いよいよ2024年のタイトル天王山に突入したNASCARカップシリーズのプレーオフ初戦、シーズン第27戦となるアトランタ・モータースピードウェイでの『Quaker State 400(クエーカーステート400)』は、ダニエル・スアレス&ロス・チャスティン(トラックハウス・レーシングチーム/シボレー・カマロ)のシボレー艦隊を退けた、ジョーイ・ロガーノ&ライアン・ブレイニー(チーム・ペンスキー/フォード・マスタング)の”チャンピオンコンビ”がオーバータイムスプリントを制覇。ロガーノはプレーオフ開幕の勝利で次なるステージ”Round of 12”へのアドバンテージを手にすると同時に、今季2勝目、キャリア通算34勝目を飾っている。
前戦でチェイス・ブリスコ(スチュワート・ハース・レーシング/フォード・マスタング)が実に73レース連続無勝利記録に終止符を打ち、今季限りで活動休止を表明しているスチュワート・ハース・レーシング(SHR)に大逆転でのプレーオフ進出権をプレゼント。これで今季タイトルを争う16名が確定した。
73戦連続無勝利記録に終止符。ブリスコがブッシュの野望を粉砕/NASCAR第26戦
そんな劇的なレギュラーシーズン最終戦を経て、迎えたポストシーズン開幕はスーパースピードウェイ(SSW)で無類の強さを誇るマイケル・マクドウェル(フロントロウ・モータースポーツ/フォード・マスタング)が予選ポールポジションを獲得。自身今季5度目、キャリア通算でも5度目、そしてSSWでは「2位以下からスタートしたことはない」という圧倒的な高速域での巧みさを披露した。
迎えた決勝は、序盤こそ“ノーコーション”の穏やかな展開が続くも、56周目にまさかのドライバーがまさかの事態に陥ることに。今季プレーオフにNo.1シードで臨んでいたカイル・ラーソン(ヘンドリック・モータースポーツ/シボレー・カマロ)が3番手を走行中、ターン2を抜けようとした瞬間に突如として制御を失い、激しくウォールに衝突。5号車のカマロZL1はSAFERバリアから跳ね返りトラック中央へ滑り出ると、ここに差し掛かったブリスコの14号車マスタング“ダークホース”が激突し、その衝撃で左フロントを大破して両者ともにここで事実上の勝負を終えることになる。
■3台巻き添えクラッシュでベテランにもダメージ
「大丈夫だ。ありがたいことに、車内のすべてがうまく持ちこたえた。あれは大きな衝撃だった。何が原因だったのかよくわからない」とインフィールドケアセンターでの処置を終え振り返ったラーソン。
「コーナーではかなり緊張していたし、重圧と負荷を背負っていた。それからコーナーをかなり回ったところで、突然クルマが飛び出してしまった。わからないけど、すべてが本当にあっという間に起こったんだ……」
一方、先週の勝利で滑り込みプレーオフ進出を決め、意気揚々と乗り込んできたブリスコも、思わぬ筋書きでアトランタを去ることとなった。
「あれは大きな衝撃だった。長いキャリアの間に受けたなかでも最大の衝撃のひとつだったよ」と明かしたブリスコ。
「大丈夫でよかった。あとは勝つだけだ。(前戦の)ダーリントンでやらなければならなかったのはまさにそれだったし、またできるとわかっている。ワトキンスグレンとブリストルに行って同じことをやろうとするだけさ!」
これでステージ1はブレイニーが、続くステージ2はその僚友のサポートを得たオースティン・シンドリック(チーム・ペンスキー/フォード・マスタング)が勝利を攫っていく。しかし終盤205周目には、そのブレイニーを含む3台が巻き添えになるクラッシュが発生。姿勢を乱したクリス・ブッシャー(RFKレーシング/フォード・マスタング)がチャンピオンの左リヤにヒットし、ここでコーションが発令される。
その最大の犠牲者となったのが今季限りでの現役引退を表明済みのマーティン・トゥルーエクスJr.(ジョー・ギブス・レーシング/トヨタ・カムリXSE)で、今季ここまで未勝利ながら獲得ポイントでプレーオフ進出権を確保したベテランは、ここでのダメージにより複数回のピット作業を強いられる。
さらにデブリ回収を経て残り5周でのリスタート。この日は終始トップグループで周回したカイル・ブッシュ(リチャード・チルドレス・レーシング/シボレー・カマロ)やチャスティンらに混じり、ここアトランタで2月に勝利を挙げているスアレスが隊列を率いると、フィニッシュを目前にして後方ノア・グラグソン(スチュワート・ハース・レーシング/フォード・マスタング)のアクシデントによりオーバータイムに突入する。
■僚友を失っての惜敗2位に複雑な胸中を語る
ロガーノの隣に並びアウトサイドから最後のリスタートに挑んだスアレスは、背後のチャスティンからプッシュを受ける。一方、ボトム側のペンスキー艦隊は一糸乱れぬ隊列を維持してホワイトフラッグに突入。この瞬間、ターン3でわずかにウォールにタッチしたチャスティンが失速したことで勝負は決し、99号車カマロZL1の後方からチームメイトが姿を消したことで「厳しい勝負になると覚悟した」スアレスは、最後のひと伸びが足りず惜敗の2位フィニッシュとなった。
「いや、絶対に満足していない。満足だが、満足できない」と、チェッカー直後に複雑な胸中を語ったスアレス。
「プッシャーであるチームメイトを失った。彼(チャスティン)は素晴らしい仕事をしていたし、僕らにはいいチャンスがあると感じていた。タイヤがパンクしたか何かわからないが、彼を見失った瞬間、厳しい戦いになるだろうと分かった。でも、それがレースの一部だよね?」
一方、集団後方ではデニー・ハムリン(ジョー・ギブス・レーシング/トヨタ・カムリXSE)やハリソン・バートン(ウッドブラザーズ・レーシング/フォード・マスタング)らを巻き込むマルチタングルが発生するなか、トップチェッカーを受けたロガーノは規定周回数260周を6周ほど超過した勝負でアトランタ通算2勝目を飾り、プレーオフ順位でも5番手に浮上した。
「ペンスキーはいつだってSSWで速いクルマを提供してくれる。最終的にクラッシュしてしまうことの方が多かったが(笑)、ようやく速いレースカーをうまく利用して、ここアトランタでふたたび勝つことができた」と満足げな2022年王者のロガーノ。
「僕は長いあいだ、すぐそばのコンドミニアムで805号室に住んでいた。このトラックでレースをすることを夢見ていたんだ。だから、ここでヴィクトリーレーンに入るのはいつも特別なことさ。今日は本当に良いチームがここにいたし、ついにJL Kids Crew(JLキッズ・クルー/ロガーノの慈善事業のひとつ)とここで一緒に優勝できて本当にうれしいよ!」
併催されたNASCARエクスフィニティ・シリーズ第24戦『Focused Health 250(フォーカスド・ヘルス250)』は、ジョージア州ウィンストン出身のオースティン・ヒル(リチャード・チルドレス・レーシング/シボレー・カマロ)が今季3勝目で年間のアトランタ双方を制すなど、こちらもSSWでの強さを披露している。
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