大分県のオートポリスで行われたENEOSスーパー耐久シリーズ2023 Supported by BRIDGESTONE第4戦『スーパー耐久レース in オートポリス』の決勝レース。ST-Xクラスは14号車中升 ROOKIE AMG GT3(鵜飼龍太/蒲生尚弥/平良響/片岡龍也)がフルコースイエロー(FCY)導入のタイミングで1号車HELM MOTORSPORTS GTR GT3(鳥羽豊/平木湧也/平木玲次)を逆転し、今季2勝目を飾った。
最後のピットストップで運を味方につけて勝利を呼び込んだ14号車と、序盤からレースをリードしつつも、最後は運に見放されて今季初勝利を逃した1号車。レース後の両チームの雰囲気は対照的だった。
スーパー耐久第4戦は中升 ROOKIE AMGが逆転で今季2勝目の総合優勝。HELM GTRは悔しい2位
■明暗が分かれた113周目のセクター3
今回の5時間レースでは、スタートから1号車のHELM GT-Rが好調な走りを披露。平木湧也が務めた第1スティントでは23号車TKRI松永建設AMG GT3の先行を許すも、1回目のピットを終えたところでトップに返り咲いた。
開始2時間20分のところで他クラスの車両と交錯してスピンを喫したものの、終始安定したペースで2番手に対して30秒近いリードを築いた1号車。優勝は確実だろうと思われていたが、チェッカーまで残り1時間20分を切った113周目、セクター3の上りセクションでST-5クラスの120号車倶楽部MAZDA SPIRIT RACING ROADSTERがコースオフ。さらに最終コーナー付近ではST-2クラスの7号車新菱オートDIXCELエボ10がストップしたのだ。
この影響でFCYが導入され、その直前にピットインした14号車が大きくタイムを稼ぎ、FCY解除後にピットインした1号車を逆転。14号車はチーム監督も務める片岡がアンカーとして走り、今季2勝目を飾った。
「ちょうどセクター3にいて『ストップ車両がいる』と連絡が入りました。そうしたら、ちょうどグラベルに埋まっている車両が見えました」と語るのは、14号車の第3スティントを担当していた蒲生だ。
「ピットのウインドウも開いていて、燃料的にも(最終のピットストップに)入れる状態だったので、FCYが出そうならピットインしようということは事前に打ち合わせていました」
FCYが出たのは蒲生がピットロードの速度制限が始まるラインを超えた直後。まさにギリギリのタイミングだった。
これには片岡も「アクシデントに備え、いつでも(ピットに)入れる準備はしていますけど、ここまでドンピシャのタイミングでは来ないです。23号車とも20秒ないくらいの差で走っていましたし、FCYが出そうなので2台同時にピットインする予定でいましたが、結果的に僕たちは入れて23号車は入れませんでした。1号車もそこで入れなかったので、俄然有利になりました。やはり、チームみんなの日頃の行いがいいんじゃないですかね(笑)」とコメント。
14号車はまさに運を味方につけた逆転勝利だったことは間違いない。しかし、今回は55kgのウエイトハンデを搭載していたこともあり、純粋なレースペースではライバルの先行を許していたことは否めない。そこは片岡も課題として認識している。
「かなり1号車も23号車も速いなかで、その部分に対して我々はライバルと比べてパフォーマンス的に課題が残っている状況です。今回もその部分を何とかしようと思い(オートポリスに)来たんですけど、まだ少し足りないです。一発の速さはなんとかいけますけど、レースラップがもうひとつですね」
この第4戦を終えて合計93ポイントまで伸ばした14号車。ランキング首位を争う1号車との差を13.5ポイントまで広げたのだが、次戦は85kgものウエイトを搭載することになる。片岡はそれらを加味し(ポイントに関しては)もてぎで並ばれる可能性はあると思います」と断言。
「今回もそうですし、24時間レースも結果的には勝てました。ですが、いろいろな流れのなか、トラブルやミスなく、というところで獲っただけで、常にスピード面で少し物足りない状態です。ただレースをうまく運べているので、比較的結果は出せているのかなと思います。こういった運を味方につけて勝つことができれば、シリーズを通してチャンスが広がるのかなと思います」と現状を分析していた。
■「ガッカリです……」優勝を逃し落胆のHELM平木兄弟を鳥羽が鼓舞
一方、完璧に近いレース運びをみせていながら、FCY導入のタイミングで最終ピットの機会を逸してしまった1号車のHELM MOTORSPORTS GTR。歓喜に沸く14号車陣営とは打って変わり、“落胆”にも似た雰囲気が1号車ピットに漂っていた。
特にエースドライバーでありチームを牽引する立場にある湧也は「ガッカリです……」と元気ない一言だけに終わった。いつもは細かく丁寧にコメントしてくれているだけに、表現しきれないほどの悔しさを感じているのが、こちらにも伝わってきた。
FCY導入直前の段階で14号車の約28秒前方を走っていた1号車。第3スティント担当の玲次によると、コースオフ車両がいるという一報が入った段階では、すでにピット入口付近まで到達していたとのこと。「グラベルに車両が止まっていると連絡が来たのは、僕が最終コーナーを立ち上がってからでした。14号車は僕たちの30秒くらい後方にいたので、恐らく彼らは(ピットインするか否かを)考える時間があったのだと思います」と肩を落とした。
Aドライバーの鳥羽も「最終コーナーに入るタイミングであれば判断がついたかもしれないですけど、最終コーナーを立ち上がった後だったので……」と悔しい表情をみせていた。しかし「本当に前を向いて頑張るしかないです。ポイント争いも細かいことを考えないで、ポールポジションを獲ってトップを狙っていくしかないです!」とコメントし、落胆から立ち直れない様子の平木兄弟を鼓舞していた。
次回のモビリティリゾートもてぎは、ファクトリーが近いHELM MOTORSPORTSにとって地元コースになる。ニッサンGT-RニスモGT3との相性という面で少しの不安要素もあるようだが、ランキングトップの14号車と比べると45kg軽いウエイトハンデで臨めるだけに、次回こそ目が離せない存在になることは間違いないだろう。
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