英国のEV事情
環境規制や社会情勢、価値観の変化といった要因から、特に欧州ではクルマの電動化が推奨されている。しかし、EV(電気自動車)の購入は、未知の領域に足を踏み入れるかのように感じられるかもしれない。
【画像】欧州でよく売れる小型EV【プジョー、フォルクスワーゲン、ルノーの主力モデルを写真で見る】 全46枚
欧州ではEVの購入についてどのように考えられているのか。信頼性や航続距離、充電コストなど、本誌AUTOCARの地元である英国の事例を紹介したい。
EVの故障、信頼性は?
EVは内燃エンジン車よりも可動部品が少ないため、故障が少ない。
例えば、モーターの可動部品は1個で、回転運動を伝えるシャフトのみ。これに対し、エンジン車では約2000個に相当する。
AUTOCARの姉妹誌『What Car?』の信頼性調査によると、フォルクスワーゲンeゴルフは、同世代のエンジン搭載のゴルフよりもトラブルが少ないという。
英国のEV専門エンジニアリング会社ラルフ・ホシエ・エンジニアリングの創業者ラルフ・ホシエ氏は、「EVの信頼性は極めて高い。壊れることはほとんどありません。壊れることがあっても、たいていはすぐに直せます。例えば、バッテリーパックのリビルドは、エンジンよりもずっと早くて簡単です」と語る。
英国自動車協会(AA)で道路政策の責任者を務めるジャック・カズンズ氏は、EVの故障で最も多い出動理由は「タイヤと12Vバッテリー」だとした。
カズンズ氏はまた、EVは「最も安全なクルマの1つであり、最新の車両安全技術が搭載されている」として、スマート#3、ニオET5、フォルクスワーゲンID.7などの車種がユーロNCAPの衝突テストで最高評価5つ星を獲得していることを挙げた。
ユーロNCAPは欧州で最も厳しい衝突テストとして知られ、そこで5つ星を得るのは簡単なことではない。しかし、一部の車種で低評価を下されていることも忘れてはならない。
航続距離の心配は?
欧州で販売される一般的なEVの航続距離は160~480kmだ。現在、最も脚の長いEVの1つがメルセデス・ベンツEQSで、1回の充電で727km走る。一方、非常に短いシトロエン・アミは74kmだ。
言うまでもなく、航続距離を心配すべきかどうかは各人の移動距離に左右される。英国自動車工業会(SMMT)の技術革新担当責任者であるデビッド・ウォン氏は、本誌の取材でこう語っている。
「英国人の平均的な走行距離は週に160km強です。EVの平均的なバッテリー航続距離は、1回の充電で370km以上で、多くのドライバーが一般に使用する分には十分です。さらに、家庭用充電器を設置することができれば、エンジン車よりもEVの方が便利だと感じるでしょう」
しかし、自宅に充電器を設置できない場合、どこで充電するかという「充電不安」が襲ってくる。
この点について、充電インフラ企業グリッドサーブ社のトディントン・ハーパーCEOは、「EVで当社の充電ステーションに来ていただければ、もう心配はありません。非常に短期間のうちに、英国全体が非常に充実したサービスを受けられるようになるのは間違いないでしょう」と語っている。
天候も懸念材料の1つだ。気温が低い場合など、航続距離が大幅に短くなる可能性があるからだ。グリッドサーブ社の調査によると、氷点下になると航続距離への影響は10%から20%程度になるという。
しかし、バッテリーの効率性と寿命が向上すれば、この問題は解消されると考えている。
どのような充電器が使えるか?
コネクターの種類は交流(AC)と直流(DC)に分けられる。低速のACコネクターには、英国で標準的な3ピンプラグやタイプ1、タイプ2のコネクターがあり、高速のDCコネクターにはCCSやテスラ独自のスーパーチャージャーがある。
原則として、BMW、アウディ、メルセデス・ベンツなど欧州の自動車メーカーのEVは、低速のタイプ2充電器と急速充電用のCCSコネクターを使用し、ヒョンデやキアといったアジアのメーカーは、タイプ1とチャデモ(CHAdeMO)を使用する。チャデモは少し古い車種に多く、英国では最近あまり使われていない。
150kWの急速充電器で一般的なEVを充電する場合、空の状態から満充電まで約30分かかる。一部の350kWの充電器は、10分で160km分を充電できるものもある。
ベーシックな7kWの公共充電器を使用した場合、満充電まで約8時間、22kWの充電器を使用した場合は約3時間かかる。
充電料金はいくらかかる?
利用する設備にもよるが、英国ではガソリンや軽油を入れるよりも充電した方が安くなることがある。
ガソリンや軽油の場合、普通のファミリーカーで1マイル(1.6km)あたり19~21ペンス(約35~39円)かかると予想されるが、夜間に自宅で充電する場合、1マイルあたり3ペンス(約5円)で済む。
スタンダードな公共充電器では、1マイルあたり14ペンス(約26円)、満充電でおよそ26ポンド(約4900円)となる。急速充電器は通常1マイルあたり18ペンス(約34円)、満充電で33ポンド(約6200円)である。
英国でよく知られるグリッドサーブ社は、79ペンス/kWhのDC急速充電器と49ペンス/kWhのAC充電器を展開している。
EVは安く買えるのか?
中古車市場で安価なEVを手に入れることができ、今後も車種の多様性は広がっていくだろう。例えば、SMMTは英国における中古EVの販売台数は「この1年で倍増した」と言う。
本稿執筆時点で、英国で最も安い中古EVは、第一世代の日産リーフとルノー・ゾエであり、それぞれ6万~8万km走行した個体で約5000~7000ポンド(約95万~130万円)から購入できる。
ルノー・ゾエは新車時、バッテリーのリースプランと8年間または10万マイル保証が付いていたので、保証期間内であればそれもついてくる。
リースでは購入後の経済的メリットも小さくない。日産リーフ、プジョーe-208、ヴォグゾール・コルサ・エレクトリックの初期レンタル料は500ポンド(約9万5000円)以下で、月々の支払いは300ポンド(約5万5000円)以下が期待できる。
社用車(カンパニーカー)として導入する場合、EVの現物給付税(BIK)率は、同クラスの内燃エンジン車よりもはるかに低く設定されている。例えば、本稿執筆時点では、EVのBMW i4 eドライブ40 Mスポーツが2%であるのに対し、ディーゼルの320dは30%である。
このような制度は各国に存在し、EVの普及を支えているが、恒久的なものではない。補助金や減税措置が廃止されると、販売が大きく減速してしまうという懸念もある。
代わりにハイブリッド車はどうか?
ハイブリッド車というと、日本ではフルハイブリッド(ストロングハイブリッドとも呼ばれる)が多く普及しているが、欧州ではプラグインハイブリッド(PHEV)やマイルドハイブリッド(MHEV)が一般的だ。
フルハイブリッドは内燃エンジンに電気モーターを組み合わせたもので、バッテリー残量が減ったり、パワーが必要になったりするとエンジンが始動する。エンジンがかかるまでの短い距離を電力だけで走行することができる。
プラグインハイブリッドも基本的には同じだが、充電はエンジンだけでなくコンセントなどの外部電源からも行うことができる。バッテリー容量も比較的大きく、電力だけでより長い距離を走行することができる。フル充電で30~60km程度走行でき、車種によっては100km以上走れるものもある。
マイルドハイブリッドは、従来のスターターモーターとオルタネーターの代わりとして電気モーターを使用する。発進時など燃料を多く消費する動作において、エンジンの負担を減らすことができる。
メーカーや車種によって細部の仕組みと役割に違いがあるものの、いずれにしてもこうしたハイブリッド車は、完全なEVの所有に踏み切れない人にとって電動化への足がかりとなっている。
エンジンはいつまで存在する?
内燃エンジンは、主要なパワートレインとしての時代は終わりつつある、という考えが広まっている。
これについて、グリッドサーブ社のトディントン・ハーパーCEOは、「わたしはEVの大衆化が実現すると考えています。当社のデータで、月に20万台近くを充電しているというのは、以前と比べれば驚異的なことです。そしてこの数字はどんどん増加しています。エンジン車が長く走ることにも一定の意味があると思いますが、その場合はネット・ゼロの法規制を満たし、ゼロ・カーボン燃料で走る必要があります。今日、これらの燃料は非常に高価です」と語っている。
アルピーヌやケータハムのような小規模なメーカーは、大企業ほど排ガス規制が厳しくないため、ある程度はエンジン車の生産を続けることができるだろう。フェラーリのようなブランドは、エンジンを存続させる方法としてeフューエルなどの合成燃料に注目している。
一方、クラシックカーは、合成燃料や電気で走るようにパワートレインを改造するという手段もある。古いモデルは、現代車ほど構造が複雑でないため、このような改造が容易である。
しかし、いずれにしても欧州では、エンジン車に乗り続けるためには高いコストが必要となる。
結論 – EVは買うべきか?
身の回りの環境さえ整っていれば、思い切って購入すべき、というのがAUTOCAR英国編集部の見解であった。
充電ネットワーク(または家庭用充電器)が充実しているか、充電に関する知識(充電速度に応じた充電時間など)を身につけているか、そして主に通勤用として1台欲しいかどうか。それはつまり、条件に当てはまらない場合は購入を見送った方が賢明かもしれないということだ。
欧州では少なくとも2035年までの間、EVはエンジン車ほど維持費や税金を負担する必要がない。中古車市場も顕著に成長しており、予算に見合った1台を見つけやすい。しかし、乗り換え時期がまだ適切でないと感じる人にとっては、ハイブリッド車がちょうどいい折衷案となる。
複数社の査定額を比較して愛車の最高額を調べよう!
愛車を賢く売却して、購入資金にしませんか?
複数社の査定額を比較して愛車の最高額を調べよう!
愛車を賢く売却して、購入資金にしませんか?
愛車管理はマイカーページで!
登録してお得なクーポンを獲得しよう
みんなのコメント
まるで誰かに頼まれて書いたような内容ですね。
とんでもない記事だ。だーれも買わんから安いんだよ