300台以上の出場マシンがフランスの峠道を荘厳なラン
フランスのラリー・モンテカルロ・ヒストリック(Rallye Monte-Carlo Historique 2020/1月29日~2月5日)に参戦していた「Team Roman(チーム浪漫)」が無事イベントを終えた。勝負ごとの常、何があるか分からない。世界選手権とはまた違った、ラリー競技により培われてきた伝統のラリー文化継承とも言える意味合いがあるイベント、そこには勝ち負けだけではない何かがあるようだ。
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無事ゴールに辿り着く、それがラリーの使命
最高峰のモンブランで有名なヨーロッパ・アルプス山脈、その最南端地域の地中海海岸沿いにモナコ王国の都市、モンテカルロがある。ここを拠点として今年88回大会を迎え長く続いてきた、モータースポーツで最も注目を集めてきたイベントのひとつにモンテカルロ・ラリーがある。世界ラリー選手権の開幕戦としてトヨタ、ヒュンダイ、フォードといった自動車メーカーの威厳を見せつけるようなスピードラリーのシリーズ戦が始まっている。
その1週間ほど後に開催されたのが、ラリー・モンテカルロ・ヒストリック2020。東京大学とホンダテクニカルカレッジ関東の学生たちの共同プロジェクトで1年間活動を続けてきた「チーム浪漫」による、プロジェクト参戦10年目の挑戦だったが、残念ながら上位陣には入り込めなかった。
チーム浪漫は、♯23日産 チェリークーペ、♯27トヨタ TE27 カローラ レビン、♯86トヨタ TE27 スプリンター トレノ、♯87トヨタ TE27 スプリンター トレノ、♯89ホンダ SB1 シビックという5台が挑戦。しかし、初日からトラブルに見舞われてしまった。
競技は閉鎖されたスペシャルステージでの最速を争うものではなく、決められたコース区間を指定された走行時間との差異がないように走るものだが、コドライバーが走行スピードの指示をドライバーに出すための情報を得る自前で製作して調整準備してきたデバイス、ラリーコンピュータが電源不良に。自分の車がどこに位置するのかの精度が低かったため、目標時間とのズレが生じてしまったそうだ。そのためチェックポイントでの減点に繋がってしまった。また、日産チェリーのデバイスが動かないトラブル、レビンのクラッチが切れないという症状も現れてしまった。
「時間を争うラリーの競技の中で極力競技に支障をきたさないようにうまく整備を行っていきます。競技はあと3日弱ですが……」と中盤での苦しい状況を語ってもいたチームスタッフ。
ゴールに向かう試練を克服するだけ
『これでは精度が低すぎて使えない』という厳しい言葉をチームドライバーたちからもらいながらも、一丸となってのトラブル対処は続き、悩まされたデバイスの車速信号の誤った検出などはクリアされてゆく。
初日に順位を200番以上も落としてしまったチームの各車だったが、最終的には30位以上のポジションアップで競技終了。プロジェクトが始まって以来続いていた全車完走は達成され「ホッと安心しました」という学生たちの気持ちだが、込み上げるものがあった。
「1年間かけて作り込んだ車が無事にゴールまでたどり着き、その瞬間、これまでやってきたことが一気に頭を駆け巡りました。昨年4月にプロジェクトを始めたときに見て心躍らされたモナコ・ゴール時の写真の光景が、そのまま目の前に広がっていて、とても感動した」と。
「好成績を収めるという目標を掲げさせていただきましたが、そちらの目標を達成することができませんでした。学生一人一人がその悔しさと反省を胸に抱いていると思います」
悔しさと喜びが入り混じるゴールだった。
フランスのラリー銀座で交流が続く
ラリーの伝統を踏襲する人気イベントは、全参加車両も300台を超えていた。1911年から1980年までのモンテカルロラリーに参戦していた車両が参戦許可を与えられているので、参戦車両を見ても日本でも人気が高いdランチア・ストラトス、アルピーヌルノーA110、ポルシェ911SC、ルノー5アルピーヌ、アウトビアンキA112アバルトなどが目白押しで参戦している。
世界最高峰のヨーロッパラリー界で名声を得ているウォルター・ロール、ブルーノ・サビーなども参戦して賑わっていた。サビーはルノー5アルピーヌで総合4位の結果を残している。
総合優勝はビヤゴーのフォード・エスコートRS2000Mk II、2位はフェルナンデス・ラファエルのランチア・フルビアHF、3位はゾリーラ・カルロスのVWゴルフGTIだった。
チーム浪漫の参戦車は、ホンダ SB1 シビック 131位、トヨタ TE27 スプリンター トレノ 145位、トヨタ TE27 カローラ レビン 150位、日産 チェリークーペX-1R 180位、トヨタ スプリンター トレノ 235位。なお、フェアレディZで参戦していた日本人参戦者の池内さんも153位の成績を残している。
チーム浪漫の学生スタッフたちは、スポンサーのひとつでもあるタイヤメーカーのジャンパーの装束でサポートを続けてきた。ラリー界では目立つダンロップの黄色のジャンパーでもあり、先々のお店やホテル、街道沿いでは”何をしてるの?”との問いかけも多かったという。
ラリーの活動をサポートしている日本の学生チームだと説明すると非常に驚かれ、写真を求められること多々。歴史あるラリー車に群がるミツバチのようなサポート軍団は、国際交流を深めてもいった。ゴール後の4位ブルーノ・サビー選手との一緒の写真、世代を超えた交流そのものも見てとれた。
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