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チームとチームが手を取り合う……コロナ危機がF1を新しい姿に?

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チームとチームが手を取り合う……コロナ危機がF1を新しい姿に?

 先日行なわれた世界モータースポーツ評議会(WMSC)で、F1のルールを変更することが承認された。

 この数週間、この新ルールに関する論争の中心は、コスト削減策を中心に展開してきた。当初1億7500万ドル(約188億円)と予定されていた年間の予算制限額は、結局1億4500万ドル(約156億円)に削減された。これにより多くの変化をカバーすることができ、今後数年間にわたるこのスポーツの形を定義することになるはずだ。

■レッドブルF1代表、予算上限額引き下げにも「恐れるべきことじゃない」

 予算上限を引き下げることにより、各F1チームはスリム化することに繋がる。マクラーレンの発表によれば、レーシングチームのうち70人が解雇されるという。今後数ヵ月の間に、他チームでも人員が整理されることになる。

 エンジンメーカーも開発凍結により、V8時代終盤と同じように開発コストを抑えることができるはずだ。2021年以降は仕様の変更は年間1回までに制限され、2023年以降はシーズン中の仕様変更はほぼ許されないことになる予定だ。

 2025年以降の新しい仕様が検討される際には、エンジン開発を凍結した状態で、設計に微調整を加えることができる。そしてその際には、仕様を完全に変えることにはならない見込みだ。

 このような計画は、現在は特にエンジン開発コストが高騰しているため、全てのメーカーに歓迎されることになるだろう。

 ルノーF1のマネージングディレクターであるシリル・アビテブールは最近、「我々は、エンジンの狂ったような開発競争を封じ込めることができた。エンジンに対してこれまで費やしてきたことは、本当に正気じゃなかった。ついにそれが変わるだろう」とmotorsport.comの取材に対して語っている。

 しかし今回の変更は、単純なコスト管理や、資金を節約するために開発を抑制するということだけではない。F1は、レースの”秩序”を揺るがす可能性のある、全く新しい考え方を採用しようとしている。

 何年もの間、F1はほぼ全ての努力を実力主義の維持に集中させ、最高のパフォーマンスを発揮したチームが最も報われるようになっていた。トップチームが、小さいチームや新しいチームに”同情”することはほとんどなかった。その結果、分配金のボーナスはトップチームに集中するようになり、レッドブル、メルセデス、フェラーリの3チームは特にその恩恵を受け、F1の2極化に繋がった。

 当初は2021年からの導入が検討され、今では2022年から導入予定と変更されているリバティ・メディアの規則改定策は、格差を埋めることが主な目的とされている。

 しかし、新型コロナウイルスの感染拡大により、全てのチームが団結心を手にしたようだ。これが、このスポーツ全体にとってより良い、より平等な戦いをもたらすための最初のステップになる可能性がある。

 最もパフォーマンスが劣ったチームが、より多くの風洞実験とCFD(計算流体力学)開発の時間を手にできるという”空力開発ハンデキャップシステム”のようなルールは、1年前にはほとんど考えられなかったようなモノだ。

 アビテブール曰く、そのようなアイデアは、将来に向けて非常に有望だという。

「初めてF1が、我々が開発しているオープンテクノロジーに向けて動き出している」

 そうアビテブール代表は語った。

「全てのチームが協力して、マシンの特定の部分を”オープンソース・コンポーネント”として最良のモノを開発する……それは、私からすれば素晴らしい形だろうと思う」

「これは今よりもずっと良く、はるかに効率的だ。そして、カスタマーチームを許すよりも、はるかに公正で透明性が高いんだ」

 これらの変更により、ウイリアムズのようなチームがすぐにワールドチャンピオンになるというようなことはないだろう。そして、最高の頭脳が最高のマシンを生み出すのを妨げることはないだろう。しかし、F1に予測不可能性を付け加えるのには十分だろう。

 またある情報源によれば、今やF1は自分たちチームを優先するのではなく、グループ全体にとってより良いモノを作ろうとしているという。F1全体が共闘するようになったことで、さらに成功を目指し、特別なモノになっていくことになるはずだ。

 MotoGPでは、特定のレベルに達していないメーカーに対しては、他より多くのテストとアップデートが許可されている。カルロス・サインツJr.(マクラーレン)はこれについて、昨年次のように語っていた。

「MotoGPのトップチームも、最初は懐疑的だったということだ。でも、彼らは勝ち続け、さらに勝利を手にし、その上でよりたくさんの人たちを相手に戦っているから、これまで以上に満足しているはずだ」

「より多くのブランドと戦うことで、メーカーやブランドをより強くする。これは非常に良い例であり、将来のF1でも見たいモノだ」

 今のF1はその方向に向かっているように見え、そしてその考え方が標準になったのならば、これまでとは異なるF1への扉を開くことになるだろう。

 アビテブールは、このような新たなF1を推進すべきであると語る。

「我々はスポーツに参戦しており、互いに競い合っている。それを取り除くつもりはない。それは残す必要のあることだ」

「しかし、チーム同士がもう少し連携する形を見つけること、それが今回の危機のひとつの教訓だ。そしておそらく特に若い世代のファンは、企業間、および国の間でのコラボレーションを、F1でもっと見たいと思っているはずだ。今回の”ニューディール”には、これらのことを行なうための枠組みがあるかもしれない」

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