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F1 Topic:去りゆくヒュルケンベルグへ駆け寄ったあるドライバー

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F1 Topic:去りゆくヒュルケンベルグへ駆け寄ったあるドライバー

 2019年のF1最終戦アブダビGPは、2020年のシートを獲得することができなかったニコ・ヒュルケンベルグにとって、F1ドライバーとして最後になるかもしれないレースだった。そのため、グリッド上ではルノーのスタッフがヒュルケンベルグに感謝の意を込めて、ヒュルケンベルグの髪型を模したカツラをかぶって記念撮影を行い、最後になるかもしれないレースに臨んだ。

 しかし、そのレースでヒュルケンベルグは入賞圏内を走行しながら、立て続けにオーバーテイクを許して、ポイント圏外でレースを終えた。レース後にドライバーたちがやってくるミックスゾーンには大勢のメディアがヒュルケンベルグの生を聞こうと集まったが、ヒュルケンベルグはなかなかやってこない。

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「何か、祝福でも受けているのだろうか?」と思いながら、目の前にやってきた表彰台を逃したほかのドライバーたちのインタビューを聞く。しかし、彼らが一通り通り過ぎて行った後も、ヒュルケンベルグがミックスゾーンに姿を見せることはなかった。

 しばらくして、トップ3のドライバーたちがミックスゾーンに姿を現したときだった。ようやく、広報に連れられて、ヒュルケンベルグがやってきた。いったい、何があったのか?

「いや~、参ったよ。ドーピングに引っ掛かったちゃった(笑)」

 最後のレースになるかもしれないが、検査は検査。ドーピング・テストの中立性の高さを改めて感じたハプニングだった。

 そのドーピング検査のおかげで、ヒュルケンベルグは表彰台を獲得したドライバーたちと同じタイミングで、メディアの取材をミックスゾーンで受けることとなった。まずはテレビ局が集まる場所へ行き、取材を受けるヒュルケンベルグを遠目に見ながら、待っていると、たまたま隣同士になったマックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)がヒュルケンベルグの肩を叩いて10年間の活躍を称えていた。

 われわれ紙媒体のメディアが集まる一角にヒュルケンベルグがやってきたのは最後のこと。非常に穏やかな表情で記者たちの質問に答えるヒュルケンベルグの元へ、もうひとり労いに来たドライバーがいた。それは、ルイス・ハミルトン(メルセデス)。ふたりには、ちょっとした因縁があった。

■ニコ・ヒュルケンベルグにとって千載一遇のチャンスだった2012年のブラジルGP
 ヒュルケンベルグは出走177回でポールポジションを1回、フロントロウ2回、そしてファステストラップも2回記録しているが、177戦出走して、一度も表彰台に上がることなかった。この記録はF1史上最多となる、ある意味、不名誉なものなのだが、そのヒュルケンベルグが最も表彰台に近いレースだったと語るのが、2012年のブラジルGPだ。

 このレースは雨がらみとなり、途中雨用のタイヤに交換する中、ドライタイヤで走り続けたジェンソン・バトンとヒュルケンベルグの2台がライバル勢を大きく引き離し、19周目にはヒュルケンベルグがバトンをかわしてトップに浮上するという展開となったのだ。

 その後、3番手のハミルトンが31周目にバトンを抜き、49周目にはヒュルケンベルグもかわしてトップに浮上。しかし、ヒュルケンベルグは55周目の1コーナーでペースが上がらないハミルトンに再び接近する。ここでヒュルケンベルグは迷わず、ハミルトンのインに飛び込みトップ再浮上を狙ったが、走行ライン以外はまだ濡れていたためマシンを滑らせてハミルトンと衝突。ヒュルケンベルグはレースを続行できたが、ドライブスルーペナルティを科せられ、優勝だけでなく、表彰台も逃した。

 あのとき、ハミルトンと衝突していなければ、ヒュルケンベルグの表彰台は確実だったと、当時所属していたエンジニアは語る。しかし、ヒュルケンベルグは接触したハミルトンに恨みはないし、自分が行ったレースに悔いはないと言う。

「『抜ける』と思ったときに、オーバーテイクができないようなら、レースなんかやめたほうがいい。もちろん、一勝もできず、表彰台にも上がれないままF1を去ることに満足はしていない。でも、僕は自分のレース人生を後悔はしていない」

 握手を求めてきたハミルトンに、快く応じたヒュルケンベルグ。その笑顔には、7年前のオーバーテイクを後悔している様子は微塵も感じられなかった。

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