6月3日(月)、アルピーヌF1はプレスリリースを発表し、エステバン・オコンが2024年シーズン限りで同チームを離れることを明かした。2025年に向けて、オコンにはどのような選択肢が残されているのだろうか?
F1モナコGP決勝でオコンがチームメイトのピエール・ガスリーと接触し、ブルーノ・ファミン代表が厳しい口調で非難してからわずか1週間。オコンのアルピーヌ離脱が公のモノとなった。
■ハース小松礼雄代表、オコンとの交渉を認めるも「大勢の内のひとり。興味を持ってくれる人なら、拒絶することはない」
この発表のタイミングからすると、この一件の影響を受けているようにも思えるが、モナコGP開幕時点では既に放出が決定していた可能性の方がはるかに高い。
2020年からチームの前身であるルノーに在籍し、2021年ハンガリーGPではアルピーヌブランドにこれまでで唯一のグランプリ勝利を届けたオコンだが、チーム離脱の可能性は実は数週間前から浮上していた。
既に契約満了まで1年という中で、アルピーヌは最悪の形でシーズン開幕。オコンとしても何も決まっていないという状況だったと言わざるを得ない。そして、徐々に離脱という選択肢が具体化しつつあった。
そして3日にオコンのアルピーヌ離脱が正式発表された。オコンが他チームへ移籍するのか、それともF1を離れるのか……オコンは「将来のことはすぐの発表する」としているが、どちらに転ぶのか定かではない。ここでは現実的な選択肢を概観してみよう。
ハース
この記事を執筆している時点では、ハースがオコンにとって最も可能性の高い選択肢だ。
ハースからは既に“リーダー格”のニコ・ヒュルケンベルグがザウバー(2026年からはアウディ)移籍のため離脱することが決まっており、もうひとりのケビン・マグヌッセンにはリーダーの素養がないと見られている。
そうした状況の中、2025年からは現在FIA F2参戦中であり、フェラーリのリザーブドライバーを務めるオリバー・ベアマンがハースへ加入する可能性が非常に高いと言われるが、オコンはF1での141回出走という経験を活かし、チームリーダーとしてハースを牽引することもできるかもしれない。
ただモナコでの一件が悪評を呼ぶ結果となったことから、オコンがどのようなチームプレイヤーになれるかという疑問は残る。2024年シーズン序盤戦でヒュルケンベルグのポイント獲得のためにマグヌッセンが自身のレースを犠牲にしたように、ハースにとってチームプレイヤーを迎え入れるというのは明らかに重要なことだ。
この点はチームオーナーのジーン・ハース、それ以外はオコンを気に入っている小松礼雄代表との話し合いにおける最後のハードルとなるかもしれない。
チームプレイヤーに関する疑問を除けば、オコンはハースにとって最良の選択肢のようにも見えるが、ハースはRBの角田裕毅を含む他のドライバーとも交渉を行なっているのは間違いない。ただ、今季好スタートを切った角田はレッドブル陣営と契約を延長する可能性が高まっているように見える。
アウディ
オコンがハースとの契約交渉を急がない理由のひとつが、ザウバーを買収して2026年からF1に新規参入するアウディの存在であることは確かだ。アウディがオコンに興味を持っているのは今に始まったことではない。
しかしアウディは別のターゲットも視野に入れている。それがカルロス・サインツJr.。メルセデスのルイス・ハミルトンが2025年からフェラーリへ移籍することとなったことで退団が決定したサインツJr.を第一候補としているのだ。ただサインツJr.に関しては、ウイリアムズも獲得を目論んでいる。
サインツJr.がどのような選択をするにせよ、2026年に到来する新レギュレーション時代を前に、優勝争いから遠く離れた2チームのどちらかに自身の将来を賭けることになる。サインツJr.は当面の間、いかなる交渉にもオープンな姿勢を取っており、アウディとは1年契約+オプションでの契約を希望している。そうすることで、2025年末にマックス・フェルスタッペンが噂通りレッドブルを去ったり、メルセデスがジョージ・ラッセルとの契約を更新しなかったりした場合、ビッグチームのシートに滑り込むことができるかもしれないのだ。
サインツJr.の事情だけでなく、オコンのモナコでの一件に対しては、アウディF1チームのCEOとなるアンドレアス・ザイドルも良い顔をしていない。ヒュルケンベルグのチームメイト候補はサインツJr.やオコン以外にも存在し、現在キック・ザウバーのドライバーとしてチームに所属するバルテリ・ボッタスや周冠宇のどちらかが残留する可能性も否定できない。
そのためアウディの動向を見守ることは、オコンにとってチャンスよりもリスクの方が大きいと考えられる。
ウイリアムズ
ウイリアムズは先日、アレクサンダー・アルボンと複数年の契約を結んだことを発表。一方でF1参戦2年目を迎えたローガン・サージェントは来季の契約を掴めていない状況だ。
ただ、オコンがウイリアムズに加入する可能性は非常に低い。特にチーム代表のジェームス・ボウルズは、オコンを高く評価している訳ではないようだ。
2020年にオコンがメルセデス候補と有力視しされていた頃、ボウルズ代表はメルセデスで戦略責任者務めていたが、チームはボッタスの残留を決めた。
オコンの経歴を考えれば、まだウイリアムズのドライバー候補リストに残っている可能性は高いが、リストの一番上に名前が載っているとは考えにくい。
メルセデス
メルセデス育成出身のオコン自身は現在もメルセデスと「親密な関係」にあると語っており、今でもオコンのマネジメントをメルセデスが部分的に行なっている。
ただ、オコンがメルセデスへ行くかもしれないという理由はこの繋がりしかなく、2025年に“シルバーアロー”に乗るチャンスを掴む可能性は非常に低い。
前述の通り、メルセデスからは今季限りでハミルトンが離脱することが決まっているものの、チームはその後任候補を発表していない。しかし現在F2参戦中のメルセデス育成ドライバー、アンドレア・キミ・アントネッリが最有力として見られている。
F1から離れる可能性も
現時点でオコンには複数の選択肢があり、F1グリッドに残る可能性も十分にある。しかし2018年にオコンが経験したように、F1ドライバー市場のイス取りゲームでは一瞬で不利な状況に追い込まれることもありえる。
それを考えると、様々な関係者の中で来季に向けた話し合いが進められている今、モナコで起きた一件の重みを過小評価すべきではない。将来の雇い主候補によって精査されるこの時期に、チームの利益を損ねかねるような結果を招いたことが、不利に働くというのは明らかだ。
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