優勝はニッサンGT-Rに奪われたものの、スーパーGT第2戦富士で復活した印象のあるレクサスLC500勢。その躍進の要因の大きな背景に、第1戦岡山の後、エンジンに発見があったようだ。TRDエンジン開発責任者の岡見崇弘氏に第3戦鈴鹿予選前に話を聞いた。
──開幕戦では出力を抑えて使っていて、第2戦富士に向けて発見があったと聞きました。
「開幕前のテストでエンジンが2基ブローしました。どうして壊れたのかその時点で分からなくて、開幕戦では全体に出力を抑えていました。その後、原因調査のためにベンチにエンジンを載せていろいろ試験していくなかで、こういうことが原因につながったのかなというところがある程度見えたので、その点に気をつけて運用していけばブローは防げるというメドが立ちました」
──第1戦岡山から第2戦富士でどれくらい出力は上がったのでしょうか?
「そんなに劇的に加速が変わったというわけではないと思いますよ。富士での感覚では我々が正常な位置にきていて、逆に周りが抑えていませんかという感じもしました」
──第2戦で抑えて、今回の鈴鹿を狙ってきていると。
「たとえばそういうことです」
──エンジンが年間2基に制限されていると、どこかで抑えて使う必要がありますか?
「あると思います。みんなが勝ちを狙っているところいっても勝てるのは1台なので、チームの戦略としてみんなが来ないところに集中するという考え方もあると思うんですよね。そこはメーカーの考え方もあるだろうし、チームの戦略もあるでしょうね」
──レース中でも局面で変わることはあるでしょうか?
「23号車(MOTUL AUTECH GT-R)は岡山でジャンプスタートになりましたけど、スタートがすごく速かった印象があります。もしもタイヤの温まりがいいのだとしたら、他のクルマのタイヤが温まらないうちに抜けるだけ抜いてしまったほうが賢いじゃないですか。そうすると最初の何周かだけパワーを出して全部抜いて、あとは普通に走るという運用もあると思うんですよね」
──検証してみたら、そのあたりの課題が浮上したと。
「そうですね。23号車は富士でも一気にトップに来ましたし、そういう運用でやっているんじゃないかなと思いますね」
──エンジン開発がぎりぎりの高いレベルにきているので、レースのなかでエンジンをどう使うかまでシビアなところに来ている。
「年間2基でライフが決まっているとなると、『負荷をかけてでも、どこで速く走りたいですか』となってきますよね」
──開幕前に開発が進んでP-MAX(燃焼圧)がエンジン側の許容範囲のギリギリまで高まっていると聞きました。
「トルクを出す=P-MAXを上げることで、簡単なことではありません。しかし、こうやるとP-MAXが上がってトルクが出ると分かると、我々としてはそれで年間2基でカバーするだけのマイレージを稼げるのか、耐久試験をします」
「耐久試験でもたないと、せっかく性能向上ネタがあっても使えないし、使い切れない。全部は無理でもここのレースだけ獲りたいところでそれを使う。それはもう他のメーカーも含めてそうだと思います。ニッサンさんにしてもホンダさんにしても、予選では極端に速いことがありますよね。状況を見ると。間違いなく運用の部分でそういうことがあるなと思いますよね」
エンジン本体のパフォーマンスだけでなく、そのパワーをレースごと、そしてレースの展開で変えて、いかに上位を狙うかが問われているGT500クラスのエンジン事情。3メーカーによるエンジン開発が極まった結果、パワー競争だけでなく、それをどこでどれだけ使うか戦略の重要性も高まっている
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