こんにちは、ジェイミー・クラインです。今回もmotorsport.com日本版のコラムをお届けします。
さて、先日のインディカー・シリーズで、チップ・ガナッシ・レーシングのアレックス・パロウがタイトルを獲得したことはご存知かと思います。彼はインディカー挑戦2年目でビッグチームへの移籍を果たし、チームメイトで6度のタイトル獲得を誇るスコット・ディクソンらを退けて戴冠したのです。
■ホンダの米国拠点HPD、Fリージョナル・アメリカズの王者にSF挑戦の為の奨学金を提供へ
パロウが渡米前の2019年、日本のスーパーフォーミュラで戦っていたことは記憶に新しいと思います。彼はルーキーながらタイトル争いに加わり、ランキング3位でシーズンを終えました。ポールポジションからスタートした最終戦で不運なサスペンショントラブルに見舞われていなければ、パロウのルーキーチャンピオンも十分にあり得たと言えます。
残念ながら2020年以降はコロナ禍に見舞われたことで、パロウの後を追って日本に来ようとしていた欧米のドライバー達は、別の道に目を向けなければいけませんでした。しかしながら、ホンダのおかげでその状況に変化が起こるかもしれません。
今年1月、ホンダのモータースポーツ活動における米国拠点、ホンダ・パフォーマンス・ディベロップメント(HPD)が、2021年のフォーミュラ・リージョナル・アメリカズ選手権(FRアメリカズ)のチャンピオンに、スーパーフォーミュラでレースをする為の60万ドル(約6812万円)相当の資金提供を行なうスカラシップ制度を設立すると発表しました。これは昨年のインディカーでのパロウの活躍に触発されたもので、HPDはいわゆる『Road to Indy』の育成カテゴリー(インディ・ライツ、インディ・プロ2000、U.S.F2000)以外からも優秀な人材を確保しようとしているのです。
2021年のFRアメリカズは11月にサーキット・オブ・ジ・アメリカズで行なわれる最終大会を残しており、チャンピオンはまだ確定していません。しかし、ポイントリーダーのケフィン・シンプソンはランキング2番手に65点の大差をつけており、タイトル獲得が濃厚な状況となっています。彼はカリブ海に浮かぶ島国バルバドス出身で、同じくカリブ海に位置するケイマン諸島のライセンスでレースに出場しています。彼は7歳の頃からアメリカやヨーロッパのカート選手権で活躍し、昨年4輪レースに転向したばかり。最終的にはインディカーを目標としているようです。
シンプソンは昨年、US F4選手権で4輪レースのキャリアをスタートさせ、シーズン途中でFRアメリカズに戦いの場を移しました。シーズン途中で参戦カテゴリーを変更したこともあり、この年の彼の成績で特筆すべきものはありませんが、今季はFRアメリカズで開幕6戦中5勝を挙げるスタートダッシュを見せると、そのまま選手権をリードし続けています。
さらに彼は今季、『Road to Indy』に属するカテゴリーのひとつ、インディ・プロ2000にも参戦しました。これはインディカー・シリーズ直下のシリーズであるインディ・ライツのさらにひとつ下にあたるカテゴリーです。ここで彼は3位表彰台を3回獲得し、2戦を欠場したもののランキング8位でシーズンを終えました。
とあるインディカー関係者がmotorsport.comに語ったところによると、シンプソンがこのままFRアメリカズのチャンピオンとなってスカラシップを勝ち取り、日本に入国するためのビザを取得できたとすれば、彼はスーパーフォーミュラとインディ・ライツに並行して参戦することになるそうです。
もちろん、FRアメリカズやインディ・プロ2000の経験しかないシンプソンにとって、スーパーフォーミュラは大幅なステップアップとなりますし、例え彼が60万ドルの資金援助を受けたとしても、ホンダ陣営のトップチームのシートを勝ち取ることは難しいはずです。それに加えて初体験のサーキットや言語の壁が立ちはだかる……彼にとっては大変なシーズンになるでしょう。
スーパーフォーミュラに最近やってきた経験に乏しい外国人ドライバーというと、2019年にREAL RACINGで1戦だけ走ったトリスタン・シャルパンティエが思い起こされます。ただシンプソンはシャルパンティエよりは多くの経験と実績を積んでいます。シャルパンティエはスーパーフォーミュラ参戦前、シングルシーターの選手権で44戦走り、1勝・表彰台8回という実績でしたが、シンプソンは今季終了時点で55戦走ることになりますし、既に5勝・表彰台16回を記録しています。
現実的に考えれば、シンプソンがスーパーフォーミュラにやってきて1年目からパロウのような活躍をすることはまず難しいでしょう。もし資金的に余裕があるのであれば、今年のジュリアーノ・アレジのようにスーパーフォーミュラ・ライツにも並行して参戦し、サーキットの習熟を深めたり日本のスタイルに慣れていくのがオススメでしょう。実際、多くの外国人ドライバーが日本流の働き方にカルチャーショックを受けると言いますからね。
ただ、上位に食い込めるかどうかは別として、日本のファンの皆さんもシンプソンがやって来た場合はぜひ彼を応援してもらいたいです。というのも、今後HPDがスカラシップ制度を継続するかどうかは彼の成功にもかかっているからです。彼が活躍すれば、海外のドライバーにとっての新たな道が切り開かれ、日本のレースシーンもより一層盛り上がりを見せることになるでしょう。
ところで、最後に個人的なことになりますが、僕はこの度、日本語の勉強のために2年間通っていた渋谷外語学院を卒業しました! こういった学校は基本的に2年までしか通えないのですが、本音を言えばもっと通い続けたかったところです。とはいえ、12月のJLPT(日本語能力試験)“N2”(最高ランクはN1)受験に向け、新しい言葉を学習したり、合格のために必要な漢字1000字を覚えたりしています。
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みんなのコメント
資金に余裕があってSFとSFLダブルエントリーしたんじゃなく、同チームのSFドライバーの中島一貴選手のルマン参戦でシートが空いてSF参戦のチャンスに恵まれたのです。結果は優勝という素晴らしいものでした。アレジ選手はお父さんの名前に胡坐をかくことなく日頃からすごく努力をしています。記者さん、もっと勉強して記事を書いてください。