップに立った、アレクサンダー・マリキン/ジョエル・シュトーム/クラウス・バハラー組92号車ポルシェ(マンタイ・ピュアレクシング)が、その後のレースを支配。最後まで順位を譲ることなく214周をラップし、クラス2位に1周差をつけて開幕戦以来の今季2勝目を飾った。
2位は、9番グリッドから徐々に順位を上げ2時間目に3番手に浮上した後、女性チームのランボルギーニがトラブルで戦線を去ったことでさらにポジションを上げてきた27号車アストンマーティン・バンテージAMR GT3(ハート・オブ・レーシングチーム)だ。このクルマは、レース最終盤にFCY手順違反によるドライブスルーペナルティを科せられたが、3番手に対して大きなギャップを築いていたため順位を維持して2位表彰台を獲得した。
表彰台の最後のひと枠は95号車マクラーレン720S GT3エボ(ユナイテッド・オートスポーツ)が獲得した。4時間目に佐藤万璃音が乗り込んだユナイテッドの一台はグリッドポジションからひとつ順位を落としていたが、終盤のスティントで3番手に浮上。最後は姉妹車59号車マクラーレンを4位に従えクラス3位でフィニッシュしている。
この他の日本勢は、777号車アストンマーティン・バンテージAMR GT3(Dステーション・レーシング)が9位入賞。木村武史組57号車レクサスRC F GT3(アコーディスASPチーム)はポイント獲得まであと一歩に迫る11位、小泉洋史組82号車シボレー・コルベットZ06 GT3.R(TFスポーツ)はマシントラブルに見舞われ、レース中盤に戦列を離れている。
WECの次戦第6戦はアメリカでの『ローン・スター・ル・マン』だ。8月30日から9月1日にかけて開催されるこの6時間レースは、テキサス州オースティンのサーキット・オブ・ジ・アメリカズ(COTA)が戦いの舞台となる。
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