セントルイスのワールド・ワイド・テクノロジー・レースウェイでNTTインディカー・シリーズ第15戦が行われ、チップ・ガナッシ・レーシングの佐藤琢磨が今季最後のレースを迎えた。
今年はインディ500を含むオーバル5戦のみの出場となった琢磨。このセントルイスでは過去にポールポジション(2020年)と優勝(2019)年も経験している相性の良いレーストラックだ。
ディクソンが巧みなレース戦術で2連勝。琢磨は今季ラストレースを飾れず/インディカー第15戦WWRT
「セントルイスに行く前にはシミュレーターに乗ってエンジニア達と準備もしてきて、今回はチーム全体で新しいセッティングも試してみようということにもなっていたので楽しみにしていたのです」と琢磨もこのレースを心待ちにしていたのだが……。
セントルイスの週末は猛暑が予想されていたのだが、プラクティスと予選を行う土曜日があいにくの雨となり、スケジュールが大幅に変更されてしまった。
本来なら1時間のプラクティスの後に予選があり、その後決勝に向けたプラクティスが1時間も設けられ、周到に準備ができる予定だった。しかも今回のレースはレッドタイヤが導入されることが決まっており、時間はいくらあっても足りないほどだった。
しかし、土曜日の朝からセントルイスをサンダーストームが襲い、結局この日に行われたのは1時間のプラクティスのみとなり、予選は日曜日の午前中に持ち越されたのだった。
どのチームも条件は同じとは言え、チームメイト同士でセッティングを振り分けながら模索することになる。その中で琢磨は土曜のプラクティスを3番手で終えた。前の1、2番手はチーム・ペンスキーのマシンで、琢磨はホンダ最速、チーム内でも最速だった。
それでも琢磨は100%の満足感は得られなかった。
「タイム的には良くても試したいメニューの半分も消化できたかどうか。今年はインディ500を除いてテキサスもアイオワも予選で満足に走れていなかったので、予選で納得する走りができるよう、このプラクティスで予選シムを2回やらせてもらいました」
「レッドのタイヤはロングランまで試せていないので、まだなんとも言い切れないですが、思ったよりも長持ちしそうな感じなので、レース中どこで使うかでしょうね」
好タイムを出しながらも、まだまだ模索が続きデータとの睨めっこ状態だった。
日曜は曇り空で気温が上がらず風が強いコンディションで予選が行われた。
ドライバーズランキングの下位からのアテンプトで11号車の琢磨は15番目。チップ・ガナッシのチームの中では最初のアタックとなった。
琢磨のアベレージスピードは時速181.427マイルで一時はトップとなったが、最終的には8番手に落ち着く。チームメイトのアレックス・パロウは5番手、スコット・ディクソンは7番手、マーカス・エリクソンは前日のクラッシュの影響で18番手に。
だがパロウ、ディクソン、琢磨はエンジン交換のペナルティで9グリッド降格となるためにパロウ14番手、ディクソン16番手、琢磨17番手という順位となった。
■感じたスポット参戦の難しさ
レースはポールポジション、ペンスキーのジョゼフ・ニューガーデンのリードで始まった。ニューガーデンにとってこのレースはタイトル争いに残れるか重要な一戦であり、しかも今季オーバル全勝という記録のかかったレースだった。
1周目に早速AJフォイトのベンジャミン・ペデルソンがクラッシュしイエローに。琢磨は巻き込まれずにポジションを3つ上げた。
10周目にグリーンでレースが再開すると、琢磨はペースが上がらず16番手となる。アイオワでも似たような状況に陥ったが、16番手に止まるのが精一杯で、本来は燃費の許す限りストレッチするはずだった作戦を変更し、予定より早く50周目に琢磨をピットに入れた。
しかし、ピットでフロントウイングをアジャストしても琢磨のペースは上がりそうになく、むしろピットアウト後にアウト側のマーブルを拾ってペースダウン。さらに順位を落とすことになってしまう。
ラップダウンとなり107周目には2度目のピット作業をするも、24、25番手の厳しいポジションに。
コース上にとどまるのが目一杯の状況だったが、120周目のターン2でウォールにヒット!
マシンはコース上に止まり、その場でリタイアを喫することになってしまった。止まったマシンからゆっくりと肩を落としながら琢磨が降りた。
「今回も厳しいレースになりました。スタートしてからマシンが思うように走ってくれなくて、ピットでマシンをアジャストしてみても、状況は大きく改善しませんでした。ラインを外れてマーブルに乗ったらどうすることもできない」
「今年はうまく運ばないレースが続いたので、今季最後のこのレースは良い結果を出して、11号車のクルーのみんなの気持ちに報いたかった」
「今年はインディ500の制覇を念頭にこのチップ・ガナッシとのプログラムにしたわけですが、スポット参戦にはスポットの難しさがありましたけど、このチームから多くのことも学びました。そして多くの皆さんのご協力で乗ることができたので、御礼を言いたいですね。この後についてはまったく白紙ですけど、今年の経験が生かせたら良いと思っています」
レースはニューガーデンが琢磨同様にターン2にヒットしてレースを終え、今季のタイトルとオーバル全勝という大記録を失い、琢磨のチームメイト、ディクソンが3ストップのみという燃費作戦で通算55勝目を挙げ、タイトル獲得に望みを繋いだ。
琢磨の今季ラストレースは、2023年の分水嶺となるような印象的なレースだった。
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みんなのコメント
今シーズンは何とかトップチームのチップ・ガナッシとオーバルのみとはいえ契約に漕ぎ着けたのに。
琢磨が言うように来期はまた白紙の状態でオフを迎える。
いよいよ恐れていた引退の二文字が近いのか。