日本では『アンドロス・トロフィー』として知られるフランスが誇る氷上のラリークロス・シリーズが2019/20年シリーズから完全電動化されるのに合わせ、その名称を“e-Trophee Andros(アンドロス・e-トロフィー)"へと刷新。事前に発表されていた『ルノーZOE(ゾエ)』のワークス参戦に加え、新たに『アウディA1』の3台や新型『プジョー208』もエントリーリストに名を連ね、12月7~8日の週末に新時代の幕開けを迎える。
フランスを代表するモータースポーツ・カテゴリーとして名を馳せるアンドロス・トロフィーは、かつてイバン・ミューラーが10度のシリーズ王者に輝き、F1やWRC世界ラリー選手権、ツーリングカーなど異種目のスタードライバーが数多く参戦してきた氷上、雪上を舞台に争われるラリークロス形式の競技だ。
フルEV化を果たす伝統の雪上戦、アンドロス・トロフィーにルノーがワークス復帰へ
これまでは内燃機関搭載の4WS(四輪操舵)機構を持つオリジナルのアイス・レーシング・マシンによるエリート・プロ・クラスがトップカテゴリーに据えられてきたが、2010/11シーズンからはアンドロス・エレクトリックという電動クラスが設けられ、段階的にEV化の方向性を探ってきた。
アンドロス・トロフィー主催団体は、この2019年6月に新トップカテゴリーの概要をアナウンスし、従来までの内燃機関V6エンジン搭載モデルと同様に4輪駆動と4輪ステアの構造は維持した上で、350馬力を発生する2基の電気モーターを採用したEVマシンをトップカテゴリーに据えることを発表。新たに『アンドロス・e-トロフィー』としてスタートを切ることが決まった。
その初EVシーズンの開幕戦レースウイークとなる12月を前に、最終的なエントリーリストが発表され全12台のエントリーが集まったことが判明。11月最終週の水曜にフランス国内でラウンチイベントを開催したワークス・ルノーの王者DAレーシングを皮切りに、セバスチャン・ローブ・レーシング(SLR)や、イバン・ミューラー・レーシング(YMR)、そしてGT3の耐久シリーズやERCヨーロッパ・ラリー選手権でも活躍を演じるセインテロック・レーシングなど、5つのチームが参戦することが明らかになった。
上位2クラスがフルEV化されるうち、従来のエリート・プロ・クラスに代わってトップカテゴリーに据えられる『アンドロス・スポーツ01』クラスは、エキサゴン・エンジニアリングによって開発された上記のマシン構成に、チームが独自のボディワークを架装することが認められ、共通ボディとして用意される“アンドロス・スポーツ”と呼ばれるボディを選択することも可能となる。
新たにルノーのファクトリーサポートを受けるDAレーシングは、2019年6月に新型に切り替わったEVモデルの『ルノーZOE』を投入。シリーズ4連覇を達成しているジャン-バティスト・デュブールをエースに、同じくEVシングルシーターのABBフォーミュラE選手権で4シーズンを戦ったニコラ・プロストを招聘した。
そしてフランス国内のGT選手権ではアウディのカスタマーとしても活動するセインテロックは、唯一の3台体制を敷き『アウディA1』のボディをチョイス。そのドライバー体制も強力な布陣となり、WTCR世界ツーリングカー・カップ参戦組で2017/18年のアンドロス・エレクトリック王者でもあるオーレリアン・パニスと、WorldRX世界ラリークロス選手権で2019年ドライバーズランキング2位となったアンドレアス・バッケルドを起用する。
さらにアンドロス・スポーツの共通ボディキットを使用するYMRは、同じくWTCRでチームメイトを務める自らの甥っ子ヤン・エルラシェールをエースに据え、同じく共通ボディ使用のSLRはローブ自身も2戦にエントリーするほか、元F1ドライバーでこのアイスレーシング界の盟主でもあるオリビエ・パニスを迎え入れるなど強力な布陣を敷いた。
同じくWTCR経験者で、WEC世界耐久選手権2018/19“スーパーシーズン”ではレベリオンにも所属したナサニエル・ベルトンは、シルヴィアン・プーシャー・コンペティションからのエントリーで新型『プジョー208』のボディを採用したマシンをドライブする。
アンドロス・e-トロフィーは、12月7~8日にフランス・アルプス地方で世界的な知名度を誇るヴァル・トランスのスキーリゾートを舞台に、新EV時代のオープニングを迎える。
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