3度のF1世界チャンピオンであり、今季もドライバーズチャンピオンシップをリードするレッドブルのマックス・フェルスタッペンだが、F1アゼルバイジャンGPではチームメイトのセルジオ・ペレスに対して33戦ぶりに予選で負け越し、さらに決勝でも完敗を喫するというF1ファンにとって見慣れない構図となった。
フェルスタッペンはアゼルバイジャンGPでなぜこうも上手くいかなかったのだろうか?
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アゼルバイジャンGPでフェルスタッペンが苦しむ中、ペレスにとって1年半ぶりのベストレースとなり、純粋なスピードで優勝争いに加わっていたことは特に奇妙だった。
昨年22戦中21勝というシーズン最多勝記録を塗り替えたレッドブルだが、今季は5月以降、マシンバランス問題に頭を悩ませ、マクラーレンやフェラーリ、メルセデスが勝利を手にする中でフェルスタッペンは7戦にわたり表彰台の頂点に登れていない。
イタリアGPで“モンスター”を走らせたレッドブルは、シーズンを通してペレスを苦しめた上フェルスタッペンにも影響を及ぼしたハンドリング問題を理解し始めていた。
ペレスは今シーズンほとんどの週末で、初日のフリー走行の時点で後手に回り、マシンセットアップを自身のスタイルに合わせるための解決策を見つけるのに苦労していた。
しかしアゼルバイジャンGPではフロアデザインの微調整もあり、ペレスはマシンにかなり満足できる状態になった。その自信は予選でも発揮されて4番グリッドを獲得。予選順位でフェルスタッペンを上回るのは2023年マイアミGP以来だった。
ペレスが堅実なセットアップを見つけた一方で、フェルスタッペン側は別の方向に進み、結果的にドライブできる”限界”を「越えてしまった」のだと言う。
「Q1に出てすぐ、マシンが一歩後退したと感じた」
フェルスタッペンは予選後、そう説明した。
「いくつかの変更を施したが、マシンは信じられないほど予測不可能で難しいモノになった」
「コーナーの進入と出口でマシンのリヤが大きく跳ねてしまった。オーバーステアが酷すぎた。市街地サーキットでは欲しくないモノだ」
F1ではパルクフェルメルールのため、基本的なマシンセットアップは予選からレースを終えるまで手をつけることができない。そのため、フェルスタッペンを苦しめたサスペンションセットアップはそのまま。変更を加えればピットレーンスタートを余儀なくされる。
フェルスタッペンが抱える問題が決勝レース中でも再燃するのに時間はかからなかった。
スタートでメルセデスのジョージ・ラッセルを交わして5番手に浮上したフェルスタッペンだったが、その後は前を行くフェラーリのカルロス・サインツJr.のペースについていけなかった。
そしてフェラーリはバクーのタイトな90度コーナーで苦戦を強いられ、無線でチームにマシンが「全く食いついてくれない」と不満を漏らした。
ピットストップ後、フェルスタッペンはハードタイヤでピットレーンからスタートしたマクラーレンのランド・ノリスを抜けず、代わりにラッセルに抜き返されてしまった。
ノリスはその後タイヤ交換を終えた後、ピットストップ1回分のタイムロスを取り戻し、フェルスタッペンを抜いて4位でチェッカー。フェルスタッペンは5位に終わった。
「予選での変更の代償を払うことになったと思う」とフェルスタッペンは言う。
「変更で本当にドライブが難しくなっていた」
「マシンがかなり飛び跳ねていたんだ。低速コーナーではタイヤが地面から離れていた。路面との接地面がない時は本当に難しい」
「チームは勝つ時も負ける時も一緒だ。最終的に良い方向性だと考えていたけど、そうじゃなかった」
またフェルスタッペンは、間違ったセットアップ変更に陥る前には、新しいフロアデザインがマシンの挙動を改善していたと語っている。そのため、シーズンやレッドブルの長期的なパフォーマンスを考えれば、アゼルバイジャンGPの週末が大失敗だったわけではない。
「マシンのフィーリングは以前より少し良くなったし、全体的な挙動も良くなった。常にマシンをさらに良くしようとするものだけど、残念ながら僕らが行なったことはマシンを悪化させてしまった」
「マシンとのつながりはあったのに、残念ながら僕らが行なった変更でまたそれを失ってしまった。でもレースでは、チェコ(ペレス)が少しハッピーになったことで示されたように、マシンのパフォーマンスも少し良くなった。僕らはまだ戦えている」
チーム代表のクリスチャン・ホーナーは、フェルスタッペンのセットアップ変更がタイヤデグラデーション(性能劣化)にも悪影響を及ぼしたと言う。特にハードタイヤスタートのアレクサンダー・アルボン(ウイリアムズ)やノリスの後ろに詰まってしまった時に、その症状が顕著だったようだ。
「チェコのマシンはとても速かったが、マックスのマシンには何か上手く機能しないモノを投入してしまったかもしれない。長い間、集団の中で戦っている時にそれがタイヤにかなりのダメージを与えていたかもしれない」
ホーナー代表はSky Sports F1にそう語った。
「ラッセルのスティントを見ると、彼はとてもゆっくりとしたスタートを切った。そこからペースを引き上げ、終盤に良いタイヤを履いた。だから非常にフラストレーションがたまる」
「2台のマシンの間にどのような違いがあるのか、大きな事後調査が行なわれるであろう。それは明らかに微妙なモノだ。しかし彼はチェコほど快適に感じられなかった。我々が調べて原因を探る必要があるのは明らかだ」
マクラーレンのオスカー・ピアストリがアゼルバイジャンGPを制したことを考えると、予選Q1でのイエローフラッグの混乱から後方スタートとなったノリスにとっては、タイトル争いにおいて大きなチャンスを逃したように感じられるかもしれない。
しかしタイトル争いは全てのポイントが重要。特にレッドブルにとっての“アキレス腱”であるシンガポールGPが次戦に控えている。
アゼルバイジャンGPでノリスは15番手から4位フィニッシュを果たし、ドライバーズチャンピオンシップ首位のフェルスタッペンとのポイント差を3ポイント縮めた。ただフェルスタッペンとしては、マシンの悲惨な挙動を考えれば、残り7戦で依然59ポイントのリードを保てたというのは、さほど動揺することではないと語った。
「僕にとっては、多分ポジティブなことだ」とフェルスタッペンは言う。
「もっと差を広げたかったけど、僕らのレースを考えれば、それだけで済んで本当に良かったよ」
「シンガポールのために何ができるだろうか? 何が悪かったのかを理解するために、セットアップを最適化しようとしている。当然、僕らにとってベストなコースにはならないと思うけど、どうなるか見てみよう。僕らを驚かせるかもしれないね」
「(マクラーレンがコンストラクターズチャンピオンシップで首位に立つのは)決して良いことではない。でもまだ戦いは終わっていない。取り戻せるように頑張るよ」
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