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【F1第13戦無線レビュー(2)】「どうしてピットインしたんだ」最速ラップをめぐってボッタスとチームが対立

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【F1第13戦無線レビュー(2)】「どうしてピットインしたんだ」最速ラップをめぐってボッタスとチームが対立

 2021年F1第13戦オランダGPの決勝レースでは、マックス・フェルスタッペンとルイス・ハミルトンによる優勝争いが繰り広げられた。レース後半を迎えると、角田裕毅にはパワーユニットのトラブルが発生。終盤にはバルテリ・ボッタスがチームの指示を無視してファステストラップを狙っていった。そんなオランダGPを無線とともに振り返る。

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2位ハミルトン「戦略の失敗がなくても、フェルスタッペンに勝つのは難しかった」メルセデス/F1第13戦決勝

 レース20周目から21周目にかけて、マックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)とルイス・ハミルトン(メルセデス)が次々にピットイン。バルテリ・ボッタス(メルセデス)が首位に浮上した。

 26周目、フェルスタッペンはボッタスの3秒7後方にいた。背後からは、ハミルトンがコンマ4秒以上速いペースで迫っている。担当エンジニアのジャンピエロ・ランビアーゼがフェルスタッペンに「プッシュしろ」と指示した。

ランビアーゼ:ボッタスはフリーエアで(1分)15秒8だ。追いついて抜くのが重要だ

 ボッタスの担当エンジニア、リカルド・ムスコーニも檄を飛ばす。

ムスコーニ:レースの勝利のために、ここが踏ん張りどころだ

 しかし30周目のターン1で、フェルスタッペンはボッタスを抜いていった。ボッタスはすぐにハミルトンに順位を譲り、遅ればせのピットインに向かった。フェルスタッペンの1秒近くまで迫っていたハミルトンだったが、周回遅れに邪魔され、その差は再び3秒近くまで広がってしまう。

ハミルトン:周回遅れで、ものすごくラッキーだったね

 タイヤ交換を終えたボッタスは、再び3番手でコースに復帰した。

ムスコーニ:タイヤを使い切ってもいい。ウインドウ内にとどまるんだ。

 34周目の時点で首位フェルスタッペンとボッタスの差は約25秒。ピットロスタイムは公式には26秒とされ(実際は21秒程度か)、そのウインドウ内にいればフェルスタッペンの2回目ピットインの際、彼を抑えられるというのだ。

 しかしフェルスタッペンもペースを上げ、ボッタスとの差を広げていく。

ランビアーゼ:あと4、5周、全開で行け

 この無線がメルセデスに対する陽動作戦だったのか、ハミルトンは予定より早い39周目に2度目のピットインに向かった。直前のギャップは2秒6だったが、フェルスタッペンが猛然とプッシュ。一方、ハミルトンはアウトラップで遅いクルマに引っかかり、「何でこんな場所に出したんだ」と、文句たらたらだ。

 40周目にピットインしたフェルスタッペンは、ハミルトンの3秒以上前で悠々とコースに復帰した。ただしハードタイヤに交換したことに、フェルスタッペンは疑問を呈した。

フェルスタッペン:ほんとにハードでいいの?
ランビアーゼ:ああ。フェラーリのペースを見る限りはね
 一方ハミルトンは、レッドブルに対する仕掛けが早すぎたんじゃないかと疑問を呈した。

ハミルトン:(2度目のピットのタイミングは)アドバンテージがなかったんじゃないか。早すぎたと思う

 ハミルトンの文句は、その後も延々と続いた。

ハミルトン:このタイヤで、かなり長く行かないといけないんだよね?
ピーター・ボニントン:わかってる。ちゃんとモニターしてるから

ハミルトン:前のタイヤ、ずいぶん残ってたのに、どうして早く入ったんだ?
ボノ:それは後で話そう

ハミルトン:このタイヤ、最後まで持たないよ!

 48周目、角田裕毅(アルファタウリ・ホンダ)が「ノーパワー!」と叫びながら、緊急ピットイン。そのままリタイアとなった。

 後半50周目以降、1分13秒台のペースを安定して刻む首位フェルスタッペンにハミルトンも必死に追いすがり、54周目にはその差は2秒以内に縮まった。しかしすぐに3秒に広がるという展開。ハミルトンの口からも、さすがに弱気な言葉が漏れる。

ハミルトン:あいつら遠すぎる!
ハミルトン:タイヤがギブアップだ!

 ここでボノが、ひとつの提案をした。

ボノ:このタイヤで最後まで走り切ろう。そして最後にファステストを出すんだ
ハミルトン:これ以上レースしないということか? いや、できるだけプッシュを続けたい
ボノ:わかったよ、ルイス。このまま行こう

 その言葉通り、ハミルトンは1分13秒台前半のラップタイムを連続する。ところがパワーが思うように出ない。

ハミルトン:パワーカットが起きてる
ボノ:わかった。チェックしよう。いや、PUは問題ない

 PUの不具合は杞憂だったようだが、60周目前後からハミルトンのペースはさすがに落ちていった。

ランビアーゼ:(ハミルトンとの)タイム差は3秒8だ。もうタイヤが終わってるんだろう

 終盤67周目、ボッタスに「ボックス」の指示が飛び、2度目のピットイン。中古ソフトに履き替えた。ボッタスにしてみれば当然、ファステストを狙うつもりだった。ところがムスコーニからは、こんな指示が。

ムスコーニ:ファステストは、狙うな
ボッタス:なぜだ?
ムスコーニ:ルイスが最後にフリーストップをするからだ
ボッタス:じゃあどうしてピットインしたんだ
ムスコーニ:安全上の懸念からだ。タイヤが垂れていたからね

 ピット滞留時間が5秒と長かったのも、ハミルトンにフリーストップのギャップを与えるためだった。しかしボッタスには、とうてい納得のいかない指示だった。かまわずプッシュを続け、69周目のセクター1、セクター2と最速タイムを更新し続けた。すると戦略担当チーフのジェームズ・ボウルズが無線に割って入った。

ボウルズ:バルテリ、ジェームズだ。ファステストのトライを中止するんだ

 ボッタスはセクター3でようやく減速したものの、それでもハミルトンの持っていたファステストよりコンマ6秒近く速い1分12秒549を出してしまう。

 ハミルトンはチェッカー2周前の70周目にピットイン。最終72周目に1分11秒097のファステストを叩き出した。そしてその間にフェルスタッペンは、2位ハミルトンに20秒以上の差をつけてチェッカー。後半戦2連勝を達成したのだった。

ランビアーゼ:成熟したドライブだった
フェルスタッペン:素晴らしい戦略だったよ

ハミルトン:彼らが速すぎた。今日も、今週末全体もね
ボノ:モンツァで雪辱だ

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