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BTCC熱狂時代 中古で探す、アルファ155/BMW 3シリーズ/ボルボ850 後編

掲載 更新
BTCC熱狂時代 中古で探す、アルファ155/BMW 3シリーズ/ボルボ850 後編

もくじ

前編
ー 日曜の勝者=月曜の売れ筋
ー 20年後の今 オーナーは次の世代に
ー 155 今では引く手あまたの問題パーツ
ー 155 オーバルコース試乗
ー ボルボ850が上位 誰が予想した?

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後編
ー 空力に有利? ワゴンボディ
ー 試乗 ポルシェ設計の5気筒
ー Zアクスルサスに病み付き E36型
ー 魅力はハンドリング 318 iS
ー BTCC黄金期 皆さまも1台いかが?

空力に有利? ワゴンボディ

BTCCの舞台にやってきたボルボ850レーシングチーム。ブランズハッチにおいてヤン・ラマースが駆る大柄なスウェーデン製ワゴンは、まんまと上位グループに食い込んだ。

車重は増し、重量配分も不利、しかもテストは限られていた。しかし、設計と製作、そしてレースマネジメントにTWRが携わったマシンは、戦闘力を証明したのだ。それも劇的に。


セダンのステップダウンしたルーフは乱気流を発生するが、ワゴンにはそれがなくリフトが減少する。結果、高速域でもコーナリング時でも安定性が高まったのだ。

白状しなければならない。ここに用意したT-5Rは1995年に導入された限定車だ。2500台生産されたが、この年はルール改定により、ホモロゲーション取得には2万5000台の生産が必要となった。いずれにせよ、空力規定も変更されたため、チームはセダンへのスイッチを決定していたのだが。

ホモロゲーションのベースは、1993~94年の2.0ℓエンジン搭載のSE/GLT各グレードだが、せっかくサーキットへ持ち込むというのに、それらはどうにも退屈なシロモノだ。対して、アンソニー・テイラーから借り受けたガルイエローのT-5Rは、その対極にある。


グラファイト色の17インチアルミホイールにロープロファイルのピレリPゼロを履き、ローダウンサスペンションやアグレッシブなフロントスポイラーを組み合わせる。無骨で角張ったボディスタイルを相殺するほどのインパクトだ。子供の頃から食べ慣れたキャンディに、ドラッグを混ぜ込まれたようなものである。



試乗 ポルシェ設計の5気筒

ポルシェ設計の5気筒は243psを発生し、背中を突き飛ばされるようなパンチと、荒々しい排気音とワイルドな吸気音を味わえる。5速から4速へシフトダウンし、ペダルを床まで踏み込めば、その加速には息を呑む。


加速性能は、同時期のスーパーカーですら顔色を失うほどで、0-100km/hは今回のライバルたちとは別次元の6.9秒をマーク。タイトコーナーでは、シャシーは落ち着きを失い、ホイールスピンを防ぐためにスロットルペダルを緩めなければならない。パワーオンではトラクションが失われ、野生化するような性格を御するために全力で挑むことが求められる。


当時、多くのオーナーに後悔の念を抱かせたのが、公道を走るには低さも硬さも過剰で、骨が軋むような思いを強いるサスペンションだ。しかし、サーキットの超スムーズな路面では、これほど大柄なクルマにグリップをもたらす。レザーとスウェード調素材の豪華なトリムや、ボルボらしい安全デバイスを備えながらも、850T-5Rは、野性的なパフォーマンスを剥き出しにしてくるのだ。



Zアクスルサスに病み付き E36型

最後に控えしはドイツの雄、BMW。チーム・シュニッツァーが走らせたマシンのベースは、この318iSだ。それ以前はE30型M3で参戦していたが、この世代ではエントリーモデルにスイッチ。635CSiのミニチュア版的なキャラクターで成功を収めたモデルだが、1993年にはヨアキム・ウィンケルホックとスティーブ・ソパーが総合1-2フィニッシュを飾った実力の持ち主でもある。


しかし翌年は、準備不足でシーズンイン。後輪駆動車に課される重量ハンデも災いして、シーズン序盤は順位が低迷し、空力開発で先行したアルファ・ロメオの独走を許してしまう。ところが中盤戦、ルール改定とウエイト削減により状況は一変。突如として戦闘力を回復したBMWは、第12戦以降、10戦で5勝を挙げたのである。

1992年4月に登場したE36型3シリーズは、先代のボクシーなスタイリングに別れを告げ、一気にモダンなルックスへと生まれ変わった。それはアルファやボルボと見比べても、新世代のクルマだと思えて、今でもさほど古さを感じさせない。


チャールズ・テシエラのポーラーシルバーのiSは、同時期のBMWの多くがそうであるように、オドメーターはかなりの数字を示していたが、走りは衰えを知らない。E36型3シリーズはデザインのみならず、品質面の向上も著しかったのだ。



魅力はハンドリング 318 iS

インテリアも、派手なところはないがハイクオリティで、質実剛健といった趣き。しかも、ステアリングとブレーキのシャープさは、ほかの2台とは比較にならない。後期型に搭載されるM44型1.9ℓ4気筒は、アルファほどソウルフルな歌声を聴かせてはくれないが、なかなか熱いユニットだ。


しかし、それ以上に魅力的なのがハンドリングである。Z1由来のZアクスルサスペンションを採用し、しかもクーペの足まわりは、専用ダンパーとローダウンスプリングを奢るMテクニック仕様。後輪駆動との相乗効果で、限界直前まで、コーナーを攻められる。前輪駆動のライバルがトラクションに苦しんでも、318iSはひとり涼しい顔だ。


1994年のレースシーンに話を戻すならば、BMWシュニッツァーの追い上げは遅きに失した。アルファ・コルセは勝率が落ち込み、タルキーニは第13戦のノックヒルで大クラッシュを喫し、ダブルヘッダー開催の第14戦を欠場。しかし、第16戦から3戦連続で2位入賞し年間王者を獲得すると、その余韻冷めやらぬ第19戦で優勝を飾り、圧倒的な強さを印象づけたのである。



BTCC黄金期 皆さまも1台いかが?

ボルボは確かに戦闘力の高さを示したものの、不安定さも抱え、ドライバーズ部門では13/14位に沈む。しかし、縁石に乗り上げ、四輪が宙に浮く走りは、現在のBTCCのイメージが、この息つく間もなかったシーズンから続くものと思わせる。そして翌年導入の850セダンでノウハウを蓄積し、1998年にS40で悲願のタイトルを獲得する。

ロードカーについて言うならば、ソパーやタルキーニの領域をチラリと垣間見せるだけのBMWとアルファより、レースに出なかったT-5Rの方が、一般的な “ツーリングカー” のテンプレートに近い。アルファのドライバーだったジャン・ピエロ・シモーニはBTCCを
「恐るべきもの、速いもの、そしてファニーなもの」と形容した。ボルボの限定版ワゴンは、それをまさに体現している。


だが、今回の3台の魅力は、また別のところにも見出せる。グループAの公道仕様を買える予算があれば、ここにある3台をまとめて手に入れられるのだ。サーキットを沸かせたヒーローたちの公道版が、無理なく自分のものになる。スーパーツーリング時代の人気が今なお高いのも頷けるというものではないか。

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