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マクラーレン エルバ、初試乗! 究極のライトウェイトスーパースポーツの実力をサーキットで測る

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マクラーレン エルバ、初試乗! 究極のライトウェイトスーパースポーツの実力をサーキットで測る

McLaren Elva

マクラーレン エルバ

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境界のない刺激

マクラーレンの誇るアルティメットシリーズ──その最新作エルバはご覧の通りフロントスクリーンを持たない究極のスーパーライトウェイトスポーツカーである。その実力はどれほどか? サーキットで確かめた。

「究極のドライバーエンゲージメントを目指したロードスター」

P1、セナ、スピードテールに続く第4のアルティメットシリーズ、それがエルバだ。これまでにプラグインハイブリッドスーパーカー、レーシングカーを超える性能のスーパースポーツ、革新的な技術で超高速走行可能な3シーターGTなど、限られたリソースの中で多彩なバリエーションを展開してきたが、今回登場したのは究極のドライバーエンゲージメントを目指したロードスターである。

ドライバーエンゲージメントとは、マクラーレンのプレゼンテーションで必ず登場する枕詞で、つまりクルマとの一体感を指す。しかし今回は見てのとおりウインドシールドすら存在しない。クルマだけではなく、外界とも一体感が得られそうだ。

「数字を並べただけでも凄まじい性能が予想できる」

車名のエルバは1960年代のレースシーンで活躍したレーシングカーに由来する。ブルース・マクラーレンが設計したM1Aを量産したレーシングコンストラクターの名前がエルバである。ミッドシップスポーツカーという点で、たしかに往年のレーシングカーに共通する部分はあるが、しかし現代のエルバは歴史的マシンの単なるオマージュではない。

従来のマクラーレンラインナップで最軽量を誇るセナより50kgも軽い乾燥重量1148kgというスーパー“ライトウェイト”スポーツカーなのである。その軽量ボディに搭載される4.0リッターV8ツインターボエンジンには7速DCTが組み合わされる。排気や冷却系を改良したことで、最高出力はセナの800psを上回る815psとなった。最大トルクはセナと同値だがそれでも800Nm。数字を並べただけでも凄まじい性能が予想できる。

「継ぎ目のない美しさと、高い空力性能──まさに『形態は機能に従う』である」

ボディパネルはわずか3ピースで構成される。長大なカーボンパネルは生産技術の高さが求められるが、結果として継ぎ目のない美しさと、高い空力性能を持つボディが誕生した。もちろん美しさだけではなく、オープンコクピット形状から乗員保護も含めて、新設計カーボン製シェルは剛性を従来よりも向上させている。いかにもマクラーレンらしいのは単純に軽量のみ追求したのではなく、いや、むしろこちらの方が注目といえるエアロダイナミクス技術を備えている点だ。

今回新たに採用されたAAMS(アクティブ・エア・マネージメント・システム)は車速が40km/hを超えるとフロントフード中程からディフレクターがせりあがり、さらに空気の流れを明確にコントロールするためにフロントノーズからエアを吸入し、フロントフード後方のアウトレットから排気することで乗員を保護してくれるのだ。このディフレクターは手動操作可能で、今回の撮影でも併走撮影時はフラップを下げて行った。だが強風に煽られたドライバーが運転を誤らないようディフレクターを下げられるのは70km/hまで。

「最高速度は327km/h。この性能を発揮する場所はサーキットが相応しい」

ちなみにディフレクターを出している場合の最高速度は200km/hとされているが、エルバの最高速度は327km/h。200km/h以上ではフルフェイスヘルメットが必須となるだろう。ちなみに北米の法規対応のオプションで固定式ウインドシールドがあるが、装着した購入者はいないそうだ。このスタイリングこそ、エルバのエルバたる所以だから当然だろう。

今回の試乗はサーキットで行われた。試乗車両がプロトタイプということもあるが、この性能を発揮する場所はサーキットが相応しいという判断だろう。ピットにはすでに走行準備の整ったエルバが用意されていた。ドア内側のスイッチを押して、小さなディヘドラルドアを跳ね上げる。高く幅広いサイドシルをまたいで、バケットシートに腰を落とす。シートの前後調整は手動で、前進すると起き、後退すると寝るというゆりかご状に動く仕組みは理にかなっていて面白い。同じく手動のチルト&テレスコピックでステアリングを調整するとコラムに固定されたメーターも最適な位置に移動する。

「AAMSをオフにしてディフレクターを下げると、罰ゲームのような強風が襲う」

エルバを購入すると、もれなく付いてくる専用のミルスペックアイウェアを装着してピットアウト。今回の試乗ではトラックモードは禁止されているので、ハンドリングとパワートレインのモードはともにスポーツを選択した。ダイナミックモードの変更はアルトゥーラでも採用されたようにメーターナセル(資料ではビナクルと表記)のスイッチで行う。この方がインストゥルメントパネルに配置される従来型より視線移動が少なく、ステアリングからの距離も近いのでスポーツカーに相応しい。同様にインパネ中央の10インチ縦型ディスプレイは8インチとなってステアリング脇に移動した。小型化したが視線移動が少なく操作しやすい。

普段感じることのない走行風にさらされていることもあり、一気に気持ちが昂ぶってくる。そんなドライバーをよそにクルマ側は冷静に40km/hで前述のAAMSが作動し、ディフレクターがせりあがってきた。これが驚くほどの効果で、150km/hでもウインドシールドがあるかの如き快適性だ。今回は1名乗車だったので確認できなかったが、高速道路でも助手席との会話が可能だろう。つい現実を知ろうとAAMSをオフにしてディフレクターを下げると、罰ゲームのような強風が筆者を襲った。なお、ストレートでは完全にドームに包まれたようになるが、ディフレクターが上がっていても斜めから吹き込む風は防げない。ヘアピンなどのコーナーリング中はわずかに風を感じたことを付け加えよう。

「微細な操舵に反応する機敏さを持ちつつ、神経質な部分はほとんど感じられない」

併走撮影のためにカメラマンのクルマを追走すると、低速域ではむしろAAMSが利かず、前走車の跳ね上げる小石が飛んでくる。ある程度、車速が高まらないとエアバリアは構築されない。そこでピットインして素早くヘルメットを装着した。ヘルメットを被ったままペースを上げて走ると妙にしっくりくる。この軽快感、サウンド、シートは右に寄っているがまるでフォーミュラカーのような運転感覚だ。ステアリングから伝わるインフォメーションは豊富で、微細な操舵に反応する機敏さを持ちつつ、神経質な部分はほとんど感じない。1コーナーのコーナリング速度を上げてフロントタイヤの限界も試したが、やはり挙動はマイルドであった。マクラーレンがこだわるドライバーエンゲージメントは、きちんとコミットされている。

なお、今回の試乗はレーシングドライバーの運転する720Sの先導走行付きだった。やむを得まい。なにしろ価格は英国付加価値税込みで142万5000ポンド(約2億2000万円)。急にアクセルを踏む足が震えてきた。8250rpmまで回る4.0リッターV8ツインターボは低回転域こそ、ややくぐもった音を発するが、意を決してアクセルを踏み込み車速を上げるに従い、これまでのマクラーレンになかった官能的な音を奏で始めた。軽量はブレーキの小型化という相乗効果も生み出すが、マクラーレンらしい硬質なタッチのペダルを踏み込み、ハードブレーキングを試みても、制動力の立ち上がりといい安心感は高い。

「ライトウェイトボディに815psの最高出力。恐るべき速さを示すのは間違いない」

スーパーシリーズでも採用されるプロアクティブサスペンションは、軽量なエルバにあわせてリセッティングされており、サーキットであることを斟酌しても乗り心地は抜群だ。試乗車の装着タイヤは標準のPゼロだが、速度域を上げてその痛快な性能を存分に堪能したいなら、無償で選択可能なPゼロコルサを選ぶといいだろう。

当初399台限定と発表されたが、コロナ禍でワーキングの工場が3ヵ月閉鎖されたこともあって、さらに減って結局149台限定となった。希少性はますます高まった。希少車とはいえVDCのドリフト制御を活かして、最適なアングルでコーナーを駆け抜けたかったが、今回の試乗会では先導車の最高速が150km/h程度に制限されていたため実現できなかった。だが軽量が売りのマツダ・ロードスターに比肩する車重に815psというモンスター級の最高出力の組み合わせが恐るべき速さを示すことに疑いの余地はない。

REPORT/吉岡卓朗(Takuro YOSHIOKA)
PHOTO/小林邦寿(Kunihisa KOBAYASHI)

掲載誌/GENROQ 2021年 6月号

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