日産自動車が、乳児とのドライブで保護者が抱える課題の解決に取り組んでいる。同社は乳幼児向け用品を取り扱う赤ちゃん本舗(味志謙司社長、大阪市中央区)と共同で、運転中の保護者に代わり乳児をあやしたり、置き去り事故防止機能を備えたぬいぐるみ型ロボットを開発した。現時点では試作品だが、今後は商品化なども検討する。日産は保護者と乳児が安心かつ快適に過ごせる車両や関連機器の開発に力を入れることで、子どもが関わる車内事故をゼロに近付ける考えだ。
乳児とのドライブ「あやせない」悩み多々ロボットの名前は「インテリジェント・パペット イルヨ」。1月に赤ちゃん本舗と共同開発した。このきっかけは乳児と2人きりでのドライブで、「赤ちゃんが泣くとあやすことができない」と悩む保護者が多いことが分かったことだった。
子守ロボが「まだいるよ」とお知らせ 日産と赤ちゃん本舗が乳児置き去り事故防止ロボットを開発
生後15カ月未満の乳児は、後部座席にチャイルドシートを後ろ向きにして乗せなければいけない。安全上仕方のないことだが、保護者と乳児が互いの表情を見ることができないため、乳児が泣いた際にあやすことが難しい。
そこで両社は、チャイルドシートの横に設置するロボットを考案した。このロボットは乳児をあやす役割の「イルヨ」と、運転席のドリンクホルダーに置く音声認識機能を持つ「ベビーイルヨ」で構成する。運転席の保護者が、ベビーイルヨに「いないいないばあ」「こっちだよ」「いるよ」「お歌を歌うよ」の4つの言葉を発すると、イルヨが手を振ったり、たたいたりする。ボディーも乳児が認識しやすい赤色をメインカラーとし、色彩認識が未熟な乳児の視線も集めやすくする工夫を施した。
乳児が寝ているか、運転手が確認できる機能も備えている。イルヨに搭載した表情認識カメラで、乳児の表情を検知。寝ている場合は、運転席横のベビーイルヨがまぶたを閉じる。運転中も乳児の様子を分かるようにし、保護者の安心感を高めている。
「マダイルヨ」と置き去りを知らせる機能も置き去り事故を防止する機能も加えた。幼稚園の通園バスに取り残された園児が犠牲になった事故を受け、政府は送迎バスへの置き去り防止装置の搭載を義務化した。ただ、置き去り事故はバスだけではなく、乗用車でも起こりかねない。日産の担当者は「共働きの保護者が多く、仕事の電話をしながら車を離れてしまうことなどがある」と指摘する。
これを防ぐため、ロボットの表情認識カメラで置き去りになった乳児を検知。保護者がロボットから約3m離れると、スマートフォンに通知するようになっている。この通知は距離が3m以内になるまで、ひっきりなしに届く仕組みだ。「置き去りなどの事故が実際に起こり得るということを啓蒙(けいもう)していく」(担当者)との狙いを明かす。
ただ、乳児への効果は検証できているものの、実際に商品化する場合、「量産できるか」(同)といった課題が残っているという。まずは体験会などで親子の意見を収集しながら今後の商品や技術開発に生かす方針。「自動車メーカーとして、保護者と乳児のドライブの課題解決に取り組むべき」(同)としており、市販へのハードルを一つひとつクリアしていく考えだ。
(藤原 稔里)
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