8月9日(金)から11日(日)にかけて、オーストラリアのビクトリア州を拠点に、2024年オーストラリア・ラリー選手権(ARC)の第4戦『ギップスランド・ラリー』が開催され、大竹直生/竹藪英樹組(トヨタGRヤリス)がクラス3位、総合7位で完走を果たした。
TOYOTA GAZOO Racing(TGR)は、『人材育成』と『モータースポーツを起点としたもっといいクルマづくり』の実践を目的に全日本ラリー選手権(JRC)に参戦しており、2024年シーズンはJN-1クラスと、JN-2クラス内のMORIZO Challenge Cupに参戦している。
トヨタGR、全日本ラリーと豪州ラリー選手権の相互交流を開始。育成の大竹直生がARC挑戦へ
今回、TGRの全日本ラリー選手権チーム(TGR-WRJ)は世界各地域のラリーを学ぶため、これまで現地で成績を残してきたTGRオーストラリア(TGRA)とニール・ベイツ・モータースポーツ(NBM)と相互交流を開始し、初戦としてARC第4戦『ギップスランド・ラリー』に出走した。
マシンはトヨタGRヤリス、クルーはTOYOTA GAZOO Racing WRCチャレンジプログラムの2期生である大竹と、コドライバーの竹藪が務めた。さらにTGR-WRJから3名のメカニックが現地へ向かい、TGRAとNBMの協力をもとで参戦が実現した。
日本から持ち込まれたトヨタGRヤリスはJP4仕様(JRCにおけるJN-1クラスに適用され、JAF日本自動車連盟から公認される車両)で、セッティング調整も含めた約150kmの事前テストを国内で実施。さらにオーストラリアでも現地テストを行ったが、この時大竹がコースアウトした際にクルマに大きなダメージを負ってしまった。しかし、日本人メカニックがエンジン交換を含めた作業を行い、TGRAとNBMの協力もあって無事に修理を終えてスタートを迎えることができた。
ギップスランド・ラリーのスペシャルステージ(SS)は、硬い地盤をベースとした高速コーナーや、川渡りを含む路面などの激しいグラベル(未舗装)路が特徴となる。
レッキ(コース試走)を終えた大竹選手は「ハリー・ベイツ選手をはじめ、オーストラリアのスタッフの皆さんともコミュニケーションを取ることができました。まずはしっかりと全SSを走り切りたいです」と目標を語り、準備を整えた。
ラリー初日、大竹は慎重にスタート。南半球の季節は冬のため、SSの路肩には雪が残る部分があったものの、走行を重ねるごとにペースを上げた大竹はSS6でクラス3番手タイムをマークし、クラス3番手に順位を上げた。
さらに、SS7ではクラス2番手タイムを刻む速さを見せ、ラリー初日をクラス3番手、総合9番手で走り切っている。
「一部の路面は雪解け水で濡れているなど、コンディションの変化はありましたが、クルマを完璧に直していただき、良いペースで走ることができました。竹藪選手とのコンビネーションも深まり、ラリーが終わってほしくないと思えるほど楽しく走れました」と振り返る大竹。
迎えたラリー最終日にはコンスタントにクラス2番手タイムをマークし、サービスを挟んだ午後のセクションも危なげなく完走。初出場ながらもプロダクションカップ・クラス3位、総合7位で完走を果たした。
今回の相互交流では、TGRAのハリー・ベイツとコーラル・テイラーのコンビが9月5日(木)から8日(日)に北海道の帯広で開催される全日本ラリー選手権第7戦『ラリー北海道』への参戦を予定している。
■「チームとしても最高の結果」ドライバーおよびメカニックコメント
●大竹直生(ドライバー)
「クラス3位を得られたのは、チームとしても最高の結果になったと思っています。テストでコースアウトしてしまいましたが、スタートまでにしっかりと修理していただきました。まずはチームの皆さん、そして協力して頂いたオーストラリアの皆さんに、心から感謝したいです」
「最終日のSSは路面が荒れており、川渡りもあるなど、速く走るだけでなく、いかにクルマを労わるかも考えました。ラリーを通してクルマとの一体感を得られましたし、本当に学びの多いラリーになりました」
●丸田智(チーフメカニック)
「今回のオーストラリア遠征は、メンバーにどのような役割をもたせ、どのような経験をつませたいかという、人選検討から始まりました。そして、オーストラリア現地から情報をいただいて、できる限りの準備を行なって挑みました」
「現地でのサービスに関しては、NBMのサポートのもと、豊岡監督も含めた日本から遠征した4人で行っています。印象的だったのは、NBMのチーム力と高い判断力です。修理時のサポートも含めて、彼らの協力があったからこそ、完走できたと考えています。彼らから得た学びは、日本に戻ってチームメンバーと共有していきたいです」
●田中直樹(メカニック)
「オーストラリアは日本車が多く、会場の雰囲気、チームとお客さんの関係など、とてもフレンドリーで盛り上がっていることが印象的でした。これまで経験の少ない補器類や吸排気系の装着などに不安がありましたが、それでもオーストラリアの皆さんからのサポートもあり、スタートに間に合わせることができました」
「私たち日本人は恥ずかしがってしまうことが多いのですが、オーストラリアでは壁をつくらずに助け合っていたことが印象に残っています。私自身も自分から人を助けられるようになりたいと感じました」
●古市准也(メカニック)
「日本では車両リーダーとして活動しています。広大な土地を舞台に、ゆったりとした時間が流れるなか、観客だけでなくチームやクルーもリラックスしてラリーを楽しんでいるように感じました。サービスではNBMのメカニックの皆さんの能力の高さに驚きました」
「時間内に作業を終わらせるために、各作業に向けた準備、そして素早い判断など、自分たちに足りないところがたくさん見つかりました。今回、エンジンの載せ替えという大きな作業がありましたが、これまで未経験の工程も多く、とても良い経験になりました。この経験を活かして、車両リーダーとして、良い雰囲気のチーム作りを行なっていきたいと思っています」
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