WEC世界耐久選手権第7戦富士。ハーツ・チーム・JOTAの2台のポルシェ963がハイパーポール進出を逃すなか、2台のワークスとともにこの二次予選に進出したのが、もうひとつのカスタマーチーム、プロトン・コンペティションで今季目立った活躍を見せているジュリアン・アンドラウアーだった。
フランス・リヨン出身、25歳のアンドラウアーは、長年プロトンのGTカーで耐久レースを戦い、今季ハイパーカーへと昇格。最高峰クラス参戦3レース目のスパ・フランコルシャンでは、オー・ルージュでたびたび印象的なオーバーテイクを演じ、瞬く間に注目の的となった。赤旗後のレース延長措置がなければ、3位表彰台に立っていた可能性もある一戦だった。
【動画】2024年WEC第7戦富士6時間 予選ハイライト+オンボード
そのアンドラウアーがステアリングを握った99号車ポルシェは、富士での金曜日の2回のフリープラクティスでは下位に沈んだものの、セットアップ見直しを図った9月14日土曜日に躍進。赤旗により短縮されたFP3で9番手タイムを記録すると、14時20分から行われた予選セッションでは、アレックス・リンの2号車キャデラックV.シリーズR、ケビン・エストーレの6号車ペンスキー・ポルシェに次ぐ3番手へと躍り出たのだ。
フロントロウにも手が届こうか、という状況で迎えた続くハイパーポールだったが、アンドラウアーはここで1分29秒589と予選よりもタイムを落とす結果となってしまい、最下位・10番手でセッションを終えた。
ミックスゾーンに姿を見せたアンドラウアーは、6号車ポルシェのエストーレ、38号車ハーツ・ポルシェのオリバー・ラスムッセンと話し込み、予想外の結果に終わったハイパーポールの走りを緻密にレビューしている様子だった。
「この週末はFP1、FP2、FP3と、ステップ・バイ・ステップでクルマが良くなっていった。予選もとても良かったね」とアンドラウアーは振り返る。
「ただ、ハイパーポールでは、アタックを始めるラップが結果的に1周遅かった。ウォームアップに1周多く使ってしまったんだ。予選のセッションですでにブレーキなどは温まっていたから、(予選よりも)1周早くアタックに入るべきだった。おかげでマシンの動きはまったく違うものになってしまった。ちょっとトリッキーだったね」
トヨタGAZOO Racingで7号車GR010ハイブリッドのアタックを担当した小林可夢偉は、予選では4ラップ目に行ったアタックを、ハイパーポールでは1周早め3ラップ目とした。アンドラウアーも、この可夢偉の戦略に合わせるべきだった、と悔やんでいるのだ。
「でも、ポジティブに捉えよう。僕らはハイパーポールに進出できるパフォーマンスを示せたし、週末を通してマシンを改良できている。明日の決勝でも、おそらくはトップ5に入れるパフォーマンスがあると思うし、僕らは戦略の面でヘマをすることは通常ない」
アンドラウアーはまた、99号車ポルシェのロングランペースには一定の自信を持っているようだ。
「ロングランでは、周囲と同じか、より良いパフォーマンスを見せられると思っているけど、みんなも結構手強そうだし、ここでは上位から下位までのギャップが非常に小さい。だから僕らに必要なのは、トラブルを出さないように集中すること。ミスをせず、リズムに乗ること、そして非常にタフになるであろう(タイヤの)デグラデーションに注意すること、それらが必要になるね」
今季の活躍もあり、2025年はワークス、つまりポルシェ・ペンスキー・モータースポーツ入りも噂されるアンドラウアー。気になる来季について話を向けると、「僕には分からないよ。良いことが起こることを願うだけだ」とかわした。
「一番大切なのは、この一年をきちんとした形で終えること。最大限の経験をして、自分自身をできるだけ良くしていくことだ。今年、ただベストを尽くすことに集中すれば、来年のことは自然とついてくるだろう」
「ありがたいことに、僕はプロトンととても密接な関係にある。7年間、ファミリーとして過ごしてきたし、ともに学べる環境にあるのは素晴らしいことだ。あとは(来年のことは)誰が、いつ決めるのか、それは僕にははっきりとは分からない。ベストな結果となることを望んでいるよ」
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