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最年少でダブルタイトル獲得の宮田莉朋「変えるのは自分自身」飛躍した1年の手応えと世界への自信

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最年少でダブルタイトル獲得の宮田莉朋「変えるのは自分自身」飛躍した1年の手応えと世界への自信

 2023年の全日本スーパーフォーミュラ選手権(SF)と、スーパーGTのGT500クラス両方を制し、史上5人目となる国内主要カテゴリーでダブルタイトルを手にした宮田莉朋。さらに24歳ということで最年少でのダブルタイトル達成となった。両カテゴリーでチャンピオン獲得直後の公式映像インタビューでは、いつになく喜びを爆発させるような振る舞いをみせた宮田。普段は大人しめな雰囲気もある彼だが、プレッシャーから解放された瞬間のようにも見えた。

ただ、本人にとっては緊張やプレッシャーとは違った悩みが、今シーズン終盤にはあったようだ。

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「正直(シーズン終盤は)SFの方に意識が向いていて、GTはある意味で“そっちのけ”なくらいの感じでした」と宮田。シーズン序盤から、両カテゴリーに参戦するなかで、心境の違いがあり、ダブルタイトルに関しても開幕当初はまったく頭になかったという。

「(シーズン最初にダブルタイトルの意識は)全然なかったですね。GTに関しては坪井(翔)選手とのペアというのと、36号車(au TOM'S GR Supra)の強さがあるので、GTの方がチャンピオンを獲れるかもしれないと思っていました。ただ、SFの方が難しいだろうと思っていて、本当に今年はSFで(チャンピオンが)獲れると思っていませんでした」

「それがSFでランキングをリードし始めてから『(SFでチャンピオンが)獲れるのかな?』という気持ちになってきました。ただ、実際に獲るにはいろいろな段階を踏まなきゃいけない。たとえば、予選でポールを獲らなきゃいけないとか……そこの悩みも出てきました」

 具体的に“チャンピオン”を意識し始めたのは、8月のSF第7戦もてぎを終えてからだという。

「もてぎSFが終わってから、SFのことを考えて寝られなくなりました(苦笑)。SFでタイトルを獲れなかったら、GTで悪い流れになってしまうから、とにかくSFのことで頭がいっぱいでした」

「他のカテゴリーに乗りながらも、ずっとSFのことを考えていました。乗っている時のクルマの挙動とか、ドライビングでの経験値など……少しでもSFに活きるものを探していたので、ずっと(GTは)そっちのけになっていました」

⚫︎スーパーフォーミュラの余韻に浸かりすぎて臨んだスーパーGT最終戦
 そんな中、10月29日に鈴鹿サーキットで行われたSF鈴鹿での最終戦で、タイトルを争うTEAM MUGENの野尻智紀やリアム・ローソンという強力なライバルを抑えて初のチャンピオンに輝いた37号車VANTELIN TEAM TOM’Sの宮田。同時に、翌週に行われるGTとのダブルタイトルを期待する声が増えた。

それでも当の本人は「ずっとSFの余韻に浸っていました」と、なかなかスーパーGTへの切り替えができなかったという。

「(SFでチャンピオンを)獲った直後は実感がなかったのですけど、日が経つにつれて実感が湧いてきました。その実感が一番大きかった時が、ちょうどGTの(サーキット)入り日で、GTに切り替えたくても切り替えられませんでした」

 さらに、スーパーGT最終戦の舞台が、GRスープラ勢が得意としていないモビリティリゾートもてぎということも、宮田の悩みや不安を増幅させる要因となったようだ。

「(GTの舞台がもてぎということで)普段ならいろいろ悩みに悩んで準備しなければいけない1戦だったのですけど、あまり悩まずここまで来てしまったというところで、自分の中では良くないサイクルに入っちゃっているというか、SFのチャンピオン獲得に対して余韻に浸りすぎている部分がありました」

「でも、余韻に浸りたいから……けっこう切り替えは難しかったですね」

 それだけ、彼自身のなかでスーパーフォーミュラでのチャンピオン獲得が大きな出来事だったのだろう。スーパーGTの最終戦では最後まで“ダブルタイトル”を意識することはなく「緊張は全然なかった」と語る。

「予選日も緊張というよりは不安しかなかった。どれだけ緊張しても、自分の力を出せるか否かは自分次第です。ただ、全てを出し切った時にそこ(目標としている順位)に行けるかというのは、自分ではどうしようもできないところなので、そっちの不安要素が大きかったです」

「ただ、予選Q1を突破してからは『3位以内であればいけるな』と思いましたし、まさにその通りになりました。本当に坪井選手には感謝しかないですし、信頼を置けるチームのみなさんがいてくれたのも大きいです。予選終わってからは『絶対に行けるだろう』という気持ちでした」

 こうしてスーパーGTでもシリーズチャンピオンを獲得し、ダブルタイトル獲得という快挙を成し遂げた宮田。「今は正直実感がないですけど、日が経つにつれて実感が湧くと思います。これからのオフもテストとか走行機会は続くのですけど(二冠達成の余韻を)楽しみたいと思います」と笑みを見せていた。

⚫︎ダブルタイトルを獲得した宮田が描く世界で戦う自分自身の姿
 チャンピオン記者会見で、ダブルタイトル達成について質問された宮田は、「FIA-F4、SFライツ(旧全日本F3)、スーパーフォーミュラ、スーパーGT500と、日本の主要となるカテゴリーで全部チャンピオンを獲ってきたので……心置きなく世界に行けるなと思います!」と胸を張って発言。FIA-F4や全日本F(現SFライツ)で戦っていたころから、インタビューに行くたびに「世界の舞台に行きたい」と言い続けてきた。

「やっぱり、発言するのが大事だと思います。自分が何になりたいというのは、人に伝えなきゃ分かってもらえないです。もちろん、それを伝えた時に自分が残している成績も大事になってきます。きちんとその成績を残せたと思うので、この結果を自分の将来につなげるというのが、これからやるべきことかなと思います」

「日本のカテゴリーは本当にレベルが高いので、胸を張って、日本人のレベルの高さを世界で証明することが、自分が次にやるべきことかなと思っています」と宮田。来季は海外レース中心のプログラムになると見られており、このダブルタイトル獲得で、新たな挑戦に向けて自信を深めている様子だった。

 まさに飛躍の1年といえる2023シーズン。その中で宮田自身も世界の舞台に挑戦する上で、手応えを振り返る。

「もともと速さはある方だと思っていましたけど、歯車が合わなかったり、自分は追い上げたいのに追い上げられなかったり、いろいろ足りない要素がありました。でも、今年に入って克服できたというか、自分的には追い上げられるようになりました。本当に力強いレースができたというのが、大きな成長だと思います」

「やっぱり世界に行くには、そういう強さが必要になってくると思います。(海外ではレースでの接触などの際に)とにかく自分の行為を正当化してくる部分もあります。僕たち日本人は真面目だし、クリーンなところがあって、そこは好きな部分ですけど、それだけでは世界の舞台では生き残れないというのは充分に分かっていますし、それを変えるのは自分自身だと思います」

「まだ海外のレースを経験していない部分も多いので分からないところもありますが、少なからずトラック上では力強いレースができるようになったので、しっかりこれを世界でも発揮して、気持ちだけは負けないようにしていけば、活躍できると思っています」

 国内主要カテゴリーでのダブルタイトルの余韻に浸るのも束の間、すでに来年のことに意識を向け始めている宮田。まだ来季の参戦カテゴリーなどは発表されていないが、自身が夢と語っていた世界の舞台に、また一歩近づいたシーズンとなったことは間違いないだろう。




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