現在位置: carview! > ニュース > スポーツ > シビック・タイプR-GTをGT500に投入するホンダHRC陣営の背景と『5ドア』の開発ポイント

ここから本文です

シビック・タイプR-GTをGT500に投入するホンダHRC陣営の背景と『5ドア』の開発ポイント

掲載 8
シビック・タイプR-GTをGT500に投入するホンダHRC陣営の背景と『5ドア』の開発ポイント

 東京オートサロン2023の開幕日にサプライズで発表されたホンダの2024年スーパーGT500クラスの新車両、シビック・タイプRーGTコンセプト。事前に新型レーシングカーの告知はされていたが、どんな車両なのか極秘のまま発表当日を迎え、その車両がハコ車レースの最高峰のスーパーGT500クラスの車両だったことで大きな話題となった。このタイミングでの発表、そして新車両としてシビックの投入を決めた背景を探った。

 今回大きな話題となった要因は『5ドアのシビック』、そして『FF(フロントエンジン・フロントドライブの前輪駆動)最速マシンとしてのシビック』というふたつのキーワードと、これまでの『2ドア』、『FR(フロントエンジン・リヤドライブの後輪駆動』のスーパーGT500車両のイメージの相違だった。

ホンダ、2024年のGT500ベース車両はシビック! 『シビック・タイプR-GTコンセプト』をオートサロンでサプライズ発表

 2024年からのスーパーGT500クラスの車両規定の詳細はこれからだが、駆動方式はFRが継続されることは間違いない。現行のNSX-GTがミッドシップではなくFRのレーシングカーとしてファンに認知されていることも今回のシビック投入の後押しとなったことは想像に難くない。5ドアについても、DTM(ドイツ・ツーリングカー選手権)との共通規定Class1をベースにしたGT500車両規定が適用されており、実質、JAFの公認団体であるGTアソシエイションが認めた車両であれば参戦には問題ない。

 次期GT500車両の選定と導入に当たって、HRC(株式会社ホンダ・レーシング)とホンダで行われた協議のなかで実際にはいくつかの候補車があったというが、最終的にシビック・タイプRでほぼ異論はなく決まったという。昨年、新生HRCとして4輪のレース関連部門がまとまり、技術部門と営業部門が統一されたことで狙いや意思の疎通が共有化されやすくなったメリットと、ホンダ陣営としてシビック・タイプRへの期待の高さがその背景にあったようだ、

 発表会後、HRCの渡辺康治社長が答える。

「今はNSXをベースとしたNSX-GTでスーパーGTに参戦していますけど、ベースとなる量産モデルのNSXが販売を終了することで、今のGT500クラスのNSXは2023年が最後のシーズンになります。そこで2024年からのスーパーGT500クラスの車両をどうしていくのか検討してきました」

「そのなかでいくつかの候補がありましたが、我々ホンダとしては、やはりこれまでの過去を振り返ってシビックというモデルは、モータースポーツシーンのなかで量産モデルとして中心的な存在であったこと、それからタイプRというブランドが我々ホンダの走りを象徴するブランドであると。このふたつから、やはりスーパーGTのベース車に一番相応しいのはシビックだということでホンダ、HRCで検討を重ねた結果、今回の決断に至りました」

 NSXの生産終了に伴い、2ドアのスポーツカーが現在のホンダのラインアップに見当たらないという事情はあるものの、そのなかでシビック・タイプRという選択はHRC、そしてホンダの最良の選択となったようだ。

 実際、発表されたシビック・タイプRーGTコンセプトはモックアップと言えども、全体的なフォルムには完成度の高さが伺えた。現在のGT500では共通モノコックが使用され、ベース車両を問わずにルーフ、ボンネットフード先端の高さやCピラーの位置は共通、前面と側面のボディ外寸を調整するスケーリングが導入され、各車の性能バランスがある程度制限されている。今回のモックアップはそのスケーリングがされた状態とのことで、サイズ感や形状はほぼ実車と同じと考えられる。

 それでも当然、5ドアとして後部座席分のキャビンの大きさは空力効率としてはデメリットになるが、NSXに比べての利点もあるという。渡辺社長が話す。

「5ドアベースのシビックですが、量産モデルとしてはもともと非常にいい空力の数値がありますし、今のNSXに対しても遜色のないレベルの空力数値までもっていけるのではないか、ということでHRC Sakuraの方で空力のメンバーが最後の仕上げに入っている段階です。(5ドアベースは)良い面、悪い面、両方ありますけど、トータルとしてはNSXと同じようなレベルに行くべく開発を進めています。競争力は高いと思っています」と期待を掛ける渡辺社長。

 実際、これまでのNSX-GTはリヤのインテーク部の形状がどうしても空力的に効率が良くない部分が避けられなかった。それがシビックに変わることで形状としては良くなるが、一方でボリューム感はアップすることになる。NSXのパフォーマンスを越えるというよりも、まずはNSXと同じ数値までにどこまで近づけるかが当面の課題となる。

 一方、キャビンが広くなることで、車内の構造物の配置にはこれまで以上に自由度が高くなると想像される。空力的に厳しくなる点を、車両バランスの適正配置やエンジン面などでどこまでパフォーマンスを補えるのかがシビック・タイプRーGTコンセプトの今後の開発のポイントになるのだろう。

 シビック・タイプRーGTコンセプトの実車デビューは2023年の初夏を予定しているという。早ければ6月か7月、その姿を見るのが待ち遠しいが、2024年から新規定となるGT500クラスには同じタイミングでニッサン(おそらく車両はニッサン Z GT500)、そしてトヨタGR(おそらく車両はGRスープラ GT500)も2024年型マシンをシェイクダウンするはずで、2023年シーズンはまだ始まってもいない段階だが、今年は2024年の動きも同時にチェックが必要な話題の多い1年になりそうだ。




こんな記事も読まれています

VWグループのMAN、新型電動&水素トラックを初公開へ…IAAトランスポーテーション2024
VWグループのMAN、新型電動&水素トラックを初公開へ…IAAトランスポーテーション2024
レスポンス
【MotoGP】ヨハン・ザルコ、ホンダでの目標を「トップ10からポイント獲得」へ下方修正
【MotoGP】ヨハン・ザルコ、ホンダでの目標を「トップ10からポイント獲得」へ下方修正
motorsport.com 日本版
なぜ免許証とマイナカード「24年度末」までに一体化? 紛失したら運転できない? 国民にメリットあるのか
なぜ免許証とマイナカード「24年度末」までに一体化? 紛失したら運転できない? 国民にメリットあるのか
くるまのニュース
走行中に突然の眠気!? 食後のバイク走行は「血糖値スパイク」に要注意
走行中に突然の眠気!? 食後のバイク走行は「血糖値スパイク」に要注意
バイクのニュース
自動速度制御装置が欧州で義務化へ、70以上の自動車ブランドがHEREの地図データで対応
自動速度制御装置が欧州で義務化へ、70以上の自動車ブランドがHEREの地図データで対応
レスポンス
空力開発ハンデは、ランキングではなく獲得ポイントに応じて設定すべき? メルセデスのラッセル「そうすれば、下位チームはもっと早く追いつく」
空力開発ハンデは、ランキングではなく獲得ポイントに応じて設定すべき? メルセデスのラッセル「そうすれば、下位チームはもっと早く追いつく」
motorsport.com 日本版
川崎重工、潜水艦修理巡り海自隊員を接待、下請け会社との架空取引の裏金を流用[新聞ウォッチ]
川崎重工、潜水艦修理巡り海自隊員を接待、下請け会社との架空取引の裏金を流用[新聞ウォッチ]
レスポンス
全長4m以下! 約170万円のトヨタ「小さいSUV」が人気沸騰!? 販売再開した「ライズ」一体どんな人が購入してる?
全長4m以下! 約170万円のトヨタ「小さいSUV」が人気沸騰!? 販売再開した「ライズ」一体どんな人が購入してる?
くるまのニュース
スズキの軽SUV「ハスラー」に“斬新クーペ仕様”あった! 悪路も走る「スポーツ軽自動車」に反響あり! 新ジャンル「ハスラークーペ」がカッコいい
スズキの軽SUV「ハスラー」に“斬新クーペ仕様”あった! 悪路も走る「スポーツ軽自動車」に反響あり! 新ジャンル「ハスラークーペ」がカッコいい
くるまのニュース
モトクロッサーKX譲りのスタイリングがカッコいい! カワサキが「KLX110R L」の新型モデルを発売
モトクロッサーKX譲りのスタイリングがカッコいい! カワサキが「KLX110R L」の新型モデルを発売
バイクのニュース
人生一度はカーレースをやってみたい……だったらマツダ車しかない! ハードルは低いのに本格的な「マツ耐」に潜入取材した
人生一度はカーレースをやってみたい……だったらマツダ車しかない! ハードルは低いのに本格的な「マツ耐」に潜入取材した
WEB CARTOP
第37回「用品大賞2024」、マルカサービスのホイールブランド「MTW」シリーズがグランプリ受賞
第37回「用品大賞2024」、マルカサービスのホイールブランド「MTW」シリーズがグランプリ受賞
日刊自動車新聞
最強のゴルフ「フォルクスワーゲン ゴルフ R」正式発表!333馬力のフェイスリフト 特別仕様車「ブラックエディション」も出る!
最強のゴルフ「フォルクスワーゲン ゴルフ R」正式発表!333馬力のフェイスリフト 特別仕様車「ブラックエディション」も出る!
AutoBild Japan
都心~川越直結「和光富士見バイパス」早く全通させて!埼玉県が国へ”直訴” 川越街道の「地獄渋滞」もうウンザリ!? 予算確保に”協力要望”
都心~川越直結「和光富士見バイパス」早く全通させて!埼玉県が国へ”直訴” 川越街道の「地獄渋滞」もうウンザリ!? 予算確保に”協力要望”
くるまのニュース
VW『パサート』新型発表…ステーションワゴン専用モデル、9月から受注
VW『パサート』新型発表…ステーションワゴン専用モデル、9月から受注
レスポンス
全長4.1mのコンパクトボディ フォルクスワーゲンのベストセラーSUV 新型「Tクロス」日本登場! どう変わった?
全長4.1mのコンパクトボディ フォルクスワーゲンのベストセラーSUV 新型「Tクロス」日本登場! どう変わった?
VAGUE
ランクル250もオプションで用意される丸型ヘッドライトが大人気! いまジワリ「丸目クルマ」がきてる!!
ランクル250もオプションで用意される丸型ヘッドライトが大人気! いまジワリ「丸目クルマ」がきてる!!
WEB CARTOP
トヨタから新型「ミニランクル」登場か!? 名前は「ランドクルーザーFJ」か? 250系に続く新モデルはレトロデザイン? いつ発売?
トヨタから新型「ミニランクル」登場か!? 名前は「ランドクルーザーFJ」か? 250系に続く新モデルはレトロデザイン? いつ発売?
くるまのニュース

みんなのコメント

8件
  • シビックタイプRしかスポーティーな
    イメージリーダーはないからでは?
    あとはアコードか
    RSの出たフィットか
    軽だけどワンメイクやってるN-ONEくらいが
    まだあるかなというレベルだし選択肢が
    なさ過ぎですよ
  • >現行のNSX-GTがミッドシップではなくFRのレーシングカーとしてファンに認知されていることも今回のシビック投入の後押しとなったことは想像に難くない。
    2014年以降のGT500の車両は、全車共通のカーボンモノコックと鋼管フレームにクラッシャブルエレメントを付けた車体に市販車風の外板を被せている。
    それだけ。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離(km)

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村