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【21世紀の英国スポーツ】ジェンセンS-V8とモーガン・エアロ8 V8のロードスター 後編

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【21世紀の英国スポーツ】ジェンセンS-V8とモーガン・エアロ8 V8のロードスター 後編

ソリッドでオールドスクールなスポーツカー

執筆:Simon Charlesworth(サイモン・チャールズワース)

【画像】 ジェンセンS-V8とモーガン・エアロ8 C-V8にエアロGT、プラスフォーも 全104枚

撮影:John Bradshaw(ジョン・ブラッドショー)

翻訳:Kenji Nakajima(中嶋健治)


アラン・ロブソンがオーナーの、ジェンセンS-V8。車内は広々としていて、レザーの風合いが良い。快適なドライビングポジションが取れ、ペダル周りにも余裕がある。インテリアを見渡すと、フォード由来の部品が各所に用いられているのがわかる。

大きなクラムシェル・ボンネットの内側には、フォードの4.6L V8エンジンが収まっている。最高出力は329ps/6000rpmで、最大トルクは44.1kg-m/4800rpmもあり、頼もしいユニットだ。

いかにもアメリカンなV8ノイズを奏でつつ、3000rpm辺りから威勢が高まる。4000rpmを超えるとサウンドとともに勢いが一気に増す。レスポンシブでマッスル。5速MTはとても滑らかに変速できるが、変速なしでも不足ない加減速を楽しめる。

速度を落とす必要が出てきても、効果的なディスクブレーキが控えている。ステアリングホイールやシートにも、余計な振動は一切伝わってこない。ジェンセンS-V8は、ソリッドだ。

唯一残念な気持ちにさせるのが、TVRのように走行中に振動するボンネットくらい。足元はかなり熱くなる。高速域ではエグゾーストノートが気分を高めるが、風切り音と圧力差が生む低音がうるさい。

しかし、オールドスクールなスポーツカーとして、多少の洗練不足には目をつぶるべきだろう。ジェンセンS-V8の魅力を見逃してしまう。

路面の起伏のいなし方は良好で、ボディロールも適度に抑制できている。感触豊かなステアリングホイールを回せば、フロントノーズは積極的に反応する。

クラシカルな車内にBMWの樹脂部品

カーブの続く区間を攻め込むと、リアタイヤ側の設計が理想には届いていないことを伺わせる。プッシュしすぎるとオーバーステアが顔を出す。でもアナログな挙動で、限界領域は掴みやすく扱いやすい。操ることが楽しい。

ワインレッドのエアロ8は、ヒュー・リーダーが大切にするモーガン。長年の夢を叶えた成果だ。6万4000kmほど走っているが、年中スポーツカーに乗ることを気には留めていないという。19歳で、カニ目のオースチン・ヒーレー・スプライトを所有したらしい。

小さなドアを開け、エアロ8の車内に身を置く。レザー張りのバケットシートに落ち着くと、グランドツアラーとして、どこかぎこちない。

シートポジションは低く、ドアの上端は高い位置に来る。リアミラーは、折りたたんだフードと空しか見えない。ペダルはフロアヒンジで、ステアリングホイールは、かなり手前に位置している。

ダッシュボードは、アールデコとモダンなデザインや素材のミックス。日本でいう青海波、エンジンターンの模様が切られたアルミパネルに白い盤面のメーターが並び、薄いダッシュボードはウッドで覆われる。

目を凝らさずとも、BMW由来と思しきプラスティック製部品がちらほら。全体的な雰囲気を乱している。とはいえ、モーガンの輝きも充分に眩しい。

ジェンセンの方がステアリングはシャープで、フロントノーズも機敏に反応する。高速域では、テールが少し落ち着きに欠ける。一方のモーガンは違う。

ニュートラルで信頼できるモーガンの魔法

ドライバーの要求に応じて、充分素早くフロントが反応し、表立って書けないような速度まで受け付けてくれる。加速もジェンセンより良い。モトリタのステアリングホイールを回しても、殆どボディロールは示さない。

リアタイヤは信頼感を抱かせ、挙動はニュートラル。この落ち着きでアンチロールバーが備わらないというのだから、モーガンの魔法だ。

軽くないV8エンジンを搭載するが、21世紀のモーガンらしく、ボディが振動したりシャシーが歪むような兆候も見せない。ただし、乗り心地は初期のエアロ8の弱点だった。

確かにジェンセンS-V8よりは硬い。シリーズを重ね、エアロ8はボディロールと引き換えに柔らかさを増した。+8と比較され、批判されることもなかった。流暢にしなやかに反応するシャシーは、価格なりの価値を感じさせる。

頼れるシャシーがあってこそ、BMW由来の輝かしいドライブトレインが活きる。クラッチはS-V8より重く、ブレーキとアクセルペダルのストロークは長い。シフトレバーの動きは、お手本通り。

当時のBMWのMTは、スプリングを挟んだような少し不快な手応えを感じることがあったが、モーガンの例では見られない。とてもクリーンに変速できる。4.4L V8エンジンの能力を引き出しやすくしている。

カタログスペックは、290ps/5500rpmと44.4kg-m/3750rpmと、S-V8よりトルクは少しだけ太いが、馬力は低い。それでも、回転域を通じて明確にたくましい。4000rpmを過ぎた辺りから美声を響かせ始める。

多くの人に愛されるべきだったS-V8

聴き応えのあるサウンドで、実際に郊外の道を飛ばすとモーガンの方が速く感じられる。エグゾーストノートの音量は控えめで、風切り音も穏やかだから、高速域での疲労感も低い。足元が熱くなることもない。

ジェンセンより洗練されている。新設計の風洞実験施設で練られた、初めてのモーガンなだけのことはある。

ほぼ同時期に誕生した、ジェンセンS-V8とモーガン・エアロ8。グランドツアラーを得意としたジェンセンによるスポーツカー的モデルと、スポーツカーを得意とするモーガンの、グランドツアラー的モデルという個性が興味深い。

どっち付かずの2台だったかもしれない。だが直系のブリティッシュ・スポーツカーとして、時代を飾ったモデルだったといえるだろう。

ジェンセンS-V8は、より長く、多くのドライバーに愛されるべき価値があった。エアロ8は優れたモデルとして2018年まで作られたが、S-V8の生産が打ち切られていなければ、お互いに高め合うことも可能だったはず。

ジェンセンがポルシェを追いかけ回す傍らで、モーガンは通りすがりの人の笑顔を集める。マルバーンで生み出されたデザインは魅力的だ。批判の声はゼロではないが、見慣れたスタイリングのアップデートに成功していると思う。

どちらも、個性溢れるボディの内側には、印象的なまでのスポーツカーが隠れている。長距離をともにしたいと思える、熟成の味わいもある。

モーガンとジェンセン 2台のスペック

モーガン・エアロ8 シリーズ1(2000~2004年/英国仕様)のスペック

英国価格:4万9950ポンド(2001年)/3万5000ポンド(525万円)以下(現在)
生産台数:221台(シリーズ1/GTNを含む)
全長:4120mm
全幅:1770mm
全高:1200mm
最高速度:257km/h
0-97km/h加速:4.8秒
燃費:13.0km/L
CO2排出量:−
車両重量:1145kg
パワートレイン:V型8気筒4398cc自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:290ps/5500rpm
最大トルク:44.4kg-m/3750rpm
ギアボックス:6速マニュアル

ジェンセンS-V8(2001~2006年/英国仕様)のスペック

英国価格:4万2650ポンド(新車時)/8万ポンド(1200万円)以下(現在)
生産台数:23台
全長:4163mm
全幅:1757mm
全高:1278mm
最高速度:249km/h
0-97km/h加速:4.8秒
燃費:8.5km/L
CO2排出量:−
車両重量:1350kg
パワートレイン:V型8気筒4601cc自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:329ps/6000rpm
最大トルク:44.1kg-m/4800rpm

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