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実力は折り紙付きだが未だ勝利なし……ランド・ノリスのマクラーレン残留は正しい決断なのか?

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実力は折り紙付きだが未だ勝利なし……ランド・ノリスのマクラーレン残留は正しい決断なのか?

 ランド・ノリスは先日、マクラーレンとの契約延長に合意。2019年にF1デビューを果たして以来、一貫してマクラーレンに所属するノリスは度々その能力を証明してきたものの、未だ勝利にはありつけていない。しかしそれでも、チームに残ると決めたのだ。この決断は正しいものなのか? それについて考察していく。

 既に2025年までの契約をマクラーレンと結んでいたノリスが、新たに結んだ複数年契約の具体的な内容は明らかにされていない。それは契約に解除条項が含まれていて、実際の契約終了年が確定していないからなのか。それとも、実は2025年までの契約に単に2年上乗せするだけであり、契約期間がそれほど長くないことを大っぴらにしたくないからなのか……。

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 後者が真実だとしたら、ノリスはマクラーレンに残留することが現時点でベストな選択肢だと考えている、ということになる。今後数年の内にマクラーレンでタイトルを獲得することは難しいだろうとも語っているノリスだが、少なくとも将来が最も楽観視できる選択肢がマクラーレンだと考えたのだろう。

 まだ24歳と若く、実力も折り紙付きなノリスだけに、年月を重ねればまたレッドブル移籍の噂が再燃してもおかしくない。ただ少なくとも、従来の契約が切れる予定だった2025年末にレッドブルに移籍するという選択肢は、100%魅力的な話だったかと言われると難しいところだ。

 もしノリスが契約を延長せずに、2025年シーズンを終えてフリーエージェントになっていたら、レギュレーションが大幅に変更される2026年シーズンに他チームへと移籍するということになる。だが2026年からレッドブルは、フォードと組んで自社製のパワーユニットで参戦するという挑戦の年を迎える。レッドブルがそれでも今のように手がつけられないほどの強さを見せているという保証はないのだ。

 では、レッドブル以外に移籍する可能性はどうだったのか? メルセデスに関して言えば、ノリスがルイス・ハミルトンの後継者候補だと言われていたこともある。現状ハミルトンの契約は、2025年まで。ただ今のノリスにとって、メルセデスの芝生が青く見えるかと言われると疑問が残る。

 2014年から2021年までコンストラクターズ選手権を8連覇したメルセデスは、2022年に現行のグラウンドエフェクトカー規則が導入されると途端に戦闘力を落とし、ここ2シーズンで1勝しか挙げられていない。そのため今の彼らは、この2年間の苦戦が一時的なものであったことを証明しないといけない段階にあるのだ。

 フェラーリに関しても、ノリスに1日先んじてシャルル・ルクレールとの契約延長を発表したばかり。彼の場合もノリス同様、“複数年契約”の具体的な内容については言及していない。そんな中にノリスが加入したとして、彼中心のチームづくりがされるかと言われれば疑問だ。

 さらにフェラーリはレーシングディレクターのローレン・メキーズがビザ・キャッシュアップRB(旧アルファタウリ)のチーム代表になるため離脱したり、車両コンセプト責任者のデビッド・サンチェスがマクラーレンに引き抜かれたりと、人材流出が激しい。後任を獲得するとしても、“ガーデニング休暇”を挟む必要があることから、その立て直しには時間がかかることが予想される。

 もうひとつ移籍先の候補として挙がるのが、上昇志向の強いアストンマーティン。彼らは昨年、もし将来的にランス・ストロールがチームを離れることになった場合、ノリスやシャルル・ルクレールが加入する可能性があるかどうかについて、水面下で模索したと言われている。

 またアストンマーティンの現状は、メルセデスやフェラーリよりもマクラーレンと共通する部分がある。インフラ設備に多額の投資を行ない、レッドブルをはじめとする他チームから技術部門の才能ある人物を引き抜いてきた点がまさにそうだ。しかしアストンのプロジェクトにマクラーレンを上回るほどの説得力はないと言える。

 やはりマクラーレンの2023年シーズンにおける躍進は驚異的であった。チーム代表のアンドレア・ステラは開幕当初、チームがオフシーズンに開発目標を達成できず、苦しい時期が待ち受けているであろうことを認めた。これは清々しいほどに正直なコメントだった。しかしステラは技術チームの刷新に取り組み、勝利のメンタリティを浸透させていったのだ。

 その結果、序盤は下位を走っていたマクラーレンが、最終的には王者レッドブルを最も脅かす存在へと成長したのだ。これは序盤戦で好調だったアストンマーティンがシーズン中のマシン開発で迷走し、低迷していったのとは対照的であった。マクラーレンの一連のアップデートは旧型の風洞で行なわれたもので、新戦力も加入する前のものだったが、ここでつまずいていたら、ノリスの契約延長はなかったかもしれない。

 ノリスは次のように語る。

「もちろん、僕は本当にチャンピオンになりたい。ここ数年、厳しい時期があったのも確かだ。彼らと一緒に仕事ができることを楽しんできたけど、時折『ここは目標を達成できる場所なのか?』『やるべきことをやって改善できているのか?』『自分に最高のチャンスを与えられているだろうか』と気になる時がある」

「でも、僕たちがどれほど状況を好転させてきたか、アンドレアが昨年どれほどの逆転劇を起こしてくれたのかを考えればね……」

 ノリスの掲げる目標は、マクラーレンが今持つツールで実現可能だと言える。これまでトヨタの施設のものを使っていた風洞は、マクラーレン・テクノロジー・センターに自前の風洞を建設。さらにはサンチェスが1月1日から正式に職務を開始した。そして長年レッドブルのチーフ・エンジニアリング・オフィサーを務めてきたロブ・マーシャルも、エンジニアリング&デザイン部門のテクニカルディレクターとしてチームに加わった。マシンの開発には一定の期間を要するため、これらのテコ入れが効力を発揮し始めるのは約半年後になるだろうが、シーズン中に行なわれるアップデートに向けての準備は整いつつある。

 このように、マクラーレンにはまだ伸びしろが残されている。そのため、ノリスがマクラーレンの将来を楽観視していることにも頷ける。彼はこう語る。

「マクラーレンが僕の未来そのものだと信じたいんだ。僕たちは昨年に躍進を遂げ、自分たちの実力もよく分かっているし、まだまだできることがあることも知っている。人材やインフラの面でまだ始動待ち、ウォーミングアップ中のものもあるんだ」

「僕はこのファミリーの一員であり、その一員として軌道に乗れていることに興奮している。その全てが重要なことだし、それをどこまで続けられるのか楽しみだ」

「今、僕がワールドチャンピオンになれる(チームだ)と最も確信しているのはどこか? 昨年の初めにそう聞かれたら、マクラーレンとは言わなかったかもね。でも今はこれまで以上に自信を持ってマクラーレンだと言える」

 忠誠心は称賛されてしかるべきものだが、F1での成功を保証するものではない。ただノリスが契約を延長したのは、ジュニアドライバー時代から自分を支えてくれたマクラーレンに恩返しをするためではなく、マクラーレンが成功への現実的なルートを示したからだと言える。

 確かにノリスの決断には義理人情的なものも多少なりともあるかもしれないが、チャンピオン獲得を熱望するノリスのようなドライバーにとって、それは脇役に過ぎないことだ。ともかく、マクラーレンが軌道に乗り、正しい道を歩んでいることを考えれば、マクラーレン残留は賢明な選択肢だと言えるのではないだろうか。

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