カン違い、デマ拡散騒ぎの発端は?
text:Kumiko Kato(加藤久美子)
【画像】並行輸入でないと買えないクルマ スポーツカーからピックアップまで【5選】 全164枚
editor:Taro Ueno(上野太朗)
独立行政法人自動車技術総合機構(以下、自動車機構)は「並行輸入自動車の事前審査書面等の明確化等について ―並行輸入自動車審査要領の一部改正― 」を発表した。
自動車機構では、国民から広く意見を募ろうとしている。いわゆる「パブリックコメント」というもの。行政手続法にもとづく意見公募手続きのことだ。
自動車機構が示した改正内容に関して、早とちりやカン違いをする人が数多く出現。
並行輸入業者やレアな外国車オーナーの間で混乱が渦巻いている。
なお、「反対意見が1000通集まったら廃案になる」「反対意見を2000通集めないとこのまま改正案が通ってしまう」などは、完全なデマ情報である。
賛成/反対の数では、改正内容の方向性は決まらない。
AUTOCAR JAPANは「カン違い」「早とちり」で拡散されている誤った内容について、関係各所、関係者に取材した。
正しい情報を詳しくお伝えする。
そもそも並行輸入車とは?
海外の自動車メーカーや日本の正規輸入元(インポーター)や正規ディーラーを通さずに輸入/販売された輸入車のこと。
新車の場合、専門業者が海外のディーラーで購入したクルマを日本に販売する方式が一般的。
正規ディーラーでは販売されていない車種や仕様、グレードなどレアな外国車も購入できる。
拡散された情報 正否4項目まとめ
×:今年7月以降、並行輸入車がいっさい日本に入らなくなる
→一部の国から(後述するが、オーストラリアや中東など)の並行輸入は難しくなるのは確か。
しかし並行輸入車がいっさい日本に入らなくなることでは断じてない。
×:並行輸入車の継続車検が受けられなくなる
→今回の改正は、「並行輸入自動車審査要領の一部改正」となっている。
つまり、すでに審査を経て登録しているクルマに影響するものではない。
×:ホッドロッドなどのクラシックカーはいっさい輸入できなくなる
→これも、これまで通り変わりなくFMVSSのラベルやプレートが貼ってある車両であれば問題なく輸入できる。
とくに1951年(昭和26年)に道路運送車両法の保安基準が施行される以前に製造されたクルマであれば、道路運送車両の保安基準が施行される以前なので、年式と車名が確認できればOK(当時のコーションプレートやアメリカの車検証などで確認)
△:自動車メーカー等が発行した技術基準等の適合性を証する書面等(以下、技適)がないと並行輸入できない
→EU/アメリカ/カナダ「以外の国」からの輸入には技適などのメーカー発行書類が必要となる(後述)※ただし、ハイブリッド車やEVなど一部の車両は例外あり
EU/アメリカ/カナダからの並行輸入車は
ほとんどの並行輸入車はEU/アメリカ/カナダから輸入されている。
これらの国々からの車両に関して言えばこれまで通りと考えてよいだろう。
今回の改正については「技術基準等の適合性を証する書面等の取扱いの明確化等」を目的としている。
ポイントは以下3点となる。
今回はとくに多くの並行輸入に関わってくる、2について触れておく。
1. 技術基準等宣言書による適合性証明範囲の明確化
2. WVTAラベル等の審査の厳格化
3. 技術基準等の適合性を証する書面の統一化
2番の「WVTAラベル等」とは、WVTA(EU各国における保安基準 Eマークの取得が必要)の他には、FMVSS(アメリカの保安基準に適合)、CMVSS(カナダの保安基準に適合)が挙げられる。
これらのラベルが貼られた車両に関しては、これまで通り並行輸入が可能で何ら変わらない。
ただし、「審査の厳格化」(ラベルの内容を精査することや、提出書類が他のクルマのものではないか? などをしっかり確認する)がうたわれている。
過去、日本へ入って来た並行輸入車の中にはラベルの審査自体も厳格におこなわれていなかった実態もある。
並行輸入、厳しくなる可能性高の国は
日本に入ってくる並行輸入車の多くは、EU/アメリカ/カナダの保安基準に適合している。
いっぽう、これ以外の国や地域からの並行輸入が今後、厳しくなる可能性はある。
例えば、EU/アメリカ/カナダ以外の国から車両を輸入する場合はこれまでは、自動車メーカー等が発行する書類によって各種の適合を確認していたが、審査要領が改正されるとこの書類の確認が厳格になる。
自動車メーカーが単に発行するだけではなく、安全性を証明した書類の「原本」を揃えないと認められなくなる可能性が高くなるようだ。
事故が発生した際、責任の所在が取れない問題も出てくる。
先に記したWVTA、FMVSS、CMVSSのラベルがないこれらの国で販売されるクルマは、自動車メーカー等が発行した認証の書類が必要となるが、事実上並行輸入業者に対して自動車メーカー等からの正式な書類を発行することはほぼ不可能といわれている。
ゆえに、残念だがオーストラリアや中東、アジア諸国など、EU/アメリカ/カナダ以外の国からの並行輸入は現在のところかなりむずかしくなるだろうと考える関係者は多い。
しかし、一切できなくなるのか? というとそういうことでもない。
自動車機構に確認したところ、「ラベルがない国のクルマは、ラベル以外での確認も可能」との回答を得ている。こちらは別記事でまたお伝えしたい。
ところで、なぜ今回、審査要領が改正され、ラベルの確認や各種の書類が厳格化されるのか?
厳格化の背景「偽造書類」横行の事実
厳格化の目的は資料にもあるように、「並行審査要領については、的確で厳正かつ公正な審査業務の実施の観点から適宜見直しているところですが、今般、届出書等の一部として事前書面審査をおこなう『技術基準等の適合性を証する書面』が偽造されていた事案が発覚したこと、加えて、当局からも同種事案の再発防止が要請されていること」とある。
これはどういうことなのか?
厳格化の背景には、「技術基準等の適合性を証する書面」の偽造が関わっていたというわけだ。
例えば自動車メーカー等が発行する「技適」に関する書類や、FMVSSやWVTAなどのラベル。
排ガス検査の結果など、これらを偽造して日本の保安基準に適合させようとした事案があったと推測される。
それで、今回の審査要領の一部改正が提案される運びとなったのである。
EU/アメリカ/カナダからの車両に関してはこれまで通り正しい書類を用意すれば何ら変わることはない。
しかしすでに、おこりつつ問題もある。
現場、既に問題 並行輸入業者は嘆く
ある並行輸入業者は嘆く。
「ダッジ・チャレンジャーを並行輸入で登録しようとした際、2019と2020でFMVSSのラベルが違っているから現場でダメだと指摘されました」
「それで、最初、2020年車は登録ができなかったんですよ。2020年のラベルは怪しいと」
「ですが、他に輸入されたチャレンジャー(2020)も同じラベルが貼られているとのことで、ラベルの『写真を撮影して送ったらそれで良し』となり、登録ができたのです」
「しかし、今回、審査要領が改正されると、『写真は認めない』となるようです」
「原本で証明しろということですよね。原本はクルマに貼られているものですから実際は難しいでしょうね」
「現場で『これではダメ。このラベルが正規に発行されたものであることを自動車メーカーに証明してもらってください』といわれたら、わたしたちはお手上げです」
「日本の並行輸入業者に対してフォードやGMが認証を発行するなどありえないでしょう」
このような現場でのトラブルは他にもある。
正しいはずのラベルが運輸支局によって判断が異なって登録できないことも……。
正しいラベルが貼られていると思って輸入した車両が車検の現場で「正しくない」「疑義がある」と判断された場合や、古くて欠損したりかすれたりして文字が読みにくいラベルなどへの対処方法については、今後取材を深く掘り下げて別途、記事を書きたいと思う。
審査要領を改正するならば、全国どこの運輸支局で統一した判断基準を厳格に作るべきだろう。
パブリックコメント 3/21まで
なお、パブリックコメントは3月21日まで募集している。
再度書くが今回の改正は並行輸入車を一律に締め出すこととはまったく違うので正しい理解のもとに送信して欲しい。
また、冒頭に書いたように「反対意見が1000通集まったら廃案」などはデマなのでこちらも要注意。
改正内容と事情を理解したうえで要望を出すのが良いだろう。
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