2021年全日本ラリーの実質的な開幕戦として、3月20日~21日に愛知県新城市を舞台に開催された「新城ラリー」には、オープンクラスを含めて計77台のマシンがエントリーした。その中で最も注目を集めていたのが、トヨタのワークスチーム”TOYOTA GAZOO Racing”だったと言えるだろう。
昨年までGRMNヴィッツを武器にJN2クラスで活躍していた同チームは、2021年には合わせて2台のニューマシン”GRヤリス”を投入。エースドライバーには、昨年までスバル勢の一角として8回に渡って全日本ラリー選手権でチャンピオンに輝いた勝田範彦選手を起用し、GRMNヴィッツで2019年のJN2クラスでチャンピオンに輝いた眞貝知志をセカンドドライバーに抜擢するなど充実した体制で、最高峰のJN1クラスへの参戦を開始したのである。
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優勝請負人としてチームに加わった勝田は「オフシーズンの間にテストしたことで、ずいぶんと煮詰まってきました。GRヤリスはスバルWRXとはまったく違うクルマ。WRXはFRのような動き方をするんですけど、GRヤリスはFFのような動きをする。最初は違和感があったけれど、セッティングがいい感じになってきた。エンジン排気量が小さい分、WRXよりもパワーは少ないけれど、車両重量が軽いので、タイトコーナーが連続するところは加速がいい。それにクイックに動いてくれるので、テクニカルなターマックステージでGRヤリスは強いと思う」とインプレッションを語った
さらに4WDマシンで初めて競技に挑む眞貝も「クルマが軽くてタイヤのキャパシティに余裕がある。安定性が高いし、クセがなくて走りやすいと思います」と語るなど、両ドライバーともにGRヤリスに対する評価は高い。
2021年の目標について「今年はGRヤリスでトップを狙いたいところですが、R5仕様車も参戦していますからね。どこまで近づけるのか、チャレンジしたいと思います」と勝田が力強く語る一方で、眞貝は「JN1クラスはライバルが強敵でレベルが高いですからね。ターマックイベントが開幕から5戦続くので、焦らずに経験を積み重ねていきたい」とやや控えめのコメント。それでもGRヤリスが熟成を極めたスバルWRXに対してどのようなパフォーマンスを見せるのか、注目を集めていたのだ。
しかしTOYOTA GAZOO Racingの2台のGRヤリスは、新城で予想外のハプニングに祟られることとなった。
3月20日、晴天の空の下で争われたレグ1で各マシンがタイムアタックを展開する中、勝田の駆る5号車はオープニングステージとなるSS1で失速してしまう。曰く「スタートした瞬間からエンジンがおかしくて、最終的に止まってしまった」と、スタートからわずか1kmの地点でマシンを止めてしまった。
さらにSS1で6番手タイムをマークした眞貝の8号車も、SS2をフィニッシユした段階でストップ。眞貝は「SS1はまったく問題なかったんですけどね。フィニッシュの1km手前でパワーがなくなってしまった。下りだったのでそのまま惰性で走りきりましたが、そこでマシンを止めました」と、SS2を6番手タイムで走破しつつも、エンジントラブルでその後の走行を断念することになった。こうしてTOYOTA GAZOO Racingの2台のGRヤリスは、レグ1を走り切ることなくリタイアすることになったのである。
TOYOTA GAZOO Racingにとって悔しい一戦となったが、昨年までトヨタ86を武器にJN3クラスを戦っていた山本悠太は、K-oneレーシングのGRヤリスで5位に入賞。山本も4WDマシンでのラリー参戦は初めてながら「まだクルマと対話できてなくて、抑えながらのドライブでしたが、とくに大きなトラブルはありませんでした。ポテンシャルの高さは感じているので、新しい部品を試しながらセットアップを進めていきたい」と語り、新城ラリーを通じて多くの手応えをつかんでいるようだ。
SS6でクラッシュを喫しリタイアに終わったが、スバルWRXを武器に終始ラリーをリードしていた鎌田卓麻も「レグ1でトラブルが出たみたいですが、元々軽いマシンですからね。データを重ねることで速くなってくると思います」とGRヤリスに対する警戒感を隠さない。
競技にデビューしたばかりのニューマシンにはマイナートラブルがつきものだが、実戦を重ねることで着実にパフォーマンスが向上するのが常だ。さらに4月10~11日に佐賀県唐津市を舞台に開催されるシーズン2戦目の「ツール・ド・九州」には、これまで三菱ランサーを武器に計9回に渡って最高峰クラスを制してきた奴田原文雄も、自身が率いるチームよりGRヤリスでの参戦を開始することになっている。
熟成が進むに連れ、GRヤリスは今後どんな活躍を見せていくことになるのだろうか?
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