レッドブルF1のチーム代表クリスチャン・ホーナーは、F1におけるアメリカの大手自動車メーカー『フォード』と『ゼネラルモーターズ(GM)』の戦いは、アメリカの市場においてグランプリの知名度をさらに高めるだろうと考えている。
数十年にわたり、F1はファン層が限られていたためアメリカ市場で足がかりを築くのに苦労してきた。しかしここ数年でF1は、主にNetflixで配信された大人気ドキュメンタリーシリーズ『Drive to Survive(邦題:栄光のグランプリ)』の成功のおかげで、アメリカ国内で急激な成長を遂げている。
F1次世代パワーユニット時代に参戦する6マニュファクチャラーとそれぞれのカスタマーチーム。メルセデスが最大シェア
F1は、アメリカのF1視聴者が大幅に増加したことで膨大な放映料を獲得しただけでなく、オースティンでのアメリカGPに加えてマイアミGPとラスベガスGPが開催され、レース数が3戦になったことで、その成長はピークに達している。また過去2シーズンにわたってマックス・フェルスタッペン(レッドブル)が比類のない優位性を確立し、2023年には記録破りの19勝を達成したことが、アメリカでF1への注目を集めることに貢献したことは間違いない。
2023年の初めに、フォードはレッドブルとの“長期戦略的パートナーシップ”を発表した。このパートナーシップには、2026年にF1に登場することになっている次世代ハイブリッドパワーユニットの開発において、フォードがレッドブル・パワートレインズ(RBPT)に技術支援を提供することが含まれている。
一方GMは、2028年からエンジンサプライヤーとしてF1に参入する意向があるとして、FIAに登録している。アンドレッティ・キャデラックの参戦についてはフォーミュラワン・マネジメントによる協議が現在進行中だが、ゴーサインが得られれば、GMはエンジンを供給する計画だ。
ホーナーは現在、フォードとGMの間の潜在的なライバル関係がアメリカのファンをさらに魅了し、スポーツの露出をさらに高める触媒になると見ている。
「GMが関与することを選択した場合、理想的には既存のチームを通じてということになるだろう」とホーナーは『Speedcafe』に語った。
「フォードとGMの戦いは間違いないと思う……。これらのブランドはアメリカ国内で大きな愛国心に支えられ、非常に多くのファンを抱えている。フォードブランド単体でもそうだ」
「フォード派かGM派に分かれ、そこから生まれる競争も刺激的なものになるかもしれない」
アンドレッティ・キャデラックのF1計画はすでにFIAの事前承認を受けている。しかしF1自体は、既存チームが年間の分配金の希薄化に苦しむことが避けられないとして、11番目のチームを追加することに消極的だ。アンドレッティ・キャデラックは、2社の大手パートナーの声を通じて、彼らの存在が商業的に有益であることをF1に納得させなければならない。
しかしホーナーは、エンジンサプライヤーとしてのキャデラックの関与度合いについては、明確さが欠けていることが問題だと考えている。
「GMがやろうとしていることの背後にあるビジネスモデルがどういうものなのか、検討する必要がある」
「それは彼らのプロジェクトなのだろうか? それともアンドレッティのプロジェクトなのだろうか? それが純粋にGMのプロジェクトで、F1に参入する唯一の選択肢が既存のチームを通して行うことであるのなら、アウディが(ザウバーで)やっていることと同様に、彼らにも同じことをしてほしいと願うだろう」
「それほど遠くない過去には、破産したチームがいくつかあった。各チームが堅調になったのは最近になってからのことだ。そうしたことから、なぜ各チームが拡大や希薄化に消極的であり、逆に既存のチームのひとつに加わる必要があると言っているのか理解できるだろう。明らかに商業権保有者は神経質になっていると思う」
アメリカにおける最近のF1の拡大は目覚ましいものがあるが、ホーナーは、同国におけるF1の基盤を維持する重要な柱は、トップクラスのアメリカ人ドライバーだと考えている。今日に至るまで、モータースポーツの伝説であるマリオ・アンドレッティは、F1でタイトルを獲得した最後のアメリカ人ドライバーだ。1978年のF1世界チャンピオンになるという偉業は、同年にザントフォールトで達成された。
ウイリアムズはローガン・サージェントが後に続くよう期待をかけているが、23歳の彼が近い将来F1で安定した勝者になる可能性は低い。
「市場の浸透率を見ると、その大部分がNetflixシリーズから来ていることを認識する必要がある」とホーナーは主張した。
「それにより市場が開かれ、今では3つのレースが存在しているが、これは前例のないことだ。フォードがF1に復帰することは、4年前には想像もできなかった。現在ではフォーチュン500企業のうち5社が我々のマシンに関与している」
「ファンベースは拡大しており、会場も拡大しているが、F1がアメリカに長期的に浸透するために必要なのは、競争力のあるアメリカ人ドライバーと、勝利を目指してレースをするドライバーだと思う」
チャンスを待っているドライバーがいると感じているかどうか尋ねられたホーナーは次のように答えた。
「ジュニアフォーミュラに参戦するドライバーはますます増えているので、それは時間の問題だ」
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