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「アイオニック5」は、ヒョンデ(現代)の切り札になるのか? 日本で触れて分かったこと

掲載 更新 22
「アイオニック5」は、ヒョンデ(現代)の切り札になるのか? 日本で触れて分かったこと

再参入の本命が、ZEVなワケ

執筆:Hajime Aida(会田肇)

【画像】アイオニック5とネッソ 細部まで見る【ヒョンデ再参入】 全48枚

“ゼロエミッション(ZEV)”を掲げて12年ぶりに日本市場へ再参入する韓国の現代(ヒョンデ)自動車。

投入するその第一弾は、BEV(バッテリー電気自動車)『アイオニック5』と、FCV(燃料電池車)『ネッソ』の2車種で、その主力となるのがアイオニック5だ。

予約はすべて自社サイト内でのオンラインでのみ扱われ、スタートは5月、デリバリーは7月を予定している。ここでは主力モデルのアイオニック5の実力についてレポートしたい。

韓国車は日本でこそ総じて評価が低めだが、グローバルでは想像以上に評価が高い。

とくにKIAを傘下に持つ現代自動車グループは世界5位の生産台数を誇り、アメリカではホンダを上回る勢いだ。

そうした中でヒョンデが実績を思うように伸ばせないでいるのがアジア地区。中でも日本は12年前に乗用車市場から撤退し、それ以降、再進出の機会を窺ってきた。

ただ、日本車と同じ土俵で乗り込んでも12年前の轍を踏むことにもなる。

そこで今後の伸びしろがあって、日本車が手薄なZEVに絞り込むことで再進出を狙うことにした。これは相次いでZEVを投入している欧州の輸入車勢と戦略としては似ている。

最大の違いは販売やメンテナンスの手法で、ヒョンデはディーラー網を持たず、メンテナンスも協力工場と提携するのみ。これで本当に日本のユーザーから信頼が得られるのか。ここが今回最大のチャレンジと言えるだろう。

実車の注目点 内外装をチェック

そうした中で投入されたアイオニック5を試乗したわけだが、その完成度の高さには正直驚かないではいられなかった。

なにせ、その開発のほとんどは欧州の開発部門が担当したそうで、デザインも欧州だ。

逆Z型のプレスラインを持ったサイドビューは一度見たら忘れられない独創性を伝え、前後のLEDランプのデザインも「パラメトリックピクセル」と呼ばれるデジタルピクセルに“アナログな感性”を加えたユニークなもの。

とくにリアエンドは方眼をあしらった個性豊かさで、後続車からの注目度も相当に高いはずだ。

インテリアも質の高さで評価が高い欧州勢と比較しても遜色ない。

運転席に座れば明るく開放感があってクルマの四隅もしっかりと把握できる。

ダッシュボードは水平基調のシンプルなデザイン。そこに大型で見やすい12.3インチのナビゲーション+12.3インチのフル液晶デジタルメーターが並んで収まる。

物理スイッチは必要最低限に抑える一方で、素材からして高品質で触れた感触がとても居心地がいい。

オットマンが運転席に?

たっぷりとしたフロントシートは電動式であるのは言うまでもなく、よく見るとリアシートを含め、すべてのシートにオットマンが装備されている。

運転席にもオットマン?と思ったが、実はここにはランバーサポートも備えており、アイオニック5ではこれを「リラクゼーションコンフォートシート」と呼んでいる。

つまり、充電時の待ち時間をくつろいで過ごせるよう配慮した装備なんだそうだ。

オーディオに高音質なBOSE製を奢ったのもそうした理由からだという。

EVであることを本気で考えた造り込みをしていることがここからも窺える。

意外 身のこなしは欧州テイスト

アイオニック5のラインナップには2タイプのバッテリーが用意された。

一つは下位グレードに装備される58kWhで、もう一つは上位グレードや4WDモデルに組み合わされる72.6kWhのものだ。

今回は72.6kWhのバッテリーを搭載した4WDを、路面が整備された限定エリア内で試乗することができた。

アクセルを踏み込むと最高出力225kW/最大トルク605Nmのビッグトルクが強烈な加速を生み出す。トラクションの制御の巧さとも相まって気付けばあっという間に高速領域に達していた。その俊足ぶりは感動ものだ。

4WDとはいえ、アイオニック5はノート4WDなどと同様に後輪を優先する機構を採用する。

それ故、バッテリーを収めたことによる低重心設計とも相まって、後輪で押し上げながらコーナリングをスムーズかつ安定して曲がっていく。

この操舵感はまさに欧州車そのもの。実に良く制御できていると思った。

気になった点、関心した点

そして何より高速領域でのノイズレベルが低い。

その意味では、限定エリアでの走行に限れば実に快適な走行ができたと言っていいだろう。

気になったのは、限定エリアからの移動時に、公道に近い路面を走るとサスペンションがかなりタイトだったことだ。

路面からの突き上げも大きめで、決して心地良いとは言えなかったのだ。

これでいいのか? そんな不安をヒョンデ・モビリティ・ジャパンにぶつけてみると、この時の試乗車はサスペンションがイギリス仕様のままで、日本仕様ではもっとしなやかな味付けになるとの回答だった。

また、アイオニック5を試乗して実感したのが、日本市場での展開を本気で考えた仕様となっていたことだ。

たとえば輸入車はほとんどウインカーレバーを左側とする。これはISOで定められた基準に従っていることでもあるが、とはいえ日本ではウインカーレバーは右側であることが基本だ。

ヒョンデは今回投入した2車ともこの右側レバーに対応した。

ライバル多きクラス 展望は?

さらにアイオニック5に限れば、カーナビもゼンリン製地図を採用して日本仕様にローカライズし、さらにドライブレコーダー機能も装備される。

このあたりからもアイオニック5へのヒョンデの力の入れ具合が伝わってくる。

ヒョンデ・モビリティ・ジャパンによればターゲットとしているのは「少し余裕のある子育て世代」という。

日本人の年収が下がる一方の状況下で、はたしてそれに合致する世代がどれだけいるかということもあるが、一方ではヒョンデが過去に撤退したことを知らない世代を狙っているのではないかとの見方もできる。

ただ、クルマとしての出来は素晴らしく良い。

アイオニック5の直接のライバルは、トヨタの「bZ4X」やスバルの「ソルテラ」、日産の「アリア」などが想定されるだろう。

販売体制を考えればテスラの「モデル3」の方がより立ち位置は近いのかも知れない。

そうした中でも、バッテリーへの充電というネガティブな要素を無視すれば、選びたくなるクルマであることは確かだ。ぜひ試乗して体験してみることをオススメしたい。

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