運転席へ座った瞬間からシリアス
フェラーリ・プロサングエに乗った第一印象は、期待ほど好ましいものではなかった。高性能SUVに求められるような、「軽さ」が伝わってこないのだ。
【画像】ドライバーズSUV頂上対決 フェラーリ・プロサングエ アストンDBX707 812 コンペティツィオーネとDB12も 全125枚
運転席へ座った瞬間からシリアス。着座位置が高く、足元の空間が広いことを除けば、812 スーパーファストの雰囲気と重なるほど。ドライバーを取り囲むようにインテリアはデザインされ、刺激的で、自ずと運転への集中力を高める。
プロサングエは、全高が1586mmと大型SUVとしては低く、アストン マーティンDBX707より全幅は広い。ボディ四隅の感覚は、正直なところ掴みにくい。
運転席からの眺めも、DBX707なら路面を見下ろせるのだが、メーターカウルが視界を遮る。壮観なタコメーターは見やすいものの、日常的に運転しやすいとはいえないだろう。都市部では、素敵なホイールに傷を付けないよう、気疲れしそうだ。
296 GTBと同じデザインの、ステアリングホイールのタッチセンサーへ触れて、V12エンジンへ火を入れる。アイドリング時は、大きなボディが小さく震える。フェラーリに乗っていることを実感し、笑顔が溢れる。
ダッシュボード中央に大きなタッチモニターはなく、助手席側にワイドな10.0インチが備わる。エアコンなどには、ロータリーダイヤルが用意されている。シートには同社初となる、マッサージ機能が内蔵される。
魔法のようなマルチマチック・ダンパー
内装素材の品質は、このクラスの大型SUVとしては最高水準。ベントレー・ベンテイガにも勝るだろう。試乗車はブラックで統一されていたが、ブラウンを選べば、特別な空間に仕立てられると思う。パノラミック・ガラスルーフも選べる。
リアシートの広さは充分。若干閉じ込められた印象も伴うが、空間的には大きな不満はない。深く沈むように座るシートのおかげで、高性能なグランドツアラーに身を委ねているという、安心感がある。
そしてもちろん、性能には息を呑む。ダンパーには3段階のモードが備わるが、ソフトからハードへ変化するわけではない。姿勢制御の引き締まり具合や精度を、選択するモードだといえる。乗り心地は変化しないといっていい。
路面を問わず、どのモードでも良く機能する。ボディロールを増やし、スピード感を得るため、制御を緩やかにすることもできる。
マルチマチック社によれば、通常のダンパーとスプリングの組み合わせと比較して、最もシリアスなモードではロールやピッチを半分へ抑え込むことが可能だという。実際に体験してみると、想像以上に素晴らしい。
ダンパーは瞬間的に変化し、隆起部分を超えてもタイヤは平然としている。大きな窪みを進んでも、身構えるような振動は生じない。魔法のようだ。
鮮やかで高精度 本物のフェラーリといえる
試乗コースには、処理力の差が如実に現れるコーナーがあった。左に弧を描く緩やかな登り坂で、外側へ負荷を掛けつつ加速する区間の路面が、細かく波打っている。
DBX707では、入力に耐えきれずリアアクスルがラインを乱し、スタビリティ・コントロールの警告灯が点滅。ボディには、明確な揺れが伝る。ところが、プロサングエでは何事もない。波打っている事実にすら気付かないほど。
この落ち着いた制御が、ステアリングとシャシーバランスを輝かせるベースを作る。特にステアリングの印象は、鮮やかで高精度。本物のフェラーリといっていい。僅かに反応が重く、スローではあるが。
優れたシャシーバランスが生む操縦性もまた、明らかにフェラーリ。2.2tある車重が軽く転じることはないものの、これまで不可能だと思えた、高水準なSUVとスーパーカーを両立させたといっても過言ではない。
8速デュアルクラッチATには低めのレシオが与えられ、8250rpmのレッドラインまで公道で回せるのも喜び。車高は高めで、4シーターの空間を備えていながら、ドライビング体験は重層的といえる。ブレーキペダルは、踏み初めでやや敏感なようだが。
サスペンションのフィーリングは、自然ではないかもしれない。魔法のような仕事には、透明性が多少犠牲になるのだろう。
だとしても、システムの完成度は奇跡的。DBX707は、優れたエアサスペンションで乗り心地と操縦性を高次元にまとめているが、プロサングエはそれを凌駕する。
マラネロの実力が発揮された正当なフェラーリ
ただし、大型SUVとして、実用面での評価は別。ランドローバー・レンジローバーへ伍することを期待する人はいないと思うが、リアシートが付いた812 スーパーファストと考えても、間違いではないかもしれない。つまり、日常との親和性は高くない。
市街地では、扱いにくいと感じる場面が多いだろう。徐行速度でのアクセルレスポンスは褒めにくく、クリープ走行も若干安定しない。テールゲートを開くと荷室が現れるが、そこまで広いわけでもない。
DBX707も、お買い物へ好適とはいえないものの、遥かに容易に市街地へ紛れられる。洗練度は多少劣るかもしれないが、リラックスして運転できる。プロサングエほどの注目も集めないだろう。荷室はメルセデス・ベンツEクラス並に広い。リアシートも。
それでいて、今回のA712号線のような道では、負けないくらい最高に楽しい。お値段も、遥かに懐へ優しい。
とはいえ、AUTOCARとしてドライビング体験を評価するなら、新境地のプロサングエへ軍配が上がる。能力の幅が広い、マラネロの実力が遺憾なく発揮された、正当なフェラーリだといえる。
プロサングエとDBX707 2台のスペック
フェラーリ・プロサングエ(欧州仕様)
英国価格:31万3360ポンド(約5797万円)
全長:4972mm
全幅:2028mm
全高:1586mm
最高速度:310km/h
0-100km/h加速:3.3秒
燃費:5.8km/L
CO2排出量:393g/km
乾燥重量:2033kg
パワートレイン:V型12気筒6496cc自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:725ps/7750rpm
最大トルク:72.8kg-m/6250rpm
ギアボックス:2速オートマティック(フロント)/8速デュアルクラッチ・オートマティック(リア)(四輪駆動)
アストン マーティンDBX707(英国仕様)
英国価格:19万4550ポンド(約3599万円)
全長:5039mm
全幅:1998mm
全高:1680mm
最高速度:310km/h
0-100km/h加速:3.1秒
燃費:7.0km/L
CO2排出量:323g/km
車両重量:2245kg
パワートレイン:V型8気筒3982ccツイン・ターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:707ps/6000rpm
最大トルク:91.6kg-m/4500rpm
ギアボックス:9速オートマティック(四輪駆動)
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