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【予期せぬ成功?】日産スカイラインにみる 「インフィニティ」ブランド日本上陸の可能性

掲載 更新 23
【予期せぬ成功?】日産スカイラインにみる 「インフィニティ」ブランド日本上陸の可能性

ファンがいるのに市場導入に未だ至らず

text:Kenji Momota(桃田健史)

【画像】見ると欲しくなる? 無いものねだり? インフィニティ現行モデル【全ラインナップ】 全162枚

日産がグローバルに展開するブランド「インフィニティ」

トヨタのレクサス、ホンダのアキュラと並び、日系メーカーのプレミアムブランドとして知られている。

日本上陸については、正式導入は2005年からのレクサスのみ。アキュラについて、ホンダは2005年末に2008年秋導入を発表するも、2008年時点で2010年頃導入を撤回した。

一方、インフィニティについて、日産はこれまで正式なかたちで日本市場への導入をコメントしたことはない。

ただ、筆者(桃田健史)はこれまでに、日産本社やアメリカ法人の幹部らと様々な状況で取材や意見交換する中で「検討中」、または「検討したが、当面は難しいとの判断」といった声を聞いてきた。

インフィニティが日本上陸に至らない、「あと一歩」があるようだ。

日本では90年代から、左ハンドルのインフィニティをアメリカから逆輸入したり、日本で購入した日産車にアメリカから取り寄せたインフィニティのエンブレムをつけたりと、インフィニティ・ファンが相当いる印象があった。

だが、90年代末の日産ディーラー網の統廃合や、その後のレッド・ブルーステージなど、国内販売戦略が何度も変わる中で、インフィニティ販売網を新設することは日産にとって大きなリスクだったと考えられる。

そうした中、驚きのモデルが日本上陸を果たす。

インフィニティ「スカイライン」?

「まさか、このまま、スカイラインとして日本で売るわけにはいかないでしょ」

アメリカで発売されるインフィニティ「Q50」を前に、日産の幹部に聞くと、その答えはイエスでもノーでもなかった。

場所は、ロサンゼルス郊外にあるビーチサイドのホテル。時期は、いま(2020年)から7年前、2013年9月だ。

イベント名称は、「日産360(サンロクマル)」

日産が各国のジャーナリストを招いて、世界各地で展開する事業全体を、実車の走行体験を交えて行う大型のイベントだ。関係者によると、開催にかかった予算は数億円。

試乗体験では、3.8L V6ツインターボ搭載で四駆の「ジュークR」や、EVリーフのレーシングカーなど、通常の報道陣向け試乗会にはない車両が登場した。

プレゼンでは、インドなど新興国でのダットサン事業の進捗などが興味深かった。

そうした中で、日本のジャーナリストたちの関心が高かったのが、インフィニティ「Q50」だ。

食事の席で、日産本社幹部は「もしこれをスカイラインとして日本に導入したら、ディーラーやユーザーはどう思うか?」と聞かれたのだ。

結果的に、同車は「スカイライン」として日本発売された。しかも、インフィニティブランドのキャラクターデザインはそのままという、秘策を打った。

これはまるで「以前との逆」の手法だ。

「スカイラインは終わった」不評から大好評へ

「スカイラインは、もう終わった」

2001年に登場した第11世代(V35)に、日本の自動車メディアは極めて厳しいコメントを連発した。

スカイラインは80年代末から、R32、R33、R34へと順調な進化を見せていた。ベストカーやCARトップなど、日本の自動車雑誌は毎号のように、GT-Rを軸足として次期スカイラインのスクープ記事を掲載していた。

ところが、スカイラインはGT-Rと分離されたモデルとして、1999年東京モーターショーに出展されたコンセプトモデル「XVL」をベースに量産化された。

日本で不評のV35だったが、アメリカにインフィニティG35として渡ると事態は大きく変わった。

「BMWのような華麗な走り」といった切り口で、米自動車メディアが絶賛。G35はアメリカで大ブレイクした。

当時、筆者は北米日産本部からG35広報車を借り、ロサンゼルス周辺で他社モデルとの比較試乗などを頻繁におこなった。

また、インフィニティ・ディーラー経営者や、G35ユーザーのインタビューも定常的にしていた。

その中では「Z(ジィ―)と同様に、レースで鍛えられた日産FR(フロントエンジン・リア駆動)のヘリテージ(歴史)を感じる」といったポジティブな意見が多数を占めた。

G35の登場によって、日産のインフィニティ戦略が大きく前進。いま振り返ると、G35はインフィニティの分岐点だった。

インフィニティ、日本上陸の可能性は?

G35を契機に、インフィニティの躍進が始まる。

なかでも注目されたのが、2003年登場のFXだ。プラットフォームやエンジンをG35(V35スカイライン)と共有するSUVで、生産は日産栃木工場だ。

アメリカでは90年代に始まったSUVブームが2000年代に入り、欧州ブランドが相次いで参入したことでSUVのプレミアム化が加速。その波にFXがしっかり乗った。日本でも逆輸入の左ハンドルFXが都内で増えていった。

2007年にはFXより少し小さい、EXが登場。これを、スカイライン・クロスオーバーとして日本で発売。

だが、G35→FX→EXというインフィニティとして進化を知らない日本のユーザーにとって、スカイライン・クロスオーバーといきなり言われてもピンとこない。

2013年には「モデルラインナップ拡充のため、商標対応を含めて数字表示に切り替える」(当時の日産幹部)として、インフィニティはセダンとクーペがQ、SUVがQXに名称変更した。

2019年登場のスカイラインでは、インフィニティのキャラクターデザインが消え、日産ロゴがついた。

こうして、インフィニティの歴史を振り返ると、日本での日産ブランドとの整合性を持たせることの難しさを痛感する。

つまり現状で、インフィニティ単独ブランドとしての日本展開は、極めてハードルが高いと言わざるを得ない。

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