キドニーグリルが追加されたフロントマスク
レッドのクーペは、ハンス・グラース2600 V8と同じくグラハム・ジャフス氏がオーナーのBMWグラース1600 GT。ハンス・グラース1300 GTや1700 GTから転じたモデルで、ツイン・ソレックスの1600tiエンジンを搭載する。
【画像】吸収されたハンス・グラース フレイザー・ナッシュ-BMWと同時期の英国クーペ、エランも 全76枚
ボディは当初のフルア・デザインのまま、キドニーグリルが追加してある。1967年にBMWが同社を買収して以降、1968年6月までに1298台が生産された。1990年代にZ3が登場するまで同社では途絶えることになる、コンパクトなクーペだ。
南アフリカで販売され、18年前にジャフスがカーコレクターから購入したという。2600 V8より小柄で美しく運転しやすいため、80歳を迎える彼にとっては大切なモデルだと話す。
「BMWのドライブトレインが載っているので、ハンス・グラース時代のモデルより扱いが簡単。今後も維持したい1台ですね」
エッジの立った2600 V8が堂々とした佇まいなのに対し、1600 GTは可憐で愛らしい。ボンネットを開くと、BMWの1.6L 4気筒エンジンが傾けられて搭載されている。空間に余裕はなく、エアボックスが大きい。
2600 V8の方は、エンジンが比較的コンパクトに見える。ジャフスは冷却ファンを追加し、ラジエーターの容量も増やしたという。
長いドアを開くと、2600 V8は大人4名が問題なく乗れる4シーダーだとわかる。1600 GTは2+2のシートレイアウトだが、実際は+1程度の広さしかない。
共通点が殆どないドライブフィール
2台とも快適なドライビングポジションを取れ、運転席側は足もと空間にも余裕がある。ステアリングホイールが大きく、視界は良好。特に2600 V8の方はレザーとクロームメッキで仕立てられたダッシュボードが低く、金魚鉢のように全方向を見渡せる。
細部の作り込みも、より洗練されている。ずらりと7枚もメーターが並んだパネルは、カーブを描き確認しやすいだけでなく、鑑賞対象としても優れている。ステアリングコラムから伸びるレバーは、メルセデス・ベンツ230 SL用のものらしい。
発進させると、2台には共通点が殆どない。2600 V8のサウンドは心地良い。滑らかにパワーが生み出され、低回転域でも粘り強い。穏やかに運転するのに丁度いい反面、V8エンジンへ期待するような太いトルク感はない。
ゲトラグ社製の4速MTは、サクサクと気持ち良く変速できる。刺激は薄く、リアタイヤを空転させることは難しいようだ。
アクセルペダルを踏み込むほどに、ツインチョークが徐々にガソリンの供給量を増やしていく。5500rpmのレッドライン目がけて気持ちよく吹け上がるが、2000rpmから4000rpmの間が特に滑らか。本域に入ると、想像以上に速く走る。
2600 V8の乗り心地は少々硬め。三角窓から口笛のような風切り音が聞こえるものの、それ以外の車内は静か。運転しやすい特徴と、ニュートラルな操縦性で、優雅に流したいという気持ちになってくる。
トルク特性がピーキーな4気筒エンジン
ジャフスはパワーステアリングを追加しており、2600 V8は低速域でも取り回ししやすい。充分な感触も伝わってくるため、ハンス・グラースのフラッグシップでありラストモデルは、本来以上に運転が楽しく感じられたようだ。
一方のBMWグラース1600 GTは、元気ハツラツ。ステアリングホイールは低速域で非常に重く、クラッチは鋭く繋がる。運転時は、一層の注意力や体力が求められる。
4気筒エンジンは、低速域では扱いやすい。だがトルク特性がピーキーで、常に正しいギアを選んでいる必要がある。回転上昇は鋭敏。それでいて、フラットスポットも存在する。
軽快に運転するには、高めの回転数を保つのが1番。シフトチェンジも楽しめる。ただし、1速の近くにあるバックギアのストッパーが弱い。これは、2600 V8と共通といえるだろう。
1600 GT独特のクセを身体で覚えるまで、コーナリングはぎこちない。慣れてしまえば、運転席からの見晴らしは良く、アクセルペダルを調整しながらのライン取りは難しくない。
脱出加速ではリア・サスペンションが深く沈み、意欲的に運転して欲しいと訴えてくる。同時期の4気筒エンジンより、聴覚的にも興奮度は高いように感じる。
2600 V8には、好印象なグランドツアラーとしての懐の深さがある。動力性能は充分で、オーナーのジャフスもその個性が好きだと話す。ドライビング体験の魅力では負けていない。
多くの人の記憶から消えてしまったブランド
BMWグラース1600 GTには、コンバーチブルも存在した。その小粋で活発な印象から、ドイツ版アルファ・ロメオといったところかもしれない。スタイリングもイタリアンだ。
ハンス・グラース2600 V8からは、より開発を深める予算と時間があれば、素晴らしいモデルに仕上がった可能性を感じる。しかし、現在では殆どの人の記憶から消えてしまったブランドといえ、コレクターによる注目度も高くはないようだ。
ジャフスは、真っ白なハンス・グラースの次期オーナーを探している。資格として求められるモノは、資金力以上に、クルマを気づかう気持ちだと笑顔で話してくれた。
協力:グラハム・ジャフス氏
ハンス・グラース2600 V8とBMWグラース 1600 GT 2台のスペック
ハンス・グラース2600 V8(1965~1968年/欧州仕様)のスペック
英国価格:3046ポンド(新車時)/8万5000ポンド(約1402万円)以下(現在)
販売台数:657台(BMWグラース 3000 V8を含む)
全長:4597mm
全幅:1753mm
全高:1397mm
最高速度:194km/h
0-97km/h加速:11.0秒
燃費:7.1km/L
CO2排出量:−
車両重量:1350kg
パワートレイン:V型8気筒2580cc自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:152ps/5600rpm
最大トルク:20.9kg-m/3000rpm
ギアボックス:4速マニュアル
BMWグラース1600 GT(1967~1968年/欧州仕様)のスペック
英国価格:1万5850マルク(新車時)/5万5000ポンド(約908万円)以下(現在)
販売台数:1298台
全長:4045mm
全幅:1549mm
全高:1283mm
最高速度:189km/h
0-97km/h加速:10.8秒
燃費:10.6km/L
CO2排出量:−
車両重量:830kg
パワートレイン:直列4気筒1573cc自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:105ps/6000rpm
最大トルク:13.3kg-m/4500rpm
ギアボックス:4速マニュアル
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