サーキットをホームとする速さも忘れない
メルセデスAMGの新CEO、ミハエル・シーベ氏に2代目GTに対する意見を求めれば、9年前の初代をあらゆる面で改めた、革新的なモデルだと話すだろう。開発時のプレッシャーが、従来以上だったことは間違いない。
【画像】スーパーカーとグランドツアラーを両立 メルセデスAMG GT 63 競合モデルと写真で比較 全154枚
長年、高い評価を集めてきたフロントエンジンのスーパーカーを、高級グランドツアラーの領域へ拡大することが目指された。フラッグシップとして幅広い能力を備え、多様な顧客層へ響くモデルが狙われている。「GT」という、モデル名の通り。
2014年から2022年まで生産された、初代GTのオーナーからフィードバックを受けて、方向性が決められたという。季節を問わない長距離移動の快適性を追求しつつ、サーキットをホームとする速さも忘れていないと、シーベは説明する。
その実現のため、新しいGTはロードスターの新型SLとスペースフレームを共有する。四輪駆動となり、+2のリアシートを獲得した。ボディシェルは主にアルミニウム製だが、マグネシウムやカーボンファイバーも多用し、軽量化されている。
スタイリングには、初代GTへ通じる雰囲気が漂う。ロングノーズのプロポーションや丸みを帯びた面構成は、明らかにそうだろう。特有のアイデンティティがある。
ボディサイズは、全長4728mm、全幅1984mm、全高1354mm。広い車内空間を得るため、全方向で拡大した。車重は、初代から270kg増しの1895kg。前後の重量配分は、47:53から54:46へ前寄りになっている。
V8ツインターボで55は475ps 63は585ps
エンジンは、新しいSLと同じ。4.0L V8ツインターボガソリンで、GT 55では最高出力475psと最大トルク71.2kg-mを発揮。GT 63では、585psと81.4kg-mへ増強される。
インタークーラーは位置が変更され、吸排気系とオイルパンは新設計。クランクケースにも、ベンチレーション機能が追加された。エンジンマウントは、磁性流体を用いた可変式となる。
トランスミッションは、初代はトランスアクスルだったが、2代目はフロント側へ移動。湿式クラッチを採用した、9速オートマティックがエンジンへボルトで固定される。豊かなパワーを活かしきるため、4マティック+と呼ばれる四輪駆動が標準だ。
現時点では、電動化技術は導入されていない。もちろん、AMGは開発を進めている。
サスペンションは、前後ともアルミニウムが主な素材の5リンク・サスペンション。SLと同じく、スチールスプリングにアダプティブ・ツインバルブダンパーが組まれ、圧縮・伸長の減衰力が個別に調整される。
アクティブ・ライドコントロール・システムも搭載される。アンチロールバーは組まれず、フルード量を調整するアクチュエーターが、ボディの傾きを制御する。後輪操舵システムも標準。100km/hまでの速度域で、リアタイヤが最大2.5度まで切られる。
リアには、電子制御のリミテッドスリップ・デフとブレーキ制御によるトルクベクタリング機能も備わる。ドリフト・モードなど、多様なドライブモードも実装される。
新型SLと同じインテリア 大人なクーペへ
インテリアは、基本的にSLと同じ。ダッシュボード中央には、11.9インチのタッチモニターが鎮座。MBUXと名付けられたインフォテインメント・システムは、素早く滑らかに動作する。音声制御システムも優秀だ。
各所にレザーが充てがわれ、高級感を生んでいる。だが、場所によってはチープなプラスティック製部品も散見される。
頭上空間には余裕がある。リアシートは子供向けながら、この手のモデルとしては妥当だろう。背もたれを倒せば、荷室容量を321Lから675Lへ広げられる。
観察はこのくらいにして、運転してみよう。ステアリングホイールを握って5kmも走らない内に、GTの個性が変化したと気づける。
市街地では、V8エンジンはマイルドで、9速ATはスムーズ。アクセルレスポンスは従来よりリニアさを増し、パワーを調整しやすい。渋滞時も遥かに扱いやすくなった。
高性能なアクティブ・サスペンションによって、低速域でも乗り心地はしっとり。洗練され、大人なクーペへ変わったように感じる。
開けた道へ足を伸ばせば、動的能力に疑問の余地はない。ひと回り大きく重くなっても、GTは極めて有能。興奮のドライビング体験へ浸れる。改良を受けた4.0L V8ツインターボエンジンは、見事なレスポンスで回る。
ツインスクロールの2基のターボが本気で仕事をし出すのは、2500rpm以上から。圧倒されるトルクが中回転域からみなぎり、目眩しそうな加速が始まる。7000rpmのレッドラインまで勢いは上昇し、主張も増大していく。
内燃エンジンの音響的喜び 一体感と達成感
スポーティなドライブモードを選ぶと、エグゾーストから重厚な響きも放たれる。アクセルオフでのオーバラン時は、ドロドロ・バリバリとドラマチック。内燃エンジンの音響的喜びも堪能できる。
9速ATも優秀。マニュアル・モードへ切り替えると、従来のデュアルクラッチAT並みに鋭い変速を決めてくれる。先代から2段増えたことで、巡航時の平穏さにも貢献している。130km/hで走っていても、9速なら1800rpmで足りてしまう。
初代より流暢で落ち着きを増した、動的特性のバランスも秀抜。シャシーのハード面はSLと共通部分が多いものの、ホイールのオフセットやキャンバー角、サスペンションのレートなどが異なり、より強い一体感と達成感を生んでいる。
まずはステアリング。新開発の電気機械式ラックはフィードバックが増え、手のひらへ信頼できる感触を伝える。重量配分がフロント寄りになったことに加え、後輪操舵システムの絶妙な制御により、リアの反応も機敏だ。
四輪駆動システムが緻密にトルクを制御し、期待以上のグリップとトラクションを発揮。コーナーの入口から出口まで、安定性も飛躍的に向上している。路面をしっかり掴み、ドライバーへ大きな自信を与える。
アクティブ・ダンパーとアンチロール・システムが組まれたサスペンションは、従来を遥かに超える衝撃吸収性を叶えている。フラットな姿勢制御にも唸らされる。先代の弱点といえた、コーナリング中の凹凸の処理も改善。意欲的に頂点を狙える。
2つの役割を見事に両立した有能ぶり
路面状況やドライブモードを問わず、快適性も目覚ましい。2+2のシートレイアウトで、グランドツアラーへ望ましいパッケージングを得ただけでなく、長距離移動との親和性も高められている。なおかつ、ドライビング体験の魅力は失っていない。
乗り心地は洗練度を増し、穏やかなドライブモードでは上質。細かい乱れも、舗装の剥がれた穴も、巧みに均してみせる。スポーツ・モードでは、硬めに変化するとはいえ。
初代GTで指摘された、荒れた路面に若干翻弄されるような仕草も鎮められた。長時間の運転を、小さな疲労でこなせそうだ。
スーパカーとグランドツアラーとしての能力を同時に高め、その2つの役割を見事に両立させている。2代目GTの有能ぶりには、言葉を失ってしまう。市街地でも峠道でも、望み通りの動的特性を叶えている。
価格は、英国ではまだ明らかになっていない。SL 63は17万2000ポンド(約3113万円)だが、GT 63は16万ポンド(約2896万円)程度が見込まれている。
ちなみに、ベースを共有するV8ツインターボエンジンを積む、アストン マーティンDB12は18万8000ポンド(約3420万円)から。フラット6ツインターボのポルシェ911 ターボは、16万2000ポンド(約2932万円)。強敵の登場といえそうだ。
メルセデスAMG GT 63(欧州仕様)のスペック
英国価格:16万ポンド(約2896万円/予想)
全長:4728mm
全幅:1984mm
全高:1354mm
最高速度:315km/h
0-100km/h加速:3.2秒
燃費:7.4km/L
CO2排出量:319g/km
車両重量:1895kg
パワートレイン:V型8気筒3982cc ツインターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:585ps/5500-6500rpm
最大トルク:81.4kg-m/2500-5000rpm
ギアボックス:9速オートマティック(四輪駆動)
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みんなのコメント
GTのSUVなんか出ないんですかね??
オマージュと伝統で一切発展してなくて
魅力がない。
結局デザインも300SLの亡霊
コルベットですら進化させたのにfr執着
なんだかんだでSLしかりスポーツとは程遠い安楽仕様。
どうしてもFRというならアストンとフェラーリのほうが良いとなる。