昨年F1にデビューした角田裕毅(アルファタウリ)にとって、2年目の今年は飛躍が期待されたシーズンだった。しかし、夏休み前までの入賞回数は3回(昨年は5回)、獲得ポイントも11点(昨年は18点)と昨シーズンを下回ったまま、前半戦を折り返すこととなった。昨年は夏休み前までに11戦しかレースがなく、今年はすでに13戦を消化していることを考えると、数字以上に成績が伸び悩んでいるという印象だ。
ただし、角田自身のドライバーとしてのパフォーマンスが昨年よりも落ちているわけではないことは、チームメイトの成績を見てもわかる。
【角田裕毅を海外F1ライターが斬る:第12/13戦】ガスリーに予選で勝っているのは速さの証明。いずれ結果がついてくる
ピエール・ガスリーの夏休み前までの入賞回数は角田と同じ3回(昨年は8回)で、獲得ポイントの16点は昨年の50点を大きく下回っている。夏休み前時点でのドライバーズ選手権もガスリーが昨年の8位から今年は13位と5つも落としているのに対して、角田は昨年は13位で今年は16位と、むしろ踏みとどまっている印象が強い。
そのことは予選結果にも現れている。昨年、角田は最終戦アブダビGP以外のすべての予選でガスリーに勝つことができず完敗だったが、今年は5勝8敗と拮抗した戦いを演じている。つまり、角田は2年目に入り、しっかりと成長している。それを象徴していたグランプリが、第6戦スペインGPだった。
舞台となるカタロニア・サーキットはアルファタウリのAT03が苦手とする高速コーナーが存在しているため、不利なグランプリだと思われた。実際、アルファタウリはふたりそろってQ2で敗退していた。
しかし、13番手からスタートした角田は、攻め続けた。しかも、今年のスペインGPは、レーススタート時の気温が36度と高温で、肉体的にも厳しかった。それでも角田は過酷な条件のなかで、ダウンフォースが不足するマシンを高速コーナーでねじ伏せ、何度かオーバーテイクを披露し、10位でフィニッシュした。
レース後、ガレージ裏で左肩を労わりながらも激痛に顔を歪めながらレーシングスーツのファスナーを下ろす角田の表情は、いまでも忘れることができない。それは角田がこの1年間で逞しくなったことを何よりも証明していたからだ。
それでは、なぜポイントが伸び悩んでいるのか。それはアルファタウリのマシンの開発にあると言っていいだろう。予算制限があるなか、今年は多くのチームが工夫をしながらアップデートしている。アルファタウリは第4戦エミリア・ロマーニャGPでフロアを新しくした後、第11戦オーストリアGPまでアップデートしなかった。
ところが、第12戦フランスGPで満を持して投入したアップデートが想定していたパフォーマンスを発揮しない。特に夏休み前、最後の一戦となったハンガリーGPでは角田は原因不明のグリップ不足に悩まされ、状況はアップデート以前よりも後退してしまった。
したがって、後半戦の角田はアルファタウリがこのグリップ不足の原因を究明し、いかにアップデートしたマシンを機能させられるかにかかっている。2年目の角田の評価を下すのは、それからでも遅くない。
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