低圧縮化&低フリクション化で進化した新ディーゼルエンジン
新型デリカD:5には2.2Lディーゼルターボを搭載。エンジンは従来型同様4N14型だが、各部に大幅な仕様変更を受けている。
【試乗】新型デリカD:5は走り激変! フルモデルチェンジを名乗らないのが不思議なほどの進化を体感
トピックとしては、新たに尿素SCRシステムを導入している。これは尿素水を排気ガスに噴射することで、NOx(窒素酸化物)を低減させるシステムで、排気ガスの浄化作用が大きい。従来の触媒のみでの浄化方法に比べ、燃料噴射量を減らすことができ、燃費性能が向上した。
エンジン本体については、低圧縮化(14.9→14.4)に伴ってピストン形状を変更したほか、ピストン、コンロッド、クランクなどの軽量化を図り、フリクションを低減させている。これにより、ディーゼル特有の振動や騒音も軽減された。
エンジン内部の主運動系部品(ピストン/ピストンピン/コンロッド/クランクシャフト)を軽量化。クランクシャフトはコンロッド側の軸受け部分を小径化し低摩擦の樹脂コーティングにより、フリクションを低減させている。
燃料供給装置については、従来と同じコモンレール式だが、燃料を噴射するインジェクターを変更。インジェクターが作動した瞬間から高い圧力を発生させ、作動応答性を向上。従来のインジェクターでは、作動停止中でも燃料がリークする(燃料タンクに戻る)。そのため燃料の圧力が低下していたが、新型インジェクターではリークがゼロとなり、作動開始直後から高圧で燃料を噴射させることができる。
こうした仕様変更の結果、エンジン最高出力は従来型に比べてやや低下したものの、最大トルクは20N・mの向上。しかも、より低回転から発生する。さらに、高回転まで高いトルクを維持するエンジン制御により、応答性に優れ、加速感が持続する“気持ちのいい”回転フィーリングを実現している。
尿素SCRシステムは、高品位尿素水(AdBlue)を排気管内にインジェクターで噴射。排気ガス内のNOxを還元して浄化する。尿素タンクは荷室フロア下に配置され、注入も荷室から行なう。容量は16L(1万6000km走行が目安)
新型デリカD:5のドライブトレインでは、トランスミッションの変更と、4WDの電子制御システムの最適化が主なポイントだ。
トランスミッションは従来型の6速ATから8速ATに変更。ギヤ段数を増やすことで、カバーエリアを低速側で8%、高速側で18%増やしている。これにより低いギヤでより高い駆動力を発揮し、高いギヤでは燃費性能の向上に貢献。また、各ギヤのロックアップ領域を拡大し、加速力やダイレクト感を高めるとともに、エンジンブレーキが必要な減速時や下降路での駆動力を確保。さらに、アイドリングストップに対応すべく、内部にポンプを新設している。
変速制御では、加速時にはディーゼルエンジンならではのトルク特性に合わせて変速ショックを抑えたり、減速時にはブレーキ操作に応じて自動シフトダウンのタイミングを変えるなど制御パターンを緻密・最適化。シフトダウン時に一時的にエンジン回転を高めるブリッピング機能も新たに採用している。マニュアルミッション車のように的確に変速できるATを目指した。
4WDシステムに関しては、従来同様の3モード切り替え式の電子制御4WDだが、ハンドル角やヨーレートセンサーの情報を制御条件に加え、ドライバーのハンドル操作に忠実な車両挙動を実現している。
高剛性ボディが衝突安全性能と優れたハンドリング性能をもたらす
マイナーチェンジでフロントデザインが変更されたことに伴い、ボディ各部にも手が加えられた。
基本骨格は従来車のものを引き継いでいるが、Aピラーより前側は、サイドメンバーやバンパービームの変更または追加により、衝突安全性能と歩行者保護性能を高めている。ボディ全長は従来車に比べて10mm大きくなっているが、これは主にフロントの延長分。延長によりエンジンルームの曲げ/ねじり剛性が低下し、車両の応答性にも影響を与えるため、衝突安全性能を確保しつつ、カウルトップ(フロント上部)を含めた操安剛性を高め、リニアな操舵感を実現した。
新型デリカD:5は、オールラウンドミニバンとしての質感向上のため、快適な室内空間の実現を目指し、静粛性が大幅に高められている。ディーゼルエンジン車特有の騒音や振動が発生することから、その特性に合わせた静音・制振対策が行なわれている。まず、ボディの外側から入ってくる騒音を抑えるため、フロントガラスには遮音ガラスを採用。そのほか、エンジンに近いフロントフェンダーやダッシュパネルに遮音材・制振材を配置。さらに、室内の音に関しては、ヘッドライニングやフロアサイレンサーで吸音することで反響音の発生を抑制し、室内全体の静粛性を高めている。
デュアルピニオンタイプの電動パワーステアリングを採用。操舵力が小さく低速走行時の取りまわしが軽快になった。タイヤに近い位置にモーターを配置することでステアリング機構全体の剛性を高め、ダイレクト感を向上。
フロントデザインの変更に合わせ、歩行者保護対応のため、エンジンルームまわりのボンネットやフレームなど構造材の仕様を変更。エンジンルームの空間を拡大し、歩行者保護(脚部性能)も向上させている。
フロント部分の構造変更は、衝突安全性だけでなく、操縦安定性も向上させた。バーやビームなどの形状を最適化し、溶接位置を工夫することで、重量を大きく変えずに動的剛性を向上させている。これによりリニアな操縦感を実現。
エクステリア全体のデザイン変更に合わせて樹脂製ガーニッシュを大型化したテールゲートは、パネル自体の板厚を低減している。ボディの高剛性化で衝突安全性能を向上させているが、必要なところでは軽量化を図っている。
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