いよいよ3月9~10日に迫った2024年全日本スーパーフォーミュラ選手権の開幕。前年王者こそ不在ではあるものの、FIA F2王者から“現役女子高生ドライバー”まで、話題の注目ルーキーが参戦するほか、メーカー・チームを移籍したドライバーも多い。また、共通ダンパーが導入されることなどにより、これまでの勢力図が動く予感も漂う注目のシーズンとなりそうだ。
ここでは2月21~22日に鈴鹿サーキットで開催された公式合同テストを前にした『メディアデー』でのドライバー・監督らの発言をもとに、今季体制の変更点や注目ポイントなどをチームごとにまとめ、連載していく。
TGM Grand Prix、松下信治の2024年スーパーフォーミュラ起用を発表。Jujuと2台体制に
今回はJujuこと野田樹潤の参戦で開幕前から多くの注目を集めているTGM Grand Prix だ。
■TGM Grand Prix 2024年スーパーフォーミュラ参戦体制
・ドライバー:Juju(No.53)/松下信治(No.55)
・チーム代表:池田和広
・ドライビングアドバイザー:野田英樹
・チームアドバイザー:岡田秀樹
・チーフエンジニア:平野亮(No.53)/星学文(No.55)
・エンジン:ホンダ/M-TEC HR-417E
・公式サイト:
https://www.servusjapan.com/
■開幕戦直前に松下信治の起用が決定
2023年は大湯都史樹とジェム・ブリュックバシェを擁して戦ったTGM Grand Prix(最終ラウンドでは大湯に代わって大草りきを起用)。大湯が2回のポールポジションを獲得するなどして存在感をアピールしたものの、決勝での最高位は3位1回のみとなり、チームランキングでは9位にとどまっていた。
2024年シーズンに向けては、2023年12月の合同/ルーキーテストから“現役女子高生ドライバー”Jujuを起用して話題を呼んでいる。JujuはF1でも活躍したレーシングドライバー、野田英樹の娘。2006年2月生まれの18歳だ。
Jujuは幼少期から地元の岡山国際サーキットを中心にフォーミュラをドライブし、2020年には渡欧。デンマークF4や女性のみのフォーミュラカーレースだったWシリーズなどに参戦し、2023年はユーロフォーミュラ・オープンで優勝、さらにイタリアで開催されていたジノックスF2000トロフィーでダラーラ320を使ったクラスでのチャンピオンを獲得するなど、ミドルフォーミュラで実績を積んできた。
12月のテストを経て、年明けにはTGMからの参戦が正式決定。2月に18歳を迎えたばかりのJujuは、日本のトップフォーミュラ初の日本人女性ドライバーとなるだけでなく、最年少参戦記録も更新することになる。
一方の55号車については、ラウル・ハイマンが2月の鈴鹿テストに参加したもののシート確定には至らず、その行方が注目されることになった。
チームは開幕が目前に迫った3月5日、2023年までB-Max Racing Teamからエントリーし、12月のテストにTGMから出走していた松下信治の起用を発表、これにより2024年スーパーフォーミュラに参戦するすべてのドライバーが確定することとなった。
チームを率いる池田代表は「我々TGM Grand Prixは、昨年できた新興チームです。去年は予選ポールポジションなど、ちょっと活躍する場面も見せられたのですが、残念ながら決勝では目立った成績を残せませんでした。今年は新しくドライバーふたりを変えまして、どこまでいけるかというチャレンジの年になると思います」と語る。
体制面では、エンジニア陣に変更が加えられた。昨年53号車のチーフを担当していた上城直也エンジニアが同車のパフォーマンスエンジニアを担当し、53号車のチーフにはベテランの平野亮氏が抜擢された。これは、経験の浅いJujuをいかにしてサポートするか考えた結果、より経験豊富な平野氏が適任と判断された結果だという。
一方、松下の55号車では、ここ数年は「2台をまとめるポジションとして働くことが多かった」星学文氏がチーフエンジニアを務める体制となった。
■「一歩一歩成長することはできると思う」とJuju
2023年12月のテストでは、トップから2.243秒差というベストタイムを記録していたJujuは、2回目となる2月の鈴鹿テストを前に、春からの日本大学スポーツ科学部への入学も発表。「男性が多く活躍するこのレース界で、女性ドライバーである自分がなぜこれまで結果を残すことができているのかを知ることで、さらにドライバーとしての力を成長させることができると期待しています」と、学業とレースの両立に熱意を燃やす。
スーパーフォーミュラ挑戦の経緯についてJujuは「参戦できるかもしれないというお話しをいただいたときには、自分にとってすごく大きなチャレンジになると感じました」と語る。
「ただ、それ以上に、自分にとってすごくたくさんのことを学べる素晴らしいチャレンジだと思ったので、参戦することができるならしたい、ということで、冬のテストを受けました。F1と同じように画面越しで見るようなカテゴリーだったので、参戦が決まったときは感動に近いものもありました」
国内最高峰カテゴリーに挑戦するにあたり、Jujuは一歩ずつ着実にステップを踏んでいく慎重な姿勢に徹している。
「国内トップドライバーたちが集まってきて、海外からもすぐにでもF1に行って活躍できるようなドライバーが集まってくる。そういったレベルの高いカテゴリーに参戦するので、最初から『勝ちます!』とは簡単には言えない世界だと思います。ただ、チームのみなさんのサポートのおかげで一歩一歩成長することはできると思うので、そこでしっかりと学んで、みなさまに成長を見せられたらなと思います」
これまでに乗っていたF3車格のミドルフォーミュラからのステップアップに際しては「比べものにならないダウンフォースとパワー」があり、「すごく難しいけど、思っていた以上に楽しいクルマ」だとJuju。2月のテストではコースオフやクラッシュも経験したが、「クルマに対しても自信が持てているので、前回は不安で攻めきれていなかった部分も今回はぜんぜん行けました。コーナリング中にリヤが滑ったりしても踏んでいけるような感じにはなり、ビッグパワーのマシンにも慣れてきたかなと思います」と走行後に語っており、マシンへの順応は確実に進んでいるようだ。
池田代表は「若さが最大の魅力」とJujuを起用した理由について語る。
「日本人女性としても初めてのチャレンジですので、どこまでいけるかという期待が一番大きいです。また、彼女が活躍することによって、既存のモータースポーツファンだけでなく、新規に魅力を感じてもらえる人たちがどんどんん増えていくと思います。そういったところでファンを増やすことが、私たちの役目なのではないかと思っています」
すでにテストの段階からピット裏には多くのファンが詰め掛け、多数の一般映像媒体が取材に訪れるなど、その“成果”をあげつつあるTGM Grand Prix。コース上だけでなく、さまざまな面から注目が集まるシーズンとなりそうだ。
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