6月8~9日の週末にベルギーの世界的名トラック、スパ・フランコルシャンを舞台に開催されたTCRヨーロッパ・シリーズの第3戦は、公式練習から予選にかけて上位ランカーの名手たちによるクラッシュが頻発する波乱の展開に。さらなるアクシデントが続いた難トラックでのレース1は、ジル・マグナス、サンティアゴ・ウルティアのアウディRS3 LMSがワン・ツー。レース2はジュリアン・ブリシュ(プジョー308 TCR)が勝利し、新たなポイントリーダーとなっている。
2019年の2シーズン目から主催団体に変更を受けたTCR UKとの併催イベントとして開催されたTCR EU第3戦は、そのイギリスからワイルドカード枠として2017年BTCCイギリス・ツーリングカー選手権王者のアシュリー・サットンが参戦。
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BTCCではFRのスバル・レヴォーグGTをドライブするサットンだが、これまでもFK8ホンダ・シビック・タイプRなどでTCRシリーズに参戦した経験を持ち、今回もチームWRTのフォルクスワーゲン・ゴルフGTI TCRのステアリングを握ることが決定。WRTとVWモータースポーツは2020年からの採用を予定する“C-ECU”と呼ばれるスタンダードECUのプロトタイプをサットン車に搭載し、データ収集に励むことになった。
このC-ECUはWTCR世界ツーリングカー・カップの開幕2戦でSLR(セバスチャン・ローブ・レーシング)も搭載していたもので、当初は10kgのBoP(バランス・オブ・パフォーマンス)バラストを載せていた。しかしその後に軽減措置を受け30kgが削減されたが、今回のWRTサットン車はシリーズエントリーしていないことと、申請期限後のレイトエントリーによるペナルティなどから60kg+20kgのバラストを搭載してのレースとなった。
そのベルギーでの週末最初のセッションとなるフリープラクティス1で最速を記録したのは、前戦勝者でもあるJSBコンペティションのブリシュで、続くフリープラクティス2はジミー・クラレットがトップタイムとなり、プジョー308 TCR勢が好調さを披露。しかし、このセッションが残り10分となったところでブリシュがコースオフしクラッシュ。308 TCRのフロントセクションとボディサイドは大きくダメージを受け、その後のセッション参加も危ぶまれる事態となってしまう。
すると、その後の予選でもクラッシュの連鎖が続き、この時点で選手権首位に立っていたターゲット・コンペティションのジョシュ・ファイルズ(ヒュンダイi30 N TCR)がQ1で大クラッシュ。直前にコースオフを喫していたTeam Clairet Sportのテディ・クラレット(プジョー308 TCR)と同様にラディオンでコントロールを失いフロントを大破し、これによりQ1は2度の赤旗の末にセッション終了。アクシデントの余波を受けたチームメイトのアンドレア&ジェシカのバックマン兄妹がQ1敗退となってしまう。
遅れて開始されたQ2は、最終的にComtoyou Racingのマグナスが地元ベルギーで自身初となるTCRヨーロッパのポールポジションを獲得。フロントロウに同じくアウディのチームWRT、北米シングルシーター出身のウルティアが並ぶグリッドとなった。
土曜午後のレース1スタートを前に、ウォームアップ走行では予選5番手タイムを記録していたサットンが操るゴルフGTIのエンジンに火が入らず、ピットレーンに押し戻される一幕や、セカンドロウ3番手を記録していた初代TCR UK王者のダン・ロイド(FK8ホンダ・シビック・タイプR TCR)が最速タイム抹消で18番グリッドに降格するなど動きがありつつ、9ラップのバトルがスタートした。
フロントロウに並ぶアウディ2台が順当にダッシュを決め後続を引き離しに掛かるのと対照的に、セカンドロウ3番手発進のチームWRT、マキシム・ポティ(フォルクスワーゲン・ゴルフGTI TCR)が悪夢のスタートで飲み込まれ、オーレリアン・コンテ(プジョー308 TCR)、ブリシュ、ジミー・クラレット、そしてマット・オモラ(ヒュンダイi30 N TCR)の背後7番手にドロップ。
するとこれが引き金となりマルチバトルが勃発し、シケインでのコンテとブリシュのプジョー対決では、両者もつれあったままコースオフを喫してスローダウン。さらに後方でもテディ・クラレットが他車と絡んでクラッシュを喫し、早速のセーフティカー(SC)導入となる。
SC隊列のスロー走行中にピットでリペアを終えたブリシュのみ2周遅れで復帰すると、4周目のリスタート以降も各所で肉弾戦が展開され、中団ではWTCRと掛け持ち参戦するトム・コロネル(FK8ホンダ・シビック・タイプR TCR)がジャンニ・モルビデリ(フォルクスワーゲン・ゴルフGTI TCR)らとポジションを激しく入れ替えてのバトルを展開する。
迎えたファイナルラップでは最後の表彰台争いも激化し、ポティとコンテがペナルティすれすれの攻防劇でポジションを奪い合い、ポティが最後の最後で自身のスタートグリッド位置を奪還すると、同ラップの後方ではJSBコンペティションのプジョー308 TCRをドライブするフランス出身のティーンエイジャー、リル・ウォードがセアト・クプラTCRと絡んで激しくロールオーバー。
スタブロー手前で4回転したマシンはルーフを下にしてグラベルトラップに転がる大事故となったが、彼女はすぐにメディカルセンターに運び込まれたのち近郊の救急病院にも搬送され、腕にケガを負ったものの翌日にはサーキットに戻り、パドックに無事な姿を見せている。
その日曜レース2のグリッドには、エンジン交換とボディ修復を経たファイルズのヒュンダイも復帰し、ドゥサン・ボルコビッチ(ヒュンダイi30 N TCR)がリバースポールからスタート。
しかしこのレース2も前日を上回る大荒れの内容となり、レーススチュワードは5件以上の審議を抱える事態となり、複数の接触と2件のジャンプスタート疑惑の裁定がレース後まで持ち越されることに。
最終的にトラック上でのすべてのアクシデントを回避したブリシュが今季2勝目を飾り、グリッド上で最もタフでクレバーなドライバーであることを証明。2番手にはジミー・クラレットが続きプジョーのワン・ツーかと思われたが、チェッカー後にボルコビッチ、ウルティアとの接触によりペナルティが課されてドロップ。繰り上げ2位にオモラが続き、アンドレアス・バックマンが最後のポディウムを獲得。4位にC-ECUテストながらさすがの好走をみせたサットンが入り、プジョーのコンテが続くトップ5となった。
この結果により新たな選手権リーダーにブリシュが浮上し、13点差でマグナス、さらに11点差でコンテが続くランキングとなったTCRヨーロッパ・シリーズ。次戦ラウンド4はオーストリア・レッドブルリンクを舞台に、7月12~14日に開催される。
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