この記事をまとめると
■全日本ジムカーナのPE2クラスに20代の女性ルーキードライバー3名が参戦
トップレーシングドライバーが語るジムカーナの魅力! レース派も腕を磨くのにもってこいの競技だった
■ベテランドライバーとタッグを組み、AT車を使って戦うのが大きな特徴だ
■2ペダルジムカーナの普及、次世代ドライバーの発掘と育成などが目的となっている
女性ルーキードライバーがAT車でジムカーナに挑む
2024年の全日本ジムカーナ選手権が3月15~17日、栃木県のモビリティリゾートもてぎ南コースを舞台に開催された。16日の第1戦、17日に第2戦が開催される“ダブルヘッダー”で、国内最高峰のジムカーナシリーズが開幕したのだが、そのなかでもっとも注目を集めていたのが、同大会でデビューした3名の女性ドライバーだといえるだろう。
いずれも20代のルーキーで、吉川萌衣選手、東美里選手、芳賀絢音選手の3名が2ペダル車両を対象にしたPE2クラスにチャレンジ。そして、この3名が参加しているプロジェクトが「チャレンジPE2プログラム2024」、通称“CP2”で、次世代ドライバーとして全日本ジムカーナ選手権にチャレンジしたのである。
CP2は長年に渡って全日本ジムカーナ選手権で活躍してきた河本晃一選手が2024年に創設したプロジェクトで、2ペダルジムカーナの普及、次世代ドライバーの発掘と育成、そして一般ファンが楽しめるコンテンツ配信を目的に、3名の女性ドライバーの活動をサポート。このルーキードライバーたちを支えているのが、河本選手を含む3名のマスタードライバーたちで、ダブルエントリーを行いながら、ルーキーたちのスキルアップを行なっている。
2024年はCP2より3チームが参戦しており、Team EASTよりルーキーの吉川選手とマスタードライバーの河本選手がマツダ・ロードスターで参戦。Team WESTよりスバルBRZでエントリーしているのがルーキーの東選手とマスタードライバーの高屋隆一選手で、Team E&Wよりルーキーの芳賀選手、マスタードライバーの有田光徳選手がマツダ・ロードスターでEP2クラスに参戦した。
「大学の自動車部でジムカーナをやっていたんですけど、結果を残していないので、最初は自分でいいのかな……と思いました。でも、ジムカーナファンを増やしたいという趣旨に賛同できましたし、自分もジムカーナを好きになりたいと思いました」とTeam EASTの吉川選手が語れば、「モータースポーツに関わりがなかったので自信はなかったんですけど、成長しながらジムカーナの魅力を広めていきたいと思いました」とTeam WESTの東選手、「軽自動車の耐久レースに参戦した経験はあるんですけど、ジムカーナは初めてです。ジムカーナは難しいけれど、最終戦のころにはもっと速くなりたいと思います」とTeam E&Wの芳賀選手が語るように、3名のルーキーたちは前向きで、マスタードライバーたちのアドバイスを受けながら15日の練習走行から積極的な走りを見せていた。
そして、16日の第1戦でCP2のルーキーたちは全日本ジムカーナ選手権にデビュー。この3名の女性ドライバーで最上位につけたのが、「金曜日の練習走行のほうが緊張していたので、1本目は落ち着いて走れました。いまの経験のなかではベストな走りができたと思います。2本目はセッティングを変えたこともありますし、突っ込み過ぎたところもあってタイムが上がりませんでした」と語る芳賀選手で、第1ヒートで1分29秒344をマークし、クラス5位で完走した。
これに続いたのが、「ロードスターに慣れてない部分もあって、全体的に自分の持ち味の“勢いのある走り”ができませんでした」と語る吉川選手で、第1ヒートで1分31秒408をマークし、クラス6位で完走。
一方、東選手は第1ヒートで1分37秒042をマークしたが、「1本目はコース通りに走れたんですけど、探りながらのドライビングで車速を上げることができませんでした。2本目は車速を上げて行こうとしたんですけど、いき過ぎてしまってミスコースしてしまいました。かなり悔しいです」と語るように、第2ヒートでミスコースを演じてしまい、クラス7位に終わることとなった。
ちなみにルーキードライバーとペアを組んでいたマスタードライバーたちは、第2ヒートで1分23秒607をマークしたTeam WESTの高屋選手が2位、第1ヒートで1分24秒329をマークしたTeam EASTの河本選手が3位で表彰台を獲得したほか、第1ヒートで1分26秒490をマークしたTeam E&Wの有田選手もクラス4位で完走した。
これからの成長に期待大!
こうしてルーキードライバーにとって三者三様の開幕戦となったが、翌17日に行われた第2戦では、3名ともに素晴らしい走りを披露していた。
この日のコースは前日とは異なる設定となっていたのだが、第1ヒートでTeam EASTの吉川選手が女性ドライバーの最上位となる1分35秒601をマーク。一方、第1ヒートでミスコースを演じていたTeam E&Wの芳賀選手も、「1本目は最初にミスをしてそこから焦ってしまいましたが、2本目は気持ちを切り替えて突っ込み過ぎないように走りました。タイムを残せて良かった」と語るように、第2ヒートでは1分33秒104をマークし、2戦連続で女性ドライバーの最上位となる5位でフィニッシュした。
これに続いて「金曜日まで迷走していたんですけど、今日は何も考えずに走ったら上手くいきました」と語るようにTeam EASTの吉川選手も第2ヒートで1分34秒229と自己ベストを更新して6位で完走したほか、第1ヒートで1分44秒079に出遅れていたTeam WESTの東選手も、「1本目にできなかったことを2本目にアジャストすることができました。気持ちよく走れました」と語るように、第2ヒートで1分35秒868と大幅なタイムアップにより7位で完走している。
ちなみにマスタードライバーに目を向けると、第2ヒートで1分27秒862をマークしたTeam WESTの高屋選手がCP2の初優勝を獲得したほか、第2ヒートで1分29秒081をマークしたTeam EASTの河本選手が3位で表彰台を獲得。第2ヒートで1分30秒578をマークしたTeam E&Wの有田選手も4位でフィニッシュした。
「自分自身、リズムよく走れました。東選手も走るたびによくなっていましたからね。第1戦はミスコースがあって悔しい思いをしたけれど、第2戦は楽しく走れたようなので良かったと思います」とTeam WESTの高屋選手が語ると、Team E&Wの有田選手も「自分はあくまでもルーキードライバーのサポートなんですけど、河本選手に差をつけられましたね。第1戦では第2ヒートでセッティングを変えたことが裏目に出てしまいましたが、芳賀選手は走るたびによくなっていたのでよかったと思います」とコメント。
さらに、Team EASTの河本選手も「1本目でミスコースをしていたのでマスタードライバーとしてお手本を示すことができなかったんですけど、なんとか2本目でタイムを出せたのでほっとしました。それに吉川選手はもてぎに来てから2回、浮き沈みがありましたが、ピークで終われましたので良かった。このもてぎ戦を通じてルーキーの3名は第2戦で一気にタイムアップしたので良かったと思います」と語る。
モータースポーツの初心者にとって、アクセルを全開にしたり、ブレーキをロックさせるほど強く踏み込むことは、男女を問わず難しいことだが、全日本ジムカーナ選手権にデビューしたCP2の3名は、ルーキーながら積極的な走りを披露していた。しかも、まったくタイプの異なるドライビングだが、3名ともに第2戦の第2ヒートでタイムアップを果たすなど、着実にスキルアップを果たしていたことも印象深い。
完熟歩行でマスタードライバーと真剣な表情でコースをチェックしたり、スタート前には筆者が撮影していることに気が付かないほど、イメージトレーニングに集中するなど、彼女たちのジムカーナへの取り組み方は本格的だ。その一方で、競技が終わった後の晴れやかな表情はとても清々しい。
このTeam CP2の活動はSNSや動画サイトを通じて随時、リポートされていく予定となっているので、3名のルーキードライバーがいかに成長していくのか、その動向に注目したい。
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