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ベントレーMkV コーニッシュ(2) 設立100周年へ向けた再現 残されていたオリジナル図面

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ベントレーMkV コーニッシュ(2) 設立100周年へ向けた再現 残されていたオリジナル図面

残されていたオリジナルの図面

ベントレー・コーニッシュのリクリエーションが現実味を帯びたのは、2000年代初頭。ベントレーMkVのシャシーが偶然発見され、エンジンとドライブトレインが復元されると、具体的なプロジェクトが進み始めた。

【画像】破壊されたプロトタイプ ベントレーMkV コーニッシュ 同年代の上級モデルと写真で比較 全125枚

ボディの再現で大きく貢献したのが、スタイリングを担当したジョルジュ・ポーラン氏の家族。彼が手掛けた資料をしっかり保管しており、フランスにオリジナルの図面も残されていたのだ。

これにより、正確なボディ製作が可能になった。パネルをハンマーで叩き出し、イングリッシュ・ホイールというマシンで曲面を成型する、伝統的な手法で。

仕事を任されたのは、グレートブリテン島南部、ハンプシャー州に拠点をおくコーチビルダー、アシュリー&ジェームス社。果たして、素晴らしい結果が導かれた。

完成までは順調ではなく、一時は資金が底をついてしまう。そこで支援を名乗り出たのが、ベントレー。現在もCEOを務める、エイドリアン・ホールマーク氏はコーニッシュの重要性を理解していた。

2019年に迎える、設立100周年記念式典へ間に合わせるという条件が出されたが、ベントレー・ヘリテージ・コレクションが車両を購入。ボディの細かなトリムや塗装、インテリアの再現に、ブランドが持つリソースが投じられた。

インテリアの写真は、最後まで発見されなかった。オリジナル・ボディを製作したパリのコーチビルダー、ヴァンヴァーレン社を研究し、ベントレーではインテリアデザインの責任者を務める、ダレン・デイ氏の知見が活きた。

全長の半分近くを占めるボンネット

ウインドウ部分がヘザー・グレーで縁取られた、インペリアル・マルーンのボディは強い心象を残す。斜めからが特に美しい。1930年代後半の雰囲気が香るスタイリングは、明確な流線型というわけではない。1950年代には、古びて見えたかもしれない。

フロントでは、カバーで覆われたヘッドライトと傾斜したフロントグリルのアウトライン、その両脇で輝くエアインテーク・スリットへ、目が惹きつけられる。アウトバーンでは、空気抵抗を抑える効果を実感できたに違いない。

ボンネットは非常に長く、全長の半分近くを占めている。そのボリューム感は、カーブを描き後方へ絞られる、フロントフェンダーが強調している。ドア下のランニングボードは省略され、ヴァンヴァーレン社らしくリアドアはリアヒンジで開閉する。

2分割されたフロントウインドウは狭い。小さなリアウインドウには、ドライバーで操作できるブラインドが備わる。

ガソリンタンクは16ガロン。左右のリアフェンダー上に、給油リッドが備わる。水滴状のテールライトが、バンパー横の低い位置へ配されている。

トランクリッドは、スプリング内臓のストラットで開閉し、自動でロックされる。上質な木製フロアの荷室はさほど広くなく、下にスペアタイヤが収まる。長期旅行の際は、荷物を鉄道で別に送る必要があったかもしれない。車載工具も、綺麗に再現された。

90年前の優れた動力性能を物語るメーター

運転席へ座ると、前方視界が切り取られたように見える。シートはコノリー・レザーで、ダッシュボードはウォールナット。クロームメッキの金具に、ウェスト・オブ・イングランド社製のクロス、マルーンのカーペットなど、いずれも上質な英国流だ。

イグニッションとライトのスイッチは、ロールス・ロイス・タイプ。大径なステアリングホイールの中央に、混合気と点火タイミングのレバーが付く。スミス社製のヒーターは、ダッシュボードの下部。バックミラーは小さく、後方視界は良くない。

スピードメーターは130マイル(209km/h)まで。タコメーターは5000rpmまで。90年近く昔のベントレーの、優れた動力性能を物語る。

ベントレーのヘリテージ・コレクションを管理するマイク・セイヤー氏は、すべての車両が実働状態であるべきだというルールを定めている。もちろん、コーニッシュも意欲的に走る。CEOのエイドリアンも、特に気に入っているクルマだとか。

実際に運転させてもらうと、その理由を理解できる。操縦系は軽く滑らか。大きなクルマを運転しているという感覚以外、不安感は生じない。

ステアリングホイールが、かなり手前に伸びる。スローなレシオで、腕を何度も動かす必要性が、全体の印象と一致しない。それでも滑らかに反応し、フロントタイヤの状況を正確に掴める。

シャシーは1939年式コーニッシュの現物

右側から伸びるシフトレバーも、至ってスムーズ。1速は、坂道発進にピッタリだ。アクセルペダルを軽く傾けるだけで、エネルギッシュに速度を増し、2速へシフトアップ。トルクが太く、発進すれば3速と4速だけで殆どの条件をまかなえる。

回転数を高めると、コーニッシュの驚くような機敏さが顕になる。比較的軽い車重を感じ取れる。現代の職人が再現した真新しいボディはきしまず、殆ど振動音を発しない。

エグゾーストノートはドライ。ドライバーの努力なしに、スピードを出せる。凹凸の目立つ路面でも流暢に進み、速度を保ったままカーブを抜けられる。ブレーキにはサーボが備わり、真っすぐ強力に制動力が生じる。戦前のモデルとして、唸るほど。

コーニッシュは、1950年代のベントレーが叶えていた、出色の洗練性を備える。Rタイプ・コンチネンタルが宿す、動力性能も与えられていた。ダービーの技術者は、失われた事実に心を痛めつつ、誇らしげに試作された物語を繋いできたのだ。

1台のみのコーニッシュは、実際、ドイツ人によって破壊されたのだろう。だが数奇なことに、ブランド100周年へ向けた再現を牽引したのは、ベントレーを傘下に収めるドイツの大手自動車メーカーだった。

驚くべきことに、リクリエーション・モデルの14-BV型シャシーは、オリジナルの1939年式コーニッシュに用いられていた現物だと、最近になって判明した。2019年に再生したコーニッシュへ、当時と同じナンバーを与えることまで叶ったのだ。

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