リアル空飛ぶじゅうたん
このクルマが発表されたときはびっくりしたものだ。あのロールス・ロイスによるSUVである。530.20カラットを誇る世界最大のダイヤモンドにちなんで「カリナン」と名付けられ、12気筒エンジンに全輪駆動。そして贅沢この上ない装備の数々。
カリナンは2018年に登場し、2024年5月にシリーズIIへと発展。24年6月初旬にイビサ島で試乗した。そこでは依然として、圧倒的ともいえる存在感を放っていた。乗り味をひとことでいうなら、ザ・ロールス・ロイス。同社の製品づくりのフィロソフィがしっかり反映された出来映えだった。
どこがというと、ひとつには、ロールス・ロイスがずっと喧伝してきた「エフォートレス」な操縦性。力がいらずにリラックスして、ほとんどすべての操作が行えるような設計だ。
例えば、軽いステアリング、強大なトルクゆえ軽くアクセルペダルを踏み込んだだけですいすいとスピードを上げていく加速性、踏力をそれほど使わなくても重量級の車体をしっかり減速する制動力、それにドアの開閉を含めて多くが電動で行える操作性。慣れると(恐ろしいことに)こんな楽なクルマはない、と思えてくる。
もうひとつの特徴が、「マジックカーペットライド」。魔法のじゅうたんなどと訳されるが、おとぎ話やゲームでおなじみ、ふわふわと空を飛ぶじゅうたんのような乗り心地が、ロールス・ロイス車の目指しているところだ。
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オーナーの平均年齢は想像以上に若い
カリナンはそもそも、420kW(571PS)の最高出力と850Nmの最大トルクを発生する6.75リッターのV型12気筒エンジンに、全輪駆動システムの組合せ。パワーと操縦性においては、「従来のモデルでもオーナーに不満はなかった」(本社のエンジニア)とのことで、シリーズIIではそこはほぼそのまま継承。
変わったのは、フロントマスクとリアのデザイン。加えて23インチにインチアップしたロードホイールが採用され、デジタライゼーション技術がアップデートされ、さらに新しいシート地を含めて内装が新しくなった。
イビサ島で行われた試乗会では、もう1台、最高出力が441kW(600PS)に上がり、最大トルクも900Nmに増強された「ブラックバッジ・カリナン」も用意された。こちらは足まわりが少し硬められ、ハンドルの操舵力もやや重めとなったスポーティ志向のオーナー向け。
カリナンの登場で、ロールス・ロイスのオーナーの平均年齢は50代から40代に若返ったという。同時に、ブラックバッジもオーナーの若返りに貢献しているそうだ。オーナーの平均年齢を下げることは、どのブランドも一所懸命取り組んでいるので、ロールス・ロイスにとってカリナンの企画は、大成功だったといえるだろう。
カリナンだからできること
実際、自分で走らせると、とても楽しい。軽い操舵感覚には少しの慣れが必要かもしれないが、ふわりふわりと重量を感じさせずに走る感覚は、慣れると大変快適だし、慣れること自体がクルマ好きには楽しさといえる。
ブラックバッジ・カリナン・シリーズIIは、さらに運転を積極的に楽しみたいひとに、向いている。イビサ島の道は幅員の狭いところが多いが、操舵への車体の反応が速く、キビキビとという感じで操縦できるので、不安はないのだ。
イビサ島に用意されたカリナン・シリーズIIは、さまざまな外板色と内装の組合せで、2台と同じ仕様がなかった。ほとんど無制限に、オーナーは好みの仕様をオーダーできるという。これもロールス・ロイスならではだ。
余裕あるサイズのパッケージング、パワフルな走り、静かで快適な車内、そして自分仕様の仕上げ。カリナン・シリーズIIにまず興味を持つのは、シリーズIに乗っているひと、とも聞いた。なるほど、上記の特長はカリナンだからこそ手に入る喜びを知っているひとが、まずオーナーになる。よくわかる気がする。
日本での価格は、「カリナン・シリーズII」が4645万4040円。「ブラックバッジ・カリナン・シリーズII」が5415万4040円(ともに税込み)。
SPECIFICATIONS
ロールス・ロイス カリナン・シリーズII(ブラックバッジ・カリナン・シリーズII)|Rolls-Royce Cullinan SeriesII(Black Badge Cullinan SeriesII)
ボディサイズ:全長5355×全幅2000×全高1835mm
ホイールベース:3295mm
車両重量:2725kg
駆動方式:4WD
エンジン:6750cc V型12気筒
最高出力:420kW(441kW)
最大トルク:850Nm(900Nm)
価格:4645万4040円(5415万4040円)
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