鈴鹿サーキットで行われている2024スーパーGT第3戦のGT500クラス公式予選。今季から登場しているホンダ シビック・タイプR-GT勢は、ARTA MUGEN CIVIC TYPE R-GT #16が2番グリッドを獲得したものの、Astemo CIVIC TYPE R-GTとModulo CIVIC TYPE R-GTの2台がQ2でスピンを喫するなど、全体的にはスッキリした内容にならない予選となった。
セッション後、各ドライバーに話を聞くと、改めてユーズドタイヤで攻める鈴鹿の難しさと、風向きなどの微妙なコンディション変化が影響していた。
予選Q2のユーズドで驚異的な速さを見せたENEOS福住仁嶺、MOTUL千代勝正。決勝は天候が鍵に/第3戦予選
◾️野尻智紀「久しぶりに心臓の音が聞こえました」
前回の富士では表彰台争いに加わる活躍を見せながらも、トラブルで無念の戦線離脱となったARTA MUGEN CIVIC TYPE R-GT #8。今回はサクセスウェイトが軽く、優勝候補の一角として注目を集めていた。
予選ではQ1を松下信治が担当し、1分45秒700で2番手タイムを記録しポールポジション獲得のチャンスも大きかったが、Q2の野尻智紀は1分46秒923で8番手タイムとなり、総合順位では4番手に終わった。
「どの状況でもポールがかかっている時はドキドキすると思いますけど、ニュータイヤでアタックする時の方が『これくらいグリップするよな』ということがある程度分かるので、逆にユーズドタイヤの方が緊張しました」と野尻。
今季から導入されている新方式の予選でユーズドタイヤを履くQ2でアタックをするのは、今回が初めての経験だった。
「負荷がかかる鈴鹿でQ1を走ったタイヤがどれくらいグリップしてくれるのかが分からなくて、たとえばQ1のノブ(松下信治)は調子良く1コーナーに飛び込めていましたけど『同じように僕が行って大丈夫なのだろうか?』『同じように行ってまったく違う振る舞いをしたら、コースアウトしてタイムが残らなくなってしまう』。その辺が読めなさすぎて……すごく緊張してひさびさに心臓の音が聞こえました。でも、この緊張はたぶん周りには伝わっていないのでしょうね(苦笑)」と語るほど、野尻のスーパーGTキャリアの中でもトップレベルに入るほどの緊張感だったようだ。
同じく、ユーズドタイヤでのアタックが今季初めてだったのがSTANLEY CIVIC TYPE R-GTの牧野任祐。Q1の山本尚貴が1分46秒229で6番手だったのに対し、Q2の牧野は1分47秒189で11番手タイムとなった。
「(ニュータイヤとユーズドタイヤで)違いがないことはないですけど、そこまで大幅に変わらないかなと思いました」と牧野。とはいえ、アタックに向かうまでの部分はニュータイヤのそれとは違いがあったようで「内圧の合わせ方とかウォームアップの仕方、あとは計測周も変わったところはありましたし、新品でアタックするのとは違う印象はありました」と語った。
タイムが思うように伸びなかったことについては自身のアタックも完璧ではなかったようで、「正直アタック自体も良くなかったですし、そもそも走り出しからうまく行っていなかった部分はあったので、全体的にうまく回せなかったかなという印象はあります」と悔しそうな表情を見せていた。
◾️「あの場所でリヤが出てしまうのは初めての経験」伊沢拓也
今回の予選Q2では17号車Astemoと64号車ModuloがASURA S字コーナー2つ目でスピンを喫する場面があった。2台ともタイムアタックに入ったところで、2つ目に切り返した瞬間にリヤのスライドが始まっていき、立て直すことができずスピンしていたが、実際に起きていた状況は若干異なるようだ。
「僕の場合は一瞬リヤが出て立て直そうとしている間に路面が汚れたところに行ってスピンしたという感じです。ラップタイム的にはどこまでいけたか分かりませんが、ある程度良い順位は狙えていたと思うし、朝から手応えもありました。せっかくクルマもタイヤも良いものを用意してもらったので、非常に申し訳ないです」と語るのは64号車Moduloの伊沢。
実はS字2つ目でリヤがスライドする症状は、Q1の大草りきがアタックした時から起きていたという。
「大草選手も同じことが起きていました。『ウォームアップが足りないのではないか』ということで1周ウォームアップを増やしたので、そこは問題なかったと思うのですけど……正直あのコーナーであそこまで後ろが出たことが今までなかったです」と、伊沢は腑に落ちていない様子だった。
同じ場所でスピンを喫した17号車Astemoの塚越もセッション後は落ち込んだ様子で、チームミーティングもいつになく長い時間をかけていたようだった。
「太田(格之進)選手が良いアタックしてくれたので、クルマの調子は良かったです。S字の2つ目で攻めすぎたとか、特別何かをしたということはなかったです。気がついたらスピンモーションに入っていました」と塚越
「ドライビングでも何かミスをしたところはなかったので……気持ちの整理としては少し難しいなと思いますが、いずれにしても自分のドライビングでミスをしてしまったので、すごく申し訳ない思いはあります。その分、明日追い上げられるようにしたいと思います」とコメントした。
スピンの状況が2台とも似ているため、どういった原因があるのか気になるところ。ちなみに8号車ARTAの野尻は「ちょっとリヤのグリップが抜けやすい瞬間があったので、そこでプッシュしてしまったら、たぶんそうなるのだろうなという予測はできるので、気持ちはすごく分かります」と説明。
「あそこは切り返す時に、少しだけスロットルオフするので、クルマが前傾姿勢になったところで、そういう動きをしかかったところはありました」と自身のQ2アタックでの状況を振り返る。
100号車STANLEYの牧野はS字の動きで特段感じることはなかったそうだが、Q1を担当したドライバーらの話も総合すると、S字2つ目で少しリヤの動きがナーバスになる瞬間があったようだ。
その原因としてひとつ考えられるのが風向きだ。午前の公式練習ではS字では向かい風だったのに対し、予選は真逆でS字区間が追い風になるコンディションだった。
これについては伊沢も「風向きが午前と比べて真逆になっているということは事前にインフォメーションをもらっていて(アタック時も)気にはしていました。ただ、この風向き(S字が追い風)は今年になってから走ったことがなかった」と話す。
今となってはハッキリした原因が掴めないものの、風向きがホンダ・シビック勢の予選結果に影響している可能性はありそうだ。
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