ノースショアを、ビートルカブリオレで満喫しよう!
岡崎宏司の「クルマ備忘録」連載 第213回
青学中等部の美人同級生は毎日、黒いアメリカ車で送迎されていた
ハワイはいつ行っても楽しい。若い頃はレンタカーであちこち走り回り、いろいろなビーチを楽しんだ。ピクニックスタイルでランチを用意して、一日中ビーチで過ごした。
でも、最近は同じホテルの同じ部屋(オーシャンフロントでワイキキビーチとダイヤモンドヘッドが見える角部屋)に泊まり、怠惰な時を過ごすパターンを繰り返している。
歳を重ねるとともに、ハワイの過ごし方、楽しみ方は変わった。 、、が、ハワイが大好きで、ハワイで過ごすのが楽しくて仕方がないことに変わりはない。
今回は、そんなハワイを、ビートル カブリオレで存分に走り回り、存分に楽しみ尽くす旅を妄想することにしよう。
ビートル カブリオレはタイプ2(レンタカーで借りられる)でもいいが、今回の妄想の旅には、空冷時代 / リアエンジン時代のもの、、つまりタイプ1を選びたい。
ワイキキ エリアとはまったく趣の違うハワイ、、そう、、古き佳き時代の表情を今も色濃く残すノースショアの旅には、空冷ビートルの朴訥な走り味とエンジン音が馴染むということだ。
60~70年代のシボレーのステーションワゴン辺りもいいなぁとは思うが、まぁ、高望みはやめて、ビートルで決めることにしよう。
ボディカラーは明るい青で幌は白。ピカピカな青ではなく、年輪を重ねて、艶もなく掠れたような青がいい。幌も同じだ。
そんなビートルに組み合わせるウエアは、明るいブルーのウォッシュウェル ジーンズシャツ、紺系のカーゴ ショートパンツ、白の軽いスニーカーといった辺りが馴染みそうだ。
さぁ、ワイキキを出発だ。H1、H2と繋いで北に向かう。走行車線を流れに乗ってのんびり走るのが心地いい。
H2の終点から803号線に乗り、第1の目的地ワイアルアを目指す。ワイアルアを目指すのはひまわり畑を見るため。
山裾の広大な平野に広がるひまわり畑は一見の価値がある。人の背より高い大輪のひまわりが、一面を埋め尽くす眺めは壮観だ。
ちなみに、ハワイでのひまわりの季節は、5月中旬から7月中旬、10月初旬から12月中旬頃とされている。
ワイアルアからノースショアの中心的な町、ハレイワまでは近い。すぐ着く。
中心的な町とはいっても、古びた家や店が無造作に連なるだけの小さな町で、「観光地」的な派手さなど一切ない。
逆に言えば、それゆえにホッとするし、居心地がいい。
居心地がいいといえば、ハレイワのお店はみな、なんとなく居心地がいい。気楽に入れるし、店員は明るい笑顔で迎えてくれる。
僕はサーフィンもやらないし、アロハシャツも着ない。でも、ハレイワのサーフショップは楽しいし、アロハシャツの試着をしてみたりもする。
ハレイワはアーティストの街とも言われるが、アートショップも楽しい。海、虹、パームツリー、イルカ、貝殻、、等の絵が多いが、クルマを主人公にした絵もある。
で、主人公のクルマだが、「VW タイプ2 T1」と「VW ビートル タイプ1」がよく目につく。そして、たまに50's~60's辺りのアメリカ車が目に入ってくる。ほしくなる!
町で見かけるピカピカの新しいクルマは、大方が観光客のレンタカー。土地のクルマは、年輪を重ね、潮風に吹かれ、強い陽射しにさらされたものがほとんどだ。
ハレイワでのランチで僕が好きなのは、アヒ(マグロ)のぶつ切りの刺身。無造作に四角く切ったマグロを天日干しの大粒な海塩で食べるのだが、これが美味しい。
醤油も出してくれるが、僕は断然粒塩がいい。とても円やかな味と、ガリッと噛んだ時の歯応え、そして海の、磯の優しい香りがなんともいえない。
で、レストランのスタッフに、「オススメの粒塩のブランド」と売っている店を聞いて買ってきたのだが、最高のお土産になった。
日本でも「ハワイ産天日干し粒塩」は買えるが、なぜか、味も香りもだいぶ違う。
アヒはサラッとした味わいの赤身が美味しい。日本では中トロ専門の僕だが、ハレイワでは赤身以外に食べたいとは思わない。
聞くと、アヒは日本のクロマグロとは違い、脂気の少ないメバチマグロかキハダマグロとのこと。なので赤身が美味しいのだろうか。
ハレイワといえば「マツモト シェーブアイス」(かき氷)も有名。大盛りでカラフルなシェーブアイスは、旅の思い出の1ページに加えておきたい。「インスタ映え」する写真も撮れるはずだ。
古き佳き時代の姿佇まいを多く残すハレイワには、ワイキキとはまったく違う表情のハワイがある。そんな表情の一つひとつにカメラを向け、シャッターを切るのはとても楽しい。
ハレイワからはカメハメハHWYで海沿いを走る。美しい海と空とビーチが延々と続く。ビートル カブリオレは素晴らしい開放感を味合わせてくれるし、巻き込む風の音と、空冷フラットフォーの独特なビートを伴った音が、心地よく身体と心を包み込んでくれる。
夏場のノースショアの波は穏やかだが、冬場は高く荒い波が打ち寄せる。
どちらの眺めも空気感も好きだが、どちらかを選べと言われたら、僕は冬場を選ぶ。夏場の海もビーチも美しいが、海水浴客も多く、その分特別感は少し落ちるからだ。
冬場のノースショアはサーファーの季節だが、人気のないビーチも多い。そんなビーチに座って海を見ているのが僕は好き。荒々しい波が放つ凄まじい情景は、ドラマティックであり、ポエティックでもある。
ハレイワからしばし北上。オアフ島最北端のカフクポイントに近いタートルベイには、ノースショアの自然を満喫しながら、ラグジュアリーな時を過ごせる「タートルベイ リゾート」がある。
まだ行ったことはないが、ぜひ行きたい。ホテルのホームページで写真を見ていると、さらに行きたくなる。部屋にいても、レストランにいても、スパにいても、ゴルフをしていても、、どこにいても美しい海が見える。
贅沢なホテルではなく、ノースショアらしいこぢんまりしたホテルを選ぶのもまたいい。
小さくて安価なホテルでも、美しい自然の懐に抱かれているのがほとんどだ。
すべてをノースショアの空気感で包み込まれた旅にしたいなら、後者を選ぶことになる。アパートメントホテルで1週間とか1カ月とかを過ごす、、考えるだけでワクワクする。
ノースショア巡りには、ワイキキからの日帰りバスツアーも多くある。、、でも、できれば、クルマをレンタルし、自分の心が描き出すマップに沿った時間を過ごしたい。
僕は2度、クルマでノースショアに行っている。1度はフォード フェスティバのサンルーフ車、1度はクライスラーのカブリオレで。
それで、どちらが楽しかったかというと、、答えは「フェスティバ」。大きくて贅沢なクライスラーより、コンパクトでさり気ないフェスティバの方が、ノースショア巡りの気分により馴染んだということなのだろう。
サンルーフでも、ノースショアの光と風と香りは存分に楽しめる。25~35マイルで走る時、僕はサンルーフだけでなく窓も開ける。その方が、全身でノースショアを味わっている気分になれるからだ。
でも、、ビートル カブリオレ タイプ1での旅が叶ったら、きっと、、いや絶対に、気分はリミット領域まで盛り上がるだろう。
旅の〆は、ノースショアのあれこれを思い浮かべながら、ワイキキのホテルで過ごす。オーシャンフロントのテラス付きの部屋で。
僕のオススメはモアナ サーフライダー。ダイヤモンドヘッド側オーシャンフロントの角部屋なら文句なしだ。
今回の妄想の旅は現実味がある。なので、検索ツールであれこれチェックしながら、旅の仮計画書でも作ってみてはどうだろう。それだけでもけっこう楽しめると思う。
● 岡崎宏司 / 自動車ジャーナリスト
1940年生まれ。本名は「ひろし」だが、ペンネームは「こうじ」と読む。青山学院大学を経て、日本大学芸術学部放送学科卒業。放送作家を志すも好きな自動車から離れられず自動車ジャーナリストに。メーカーの車両開発やデザイン等のアドバイザー、省庁の各種委員を歴任。自動車ジャーナリストの岡崎五朗氏は長男。
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