世界耐久選手権(WEC)は2024年シーズンから、ル・マン・ハイパーカーとLMDh車両によるハイパーカークラス(LMH)とGT3車両で争われるLMGT3クラスが基本的なシリーズ構成となる。
2023年シーズンまで使用されてきたLM-GTE車両は先月のバーレーン8時間レースでWECラストレースを迎え、ドライバーからは“プロトタイプ的”な作りをしたGTEマシンを名残り惜しむ声が聞こえた。
■WEC、全37台の2024年エントリーリスト発表。ハイパーカークラスは19台、LMGT3にはロッシも参戦
GTE ProとGTE Amは、2010年を最後にGT1が廃止されたことに伴い、かつてのGT2をオールプロとプロアマの2カテゴリーに分ける形で発足。2012年にWECが復活して以降、シリーズのある意味“主役”とも言える存在だった。
GTEクラスにはポルシェ、フェラーリ、フォード、BMW、コルベット、アストンマーチンなどのメーカーがこのレギュレーションに合わせたマシンを製造して参戦。WECだけでなくIMSAウェザーテック・スポーツカー選手権、ヨーロピアン・ル・マン・シリーズ(ELMS)でも使用された。
WECでは特に、GTE Proクラスが2010年代中盤から後半にかけてドライバーやファンの間で絶大な人気を誇った。しかし、2021年に最高峰クラスがLMP1からハイパーカーへ移り変わる前に、参戦台数は激減していた。
その結果、GTE Proは2022年シーズン限りでWECから廃止され、GTE Amクラスも2024年以降、LMGT3クラスに取って代わることとなった。
GTE車両とGT3車両の性能差は劇的なモノではないが、GTE車両はドライバーエイド装備が少なく、より純粋なレースカーに近い設計のため、プロドライバーたちは大きな魅力を感じていた。
ポルシェ911 RSR-19で3度のGTE Amクラス優勝を飾ったマッテオ・カイローリは、2024年からWECに導入されるGT3車両では、GTE車両ほどドライビングを楽しめないと語った。
「私によって、GTEがこれまでで最高のGTカーになることは間違いない」
カイローリはmotorsport.comにそう語った。
「もちろん、GT3もドライブするには良いマシンだけど、GTEはプロフェッショナルなマシンなんだ。GT3車両よりも自分のドライビングを合わせ込んでいく必要がある」
「この7年間、どのラップも楽しめたし、この素晴らしいマシン(の時代)が終わってしまうのは少し寂しい」
「確かに(LMGT3クラスは)多くのコンストラクターと多くのマシンが参戦することになるから、エキサイティングになるだろう。そして戦いは常に続いていくだろう」
「でも、ドライビングの楽しさは同じにはならないだろうね。GT3車両は市販車に似ているんだ」
「これ(GTE車両)はプロトタイプマシンの側面が強い。ショーとしては(GT3車両が)とても良いモノになるだろうけど、ステアリングを握る喜びは確かにないよ」
GTE時代こそ「GTレースの黄金期」とウェストブルック
また、2021年にコルベット陣営に加入して2023年にル・マンで優勝するまではIMSAとWECの両方でBMW M8 GTEを走らせていたニッキー・キャッツバーグは、GTE Pro最盛期には旧LMP1クラスよりも激しい競争があったと感じていたという。
「僕はGTEクラスが本当に大好きだ」とキャッツバーグは言う。
「GTEクラスは僕のキャリアの中で最もお気に入りのクラスだ。あのマシンは本物のサラブレッドレーサーだ」
「GTE Proを見てみると、あらゆるレベルのレースの中でも最もレベルが高かったかもしれない。ル・マンで勝つには、GTE Proが最も難しいクラスだと常に思っていた」
「僕が常に望んでいたクラスだし、僕はいつも最高のドライバーと自分を比べたいと思っていた。GTEが本当に好きだった」
「GTE AmはGTE Proから少しステップダウンすることになったけど、それでもレースをするのが最高にクールなクラスだと考えている」
「このクラスがなくなって、さようならを言わなきゃいけないのは残念だ。もちろんGT3もエキサイティングだし、ドライブするのもとてもクールだ。マシンもチャンスも増えるだろうね」
現在キャデラックからIMSA最高峰クラスに参戦するリチャード・ウェストブルックは、2010年代後半にWECとIMSAとの両方で多くの成功を収めた。
現在48歳のウェストブルックは、GTカーレースのファンがル・マンのGTE Pro時代を懐かしむのは数年先のことだと感じている。
「多くの時代が“GTレースの黄金期”という言葉を使うけど、それは間違っていない」
ウェストブルックはそう振り返る。
「2017年、2018年、2019年のような年を振り返ると、(現実だったのかと)自分自身をつねるほどだ。ル・マンでは20台のGTE Proマシンが、24時間テール・トゥ・ノーズで競り合った」
「メーカーもみんなも、本当に接近戦だった。トップブランドがそこにいた。僕は幸運にも、その時期にポルシェ、コルベット、フォード、アストンマーチンの4メーカーでドライブすることができた」
「本当に特別な時代だったし、それは間違いない。20年後に振り返って、父親になったドライバーが息子にあの頃のことを話すだろうね!」
「それくらい接戦で、最初から最後まで激しいレースだったのだ」
TFスポーツ「GTEは特別な雰囲気を持っていた」
ル・マンで3度の優勝経験を持つアンドレ・ロッテラーは、GTE Proでレースをすることこそ無かったものの、GTE車両を「とてもエモーショナルだった」と語った。
「何かが終わる時はいつもそうだ。素晴らしいマシンだったし、ハイテクでよく開発されていて、とてもエモーショナルなマシンだった」
ロッテラーはmotorsport.comにそう語った。
「911RSRを見れば、とても良いサウンドで美しく、成功を収めたマシンだと分かる」
「みんな多くのエネルギーを注いでいたし、何年にも渡って象徴的なマシンだったから、正直少し寂しいね」
「70年代初頭を考えると、RSRはすでに存在した。でも、永遠に続くモノなんてないんだ」
アストンマーチン・ヴァンテージと共に多くの成功を収めたTFスポーツのトム・フェリエ代表は、GTE車両という特別感がなくなってしまうことに寂しさを覚えたという。しかし彼は同時に、新しいLMGT3クラスの導入によって、GTEの参戦障壁によって関わりを持てなかった多くのメーカーにWECの門戸を開くことになると考えている。
「GTEは常に素晴らしいクラスで、非常に特別な雰囲気を持っていた」
フェリエ代表はmotorsport.comにそう語った。
「多くのドライバーやお金を払っているカスタマーは、いつもその面をとても楽しんでいる。ル・マンやWEC、ELMSでしか走ることのできない特別なマシンだった。これからはどこでも使えるマシンに門戸が開かれることとなる」
「その裏返しとして、様々なブランドのメーカーが参加することになる。だから良いところも悪いところもあるよ」
キーティング「GTE車両はプロレベルのレーシングカー」
ベン・キーティングはIMSAとWECの輝かしいキャリアの中で、2015年のSRTヴァイパーから今年のル・マンを制したコルベットC8.Rまで、6つのGTE車両をドライブした。
キーティングはGTEレギュレーションで、各メーカーがミシュランと共同でオーダーメイドのタイヤを作ることができ、各車両から最大限のパフォーマンスを引き出すことができる点を気に入っていたと語った。この点は、同じスペックのタイヤで走ることが多いGT3車両とは対照的だ。
「ミシュランのタイヤは、それぞれのマシン専用に設計されているのが気に入っている」とキーティングは言う。
「自分のマシンのために設計されたタイヤがあるというのは大きなことだ。コルベットに装着されているミシュランタイヤは、ポルシェやフェラーリ、アストンマーチンに装着されているモノとは異なる」
「これらのマシンのパフォーマンスレベルにとっては、本当に大きなことなのだ」
そしてキーティングは次のように続ける。
「マシンは本当によく設計されている。ほとんどのGT3車両はカスタマーカーとして設計されている。GTE車両はプロレベルのレーシングカーとして設計されている。あらゆる面でほんの少しのプラスアルファがある。それが大好きなんだ」
「スキルを磨かなければならないのは確かだ。でも、このようなマシンで速く走るためのスキルを身につけるのはとても楽しいよ」
GT3車両に関するドライバーからの不満のひとつとして、GTE車両と異なり、レギュレーションに沿ってアンチ・ブレーキング・システム(ABS)が搭載されていることが挙げられる。ABSはジェントルマンドライバーにとっては助けとなるシステムではあるが、同時にドライバー間のスキル差をなくしてしまうため、WECのような世界選手権では皆が諸手を挙げて歓迎している訳ではない。
2012年に現在のWECが発足して以降、GTE Amクラスから全戦に参戦しているクリスチャン・リードは、GTE車両からGT3車両への変更についてmotorsport.comに次のように語った。
「GTEは大好きだ。GT3よりも好きだよ」
「もちろん、特にアマチュアカテゴリーでは、ABSを装備したレースカーを走らせるのはいいアイデアだ。でも僕にとってWECはGTEのトップレベルだし、ここにいるプロとアマチュアのドライバーたちは本当にレベルが高い」
ABSについてカイローリは次のように説明している。
「ABSのおかげで、マシンで色々できるし、それほど多くを失うことなく、ミスも許容してくれるから、全てが簡単になる。ABSはとても助けになるし、ジェントルマンドライバーの観点からは正しい解決策だと思う」
「でもプロドライバーにとっては、ABSによってブレーキングの違いによるギャップはもっと縮まるはずだ」
申込み最短3時間後に最大20社から
愛車の査定結果をWebでお知らせ!
申込み最短3時間後に最大20社から
愛車の査定結果をWebでお知らせ!
愛車管理はマイカーページで!
登録してお得なクーポンを獲得しよう
「とりあえず増税ね」で50年!? 「世界一高い」自動車諸税&ガソリン税“見直し”正念場 “年収の壁”の向こうの璧
“300馬力”V6搭載! ニッサン爆速「最上級ミニバン」とは? 超豪華内装×専用装備マシマシな“走り屋仕様”の「エルグランド」に熱視線!
「黄信号だ。止まろう」ドカーーーン!!! 追突されて「運転ヘタクソが!」と怒鳴られた…投稿に大反響!?「黄信号は止まるの当たり前だろ」の声も…実際の「黄信号の意味」ってどうなの?
「緊急車両が来て道を譲らないとどうなりますか」 理由に「『聞こえんかった』は通用するのですか」 譲るのはマナー?義務? 具体的にどう譲ればいいのですか。
“生産版”「“R36”GT-R」公開に反響絶大! 日産の「旧車デザイン」採用&4.1リッター「V6」搭載で「借金しても欲しい」の声! 1000馬力超えもあるArtisan「“和製”なスーパーカー」が話題に
申込み最短3時間後に最大20社から
愛車の査定結果をWebでお知らせ!
申込み最短3時間後に最大20社から
愛車の査定結果をWebでお知らせ!
店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!
みんなのコメント
この記事にはまだコメントがありません。
この記事に対するあなたの意見や感想を投稿しませんか?