まずはマクラーレンGT
マクラーレンの最新モデルである、750S/アルトゥーラ/GTの3台にまとめて試乗する貴重な機会を手に入れた。
【画像】マクラーレン3台イッキ乗り 750S/アルトゥーラ/GT 全55枚
これまでにもGTと720Sなどのように、2台までであれば比較試乗したことはあったが、現行ラインナップを3台まとめて乗ったのは今回が初めて。おかげで、それぞれのポジションが非常に明確になったので、ここでご報告しよう。
試乗コースは広島空港を出発して尾道のベラビスタ・スパ&マリーナを目指した後、ここで折り返して広島市内に向かうというもの。合計で160kmほどと短いうえに高速道路中心のコースだったが、それでも3台のキャラクターを把握するには十分だった。
最初に試乗したのは「GT」
そのコンセプトがグランドツーリングということもあって、乗り始めた瞬間に足回りのしなやかさを感じた。とりわけ、コンフォート・モードを選んでおけば市街地の低速域でもタイヤからゴツゴツした印象が伝わってこなくて快適。
さらに高速道路に足を踏み入れれば、深いわだちで時おり進路を乱されることがあったものの、基本的な直進性が良好なうえ、ステアリングフィールは情報量は多くありながらも洗練されているので、長時間ドライブでも飽きることはないだろう。
くわえていえば、キャビン後方に搭載されたV8エンジンから緻密な回転フィールが伝わってくることも、ロングツーリングでは極上のBGMとなってくれるはずだ。マクラーレンらしく視界が良好なのはもちろんのこと、GTはラゲッジスペースも豊富なので、まさに「旅するスーパースポーツカー」と呼びたくなる1台である。
次はマクラーレン・アルトゥーラ
続いて試乗はV6ハイブリッド・スーパースポーツである「アルトゥーラ」
このモデルにも、これまで国内外で何度も試乗してきたが、市街地を走っているときにコツコツとしたショックを感じたのは今回が初めて。「ひょっとして、サーキット走行用のピレリPゼロ・トロフェオRを履いている?」
なんて疑ってしまったが、確認したところ、通常のPゼロが装着されていたので、謎は深まるばかり。いずれにせよ、硬さを感じたのはタイヤの踏面に起因すると思われる上下動の小さな範囲だけで、サスペンションが本格的に動き出す領域ではマクラーレンらしいしなやかさを感じたことを明記しておきたい。
まずはEVモードで走り始めると、当然のことながらその静けさに圧倒される。これまでスーパースポーツカーで出かけたくても近所へのご迷惑を考えて朝晩は控えていた方々にとって、このノイズレスな世界は歓迎すべきものに違いない。
ただし、V6エンジンのサウンドは、やや音程が低めなうえにこもり気味。これも、以前試乗したアルトゥーラでは経験したことがないもので、意外だった。
いっぽうで動力性能は圧倒的で、どんなシーンでも物足りなさは皆無。とりわけ、電気モーターを活用したスロットルレスポンスの鋭さとシフトショックの小ささは、マクラーレンのなかでもアルトゥーラがベストといえる。
今回はタイヤの硬さとエグゾーストサウンドのこもり音がやや気になったものの、その軽快なハンドリングは市街地でも十分に堪能できるほか、以前、オートポリス・サーキットでGTと乗り比べた際には、初期のステアリングレスポンスが格段に素早く、爽快なコーナリングが楽しめたことを付け加えておきたい。
最後はマクラーレン750S
先月ポルトガルで国際試乗会が行われたばかりの「750S」を日本で
その印象をひとことでいえば、GTとアルトゥーラのいいとこ取りをしたというもの。つまり、GTの快適性とアルトゥーラを上回る軽快さを1台で堪能できたのである。
まずはその乗り心地のよさに言及しなければいけない。
前作720Sもスーパースポーツカー界ではベンチマークとされるほど乗り心地は快適だったが、750Sでは路面からのゴツゴツ感が一段と減ったうえに、サスペンションのストロークがさらに滑らかになったように感じられる。
この傾向はハンドリング・モードのコンフォートを選んだときにとりわけ強く、上質なプレミアムセダン並みの快適性を味わえる。
これには、マクラーレン独自のアクティブサスペンションで、GTやアルトゥーラには採用されていないプロアクティブ・シャシー・コントロール(PCC 第3世代となった750SではPCC3と呼ばれる)の効果もあるはずだが、PCC2を搭載していた720Sでは乗り心地がややどっしりとしてフラットな姿勢を崩さなかったのに対し、750Sでは路面の凹凸にあわせて軽くノーズが上下する点が目新しい。
ただし、その程度はごく軽く、ピッチングとして意識される範囲のものではない。また、マクラーレンのPCCをあまり経験したことのないドライバーのなかには、720Sの超フラットな身のこなしをやや不自然と感じる向きがあったので、750Sのほうが多くのドライバーから受け入れられることだろう。
さらにいえば、ハンドリング・モードをコンフォートからスポーツに切り替えれば、低速域で感じられた軽い上下動もすっと消え去るうえ、ハーシュネスへの影響もわずかなので、フラットな姿勢をお好みの方はスポーツを選ぶといい。
エンジンはGT同様、V8の高品質な回転フィールが堪能できるもの。しかも、エグゾーストノートが高音成分中心の緻密なものに生まれ変わったほか、音量も小さめで実に心地いい。それでいながら、必要とあれば0-100km/h加速2.8秒の爆発的なダッシュ力を発揮。280km/hオーバーからのフルブレーキングでもステアリング修正がほぼ要らないことは、先月エストリル・サーキットで行われた国際試乗会で確認済みである。
というわけで、長距離ドライブ好きには「GT」が、スポーツドライビングをこよなく愛する方には「アルトゥーラ」がお勧め。そして、その両方の世界を1台で手に入れるなら「750S」しかないというのが、私なりの結論である。
試乗車のスペック
マクラーレン750S
価格:3930万円(税込 オプションなし)
全長×全幅×全高:4569×1930×1196mm
最高速度:332km/h
0-100km/h加速:2.8秒
燃料消費率:12.2L/100km
CO2排出量:276g/km
車両重量:1277kg
パワートレイン:V型8気筒3994cc
使用燃料:ガソリン
最高出力:750ps/7500rpm
最大トルク:81.58kg-m/5500rpm
ギアボックス:7速オートマティック
タイヤサイズ:245/35R19(フロント)305/30R20(リア)
マクラーレン・アルトゥーラ
価格:3070万円(税込 オプションなし)
全長×全幅×全高:4539×1913×1193mm
最高速度:330km/h
0-100km/h加速:3.0秒
燃料消費率:4.6L/100km
CO2排出量:104g/km
車両重量:1395kg
パワートレイン:V型6気筒2993cc+モーター
使用燃料:ガソリン
最高出力:680ps/7500rpm
最大トルク:73.42kg-m/2250rpm
ギアボックス:8速オートマティック
タイヤサイズ:235/35ZR19(フロント)295/35ZR20(リア)
マクラーレンGT
価格:2695万円(税込 オプションなし)
全長×全幅×全高:4683×2045×1213mm
最高速度:326km/h
0-100km/h加速:3.2秒
燃料消費率:11.9L/100km
CO2排出量:270g/km
車両重量:1466kg
パワートレイン:V型8気筒3994cc
使用燃料:ガソリン
最高出力:620ps/7500rpm
最大トルク:64.24kg-m/5500-6500rpm
ギアボックス:7速オートマティック
タイヤサイズ:225/35ZR20(フロント)295/30ZR21(リア)
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